2006年4月8日 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
第225回定期演奏会
『新しい響きを求めて』
場所:みなとみらいホール
指揮:現田茂夫
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲目
斉木由美/アンともフォニーV
スクリャービン/ピアノ協奏曲 嬰へ短調 作品20
ショスタコーヴィチ/組曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
★神奈川フィル2006年の定期演奏会は「新しい響きを求めて」と言うタイトルにふさわしく現代音楽で
スタート。コンマスは勿論石田様です。
1曲目は2004年に作曲された斉木由美の「アンともフォニーV」。これは「昆虫の音」と言う感じの
造語で、正に虫の音を奏でる曲であった。
プレトークで現田氏が60段の楽譜を見せてくださったが、それからもわかるようにオケはかなりの大編成。それなのに音楽は静謐。
ホルンが吹き口を掌で叩いたり、ヴァイオリンや管の後ろの方の人が突然マラカスを鳴らしたり、かなり面白い
演奏法がたくさんありました。普通の演奏をしていたパートなんて無いんじゃないかしら。と思うぐらい。
2曲目のスクリャービンは小山美稚恵嬢のピアノで。メロディが素敵な曲で、予習をしなかったのを後悔しました。
相変わらず小山嬢は上手い!ピアノとオケの絡みが凄く良かったと思います。オケにメロディを引き継ぐ所とか、オケとの
関わり方を知っている演奏。同じメロディも多数のパートが担当する事で多彩な変化を魅せてくれました。
そしてメインはショスタコーヴィチの組曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」。一旦は演奏不能状態にまで追い込まれた曲との
ことでしたが、現代音楽を割合好きな館風的には俄然オッケー。
オペラの間奏曲を集めた組曲とのことだが、ラストに現田氏のアイデアでオペラの終曲をフィナーレとして配置した特別バージョンで演奏された。
それぞれの場面を繋ぐ音楽なので、前後を知っているとそのシーンを想像できる、雄弁な曲。現田氏がプレトークと休憩後にストーリィを解説してくれた
お陰でストーリィはバッチリでした。
ストーリィは裕福な商人の夫人(カテリーナ)が暇を持て余し、使用人のセルゲイと不倫し、それがバレそうになって舅と夫を殺し、セルゲイと結婚式を挙げるも
殺人が発覚してシベリア送りになる。と言うなんだか破滅的なストーリィ。しかもシベリア送りになる途中でセルゲイが若い女に走って裏切ったのを
知ったカテリーナはその女を殺して自分も河に飛び込むと言うラスト。
特に気にいったのは3のラルゴ。主役のカテリーナが夫を殺すシーンに絡むだけあって、おどろおどろしいのだが、わざとらしいまでの
オケの緊張の高まりが気持ち良く曲に合っている。案外こう言う曲も楽しいと感じる自分を発見しました。
お祭騒ぎ的な曲も大好きなんですけどね。
そう言う点では4のアレグロは夫を殺したカテリーナが不倫相手のセルゲイと結婚式を挙げるシーンなので
それまでとは打って変わった明るい、華やかな音楽なのですが、これがまたいびつな響きがするんです。とても
グレゴリオ聖歌のパロディが入っているなんて思えない(笑)。むしろパロディがこう言う響きにするのかな?
このアレグロもとても面白かったと思います。
今回の演奏会は作曲者三者三様の音をそれぞれ創り上げた神奈川フィルに拍手。
同じ指揮者、同じオケ、曲が違うだけでこんなにも音が変わるのかと驚きでした。
来月は石田様のソロもあり、注目の演奏会になりそうです。