2004年石田日記-9月〜

9月17日 柴山陽子ソプラノコンサート@三鷹芸術文化センター風のホール
9月19日 神奈川フィル第209回定期演奏会@MMH
9月24日 トリオ・リベルタ Live in TAMA@せいせきアウラホール
10月10日 横浜JAZZプロムナード@情文ホール
10月17日 神奈川フィル第210回定期演奏会@KH


2004年9月17日 柴山陽子(ソプラノ)
&オーケストラゼッフィロコンサート


場所:三鷹市芸術文化センター(風のホール)
指揮:小崎雅弘
ソプラノ:柴山陽子
オーケストラ ゼッフィロ
1stVn.:石田泰尚 村井俊明
2ndVn.:福井啓太 小松美穂
ヴィオラ:榎戸崇浩 内山隆達
チェロ:阪田宏彰 宮坂俊一郎
コントラバス:青木賢一郎
オーボエ:藪恵美子 名雪あかね
ファゴット:加藤秀一 森田信子
チェンバロ:平塚洋子
編曲:上田真樹
曲目:第1部
カルダーラ/親愛なる森(Sop,Cen,Vc.)
カッチーニ/アマリッリ(Sop,Cen,Vc.)
スカルラッティ/すみれ(Sop,Cen,Vc.)
ヴィヴァルディ/わたしはジャスミン
ヘンデル/歌劇「ジュリアス・シーザー」より
 私は運命に涙するでしょう(Sop,Strings,Cen.)
「メサイア」より、br>  喜べ、シオンの娘よ(Sop,Strings(-Vl),Cen.)
第2部/モーツァルト
ディヴェルティメント ヘ長調、K138 第1楽章(Strings)
コンサートアリア
 私は行くわ、でもどこへ?(-Cen)
 愛しい人よさようなら
ディヴェルティメント ニ長調、K136 第2楽章(Srg)
モテット
 踊れ、喜べ、幸いなる魂よ
アンコール
カッチーニ/アヴェマリア
ちいさい秋
ヘンデル/私を泣かせて下さい
(特別に書いていない物はフルメンバでの演奏。)

★初めての三鷹市芸術文化センター風のホール。こぢんまりとした綺麗なホールでした。 舞台の大きさも広すぎず、狭すぎず、今回くらいの編成のオケに丁度いいですね。
 オケの編成は低音重視で、とても歌いやすかったのではないかと推測。第1部の前半は チェンバロとチェロが伴奏で、チェロはYAMATOでもおなじみの阪田様。結局ソプラノの柴山嬢よりも 多い曲目に出演した事になりますね(笑)。

 柴山嬢は「すみれ」くらいになってやっと上り調子になったのか、1段階音量が上がったような感じで、 中音域から高音域の声がノって素晴らしい歌声でした。とても楽しそうだったのでもしかしたらこの曲が 好きなのかも。それまでの曲と明らかに笑顔が違う(笑)。

 オーケストラがフルで出てくると我らが(笑)石田様と共に、YAMATOの榎戸氏も。 噂の宮坂氏はあのイラストそっくりでした(Tune The Cello!参照)。

 ソプラノの柴山嬢はヘンデル等がお得意とだけあって、 メリスマが素晴らしかった。あの音量を保ちつつのあの歯切れの良い メリスマには感動。合唱をやっている手前思わず視線はお腹に集中(笑)。 もう、ブレスが凄いんですよ。息の使い方がとても効率が良くて、お腹を見ているだけでも演奏の素晴らしさがわかりました。
 柴山嬢は藤原歌劇団所属だけあって、ソプラノと言ってもひよったりしないかなりしっかりとしたソプラノで、 安定感がありました。

 後半には弦楽のみのディヴェルティメントが2曲あって、私のような邪道な聴衆には嬉しい所。でも実際には 歌手にとってもしっかり休憩が出来て良いのでしょうけど。前半がオケの椅子並べの時間くらいしか休む時間が 無かった方がおかしいんですよね。
 スタンダードな曲目ですけど、それだけにしっかりとしていて聴いていて安心感がありました。 モーツァルトってやっぱり良いなぁ。
 今日の石田様はソプラノの伴奏オケらしくちょっと控えめ。なのですが、この2曲だけは思い切り弾いていた様に 見えました。こう言う使い分けが出来るのがやっぱりプロですねぇ……。

 最後の曲の前に阪田様と宮坂氏がチェロを取り替えて居ました。何故??と思ったのだけれど、その曲で阪田様は ソロがあり、おそらくその関係ではないかと推測。本当の所はどうなのかしらないけれど(爆)。
 阪田様は着実に演奏するタイプなのか、ソロの所でもその他大勢の部分と同じ表情で弾いていて、オケとは言え、もっと目立っても良いのに!と ファンならではの感想も(笑)。
 あ、でも音はバッチリおいしい所持っていってましたね。演奏で持っていってればそれはそれで良いのか(笑)。 と言うか、ヴィジュアル重視になってしまっているのは石田様を見慣れているからか(笑)。

 最後の曲はフルメンバなのでオケも歌手も全力!と言う感じで、迫力のフィナーレでした。これだけの曲を歌ってきてここまで体力が 残っているって言うのも、プロですから当たり前なんですけど、やはり凄いなぁ、と言う風に思ってしまいました。柴山嬢は全曲暗譜ですしね。

 アンコールのカッチーニのアヴェ・マリアでは近くに座っていたお爺さんが感動のあまり泣き出してしまって、ちょっとびっくりしましたが、 それ程素晴らしい演奏だったと言う事。
 ソプラノもオケも聴き応えのある演奏で、聴きに行って良かったです。








2004年9月19日 神奈川フィルハーモニ-管弦楽団
 第209回定期演奏会
『我が祖国〜チェコの魂〜』


場所:横浜みなとみらいホール
指揮:高関健
ソロ・コンサートマスタ:石田泰尚
曲目:スメタナ/連作交響詩「我が祖国」
1.ヴィシェフラド(高い城)
2.ヴァルタヴァ(モルダウ)
3.シャールカ
4.ボヘミアの森と草原から
5.ターボル
6.ブラニーク
アンコール
 歌劇「売られた花嫁」より
 道化師の踊り

★今年はチェコを代表する作曲家4人の記念年が重なったらしい。 そんな訳で神奈川フィルの定期演奏会も「チェコ音楽祭2004」にこのコンサートで参加している。 連作交響詩を一時に聴けるのはとても嬉しい。

 今日は2ndヴァイオリンを上手に、チェロを1stヴァイオリンの奥に、更にその奥にコントラバスと言う、対向配置。 2ndヴァイオリンとヴィオラの後ろには2台のハープが据えられている。
 注目は弦の首席奏者が全員揃っている所だろうか。首席不在のヴィオラは成田寛氏がゲストで、安心して聴く事が出来た。 いつも見えない黒木氏が対向配置のおかげでじっくり弾く姿をみる事が出来た。しかし、コンバスを抱え込むように弾く為に 表情は殆ど見る事が出来ず。とほほ……。

 1曲目は美しいハープのソリから。ハープの音が思いのほか力強く、大きな音でびっくり。美しさと強さを兼ね備えた音色は オープニングを飾るに相応しかった。中間部でも1stヴァイオリンと掛け合いの部分では美しい音が際立って聴こえ、2台ある意味がわかったかも。 しかもその部分、石田様は弾く度にハープの反応を窺っていた様に見えました。石田様が視線を向ける先でその直後に ぱっと音が鳴るんですよね。それが面白くて今日は石田様の視線を追っていました。
 プロなら当たり前の事かも知れないんですが、どこで何が起こるのか、全部解ってての演奏なんですよね。もしかして 頭の中に総譜が入ってるんでしょうか。凄いなぁ。

 今日の注目はパーカッションで、シンバルの平尾氏は4セットのシンバルを使い分けていました。私には何がどう違うのか良く解らなかった のですが、多分、大きさの違いかと。小さく連続で鳴らす時は小さめの物を、大きく一発響きを残す時には大きな物を使っていたように思います。 その持ち替えが忙しくてついつい注目してしまいました。
 ティンパニの女性は神奈川フィル初登場……ですよね?弾き方が所々独特な所があって、 とてもカッコ良かったです。個人的にティンパニは叩いている所を見るのが好きなので、ああいうカッコよさはステキでした。

 指揮の高関氏はパーカッションのみならず様々なパートのきっかけを一つ一つ丁寧に振っていて、 見ていてとても面白かったです。しかもとても嬉しそうに振るんですよね。その姿勢に好感が持てました。

 気に入ったのは3番のシャールカで、冒頭から攻撃的な演奏なのですが、途中には美しいクラリネットソロもあり、様々な要素が楽しめました。 森川氏のソロは暖かい音で安心して聴く事が出来ました。
 ヴィオラも地味においしい所を持って行っていましたし、ラスト直前のトロンボーンのユニゾンはとてもカッコ良かったです。 色んな楽器に見せ場があって面白い曲と言う事なのでしょう。 5曲目のターボルのオーボエのメロディにクラリネットとホルンが絡むのもカッコ良かったですしね。

 後半に入るとどの曲も情熱的で迫力のフィナーレなので、1曲毎に拍手をしたい!と言う気持ちになりました。 最後の曲のフィニッシュではP席寄りのバルコニーから「サイコー!!」の声。いや、気持ちは解りますけど……ブラボーでも無く「サイコー!!」ですか(笑)。 その人も自分で気付いたのかブラボーって言い直していましたね(笑)。
 私は演奏会で「サイコー!!」って言うの、初めて聞きましたけど、まあ、それもアリでしょう。石田様は苦笑いしていましたけど(笑)。 だって演奏は「サイコー!!」でしたもの。













2004年9月24日 FM TAMA G-WIND Special Live
TRIO LIBERTAD LIVE in Tama


場所:聖蹟アウラホール
演奏:トリオ・リベルタ
 ヴァイオリン:石田泰尚
 サックス:松原孝政
 ピアノ:中岡太志
曲目:アストル・ピアソラ
ブエノスアイレス午前0時
デカリシモ
アディオス・ノニーノ
悪魔のロマンス
天使の死
天使のミロンガ
天使の復活
ミケランジェロ'70
ブエノスアイレスの春
ブエノスアイレスの夏
ブエノスアイレスの秋
ブエノスアイレスの冬

タンガータ
 アンコール
リベル・タンゴ
乾杯

★本日の演奏会はエフエム多摩が企画したスペシャルプログラム。そもそも この演奏会に向けてトリオ・リベルタそれぞれのメンバーがラジオに出演していたのだから凄い。 残念ながら館風の家は電波が入らず撃沈。13日の放送だけでも聴きたかった……(涙)。

 さて、演奏会のほうはすっかりお馴染みになった「ブエノスアイレス午前0時」から。 真っ暗な会場が徐々に明るくなって行くのですが、全体的に押さえられた照明が雰囲気万点。 今日の照明は全体的に凄く曲とマッチしていて良かったと思います。会場に拍手!

 石田様はMCで地元と言う事もあって「いつもよりがんばりたいです。」との発言も。もぅ、俄然期待できるじゃないですか!! 「JAZZプロ前だからなぁ……」とか言ってた自分、謝りなさい。来て良かった!!(笑)
 中岡氏のMCはリベルタファンにはお馴染みのピアソラについて。毎回少しずつ違って、毎回勉強になります。
 今回のプログラムは天使シリーズとブエノスアイレスの四季全曲があるんですよね。天使シリーズは後2曲あるみたいですが。 いつかそれも聴いてみたいですよね。

 石田様は天を切裂くような高音と柔らかい高音とを使い分け、ヴァイオリンの色々な音色を聴かせてくれました。中低音はいつも通り柔らかく、包み込むような 音色でうっとり。これだけ色々な技術が要求される曲って言うのはやっぱりピアソラならでは・なんでしょうか。

 後半のトップは私の大好きな!「ミケランジェロ'70」。この曲、短いのですがとても好きなんですよね。 今日も良い演奏を聴かせて下さいました。大好きな曲だけに演奏会で聴けるとやっぱり感動もひとしお。

 本日の目玉、ブエノスアイレスの四季。MCで中岡氏はそれぞれに「どれが好き?」と訊いたのですが、石田様は演奏用マイクに顔を近付けボソっと「冬」と一言。 中岡氏は「マイク持ってよ」と苦笑いしながらそれでも石田様が「冬」って感じに納得していました。私も曲を改めて聴いて納得しました。理由は後ほど。
 松原氏は「秋」がお好きらしいのですが、最近「秋」は演奏して無かったらしく、今回全曲と言う事で満面の笑みを浮かべたとか。三年越しとの事で、演奏のほうもとても 楽しそうに見受けられました。
 ちなみに中岡氏がお好きなのは気だるい「夏」。中岡氏は見事なバラけっぷりに「気の合う3人で……」と軽口を叩いてました。 でも、バラけているからこそお互いに主張しあって音楽が高められているのかも知れないなぁ……と思いつつ。

 さて、「冬」を実際に聴くと、石田様がこの曲をお好きな理由が判りました。
 これ、ヴァイオリンがめちゃめちゃオイシイ。いや、勿論そう言うアレンジにしてあるって事なのかも知れませんが、ヴァイオリンソロがすぅーごく素敵なのです。 これを弾くって言うんだったらこれが好きになるわ。そりゃそうだ。
 背景のライティングも薄暗い、冬の朝みたいな薄茶色の光から曲調が変わった所でピンクと虹色に変化するんですね。 これがもう、激的な音楽と相まってとても素敵。ブエノスアイレスの四季シリーズのシメに相応しい作品でした。

 今日のホールは殆ど満席。先日の神奈フィル定期でビラが挟まれたので「大丈夫なのか?!」と心配してしまったのですが、 そんな心配は必要ありませんでしたね。今日の演奏会でコレですから、次の横浜JAZZプロムナードではどうなるのか とても楽しみです!!



















2004年10月10日
横濱JAZZプロムナード
TRIO LIBERTAD


場所:情文ホール(関内)
演奏:トリオ・リベルタ
 ヴァイオリン:石田泰尚
 サックス:松原孝政
 ピアノ:中岡太志
曲目:アストル・ピアソラ
トーノ・ブエノスアイレス
ブエノスアイレス午前0時
ブエノスアイレスの夏
天使の死
天使のミロンガ
天使の復活
デカリシモ

タンガータ
リベル・タンゴ
 アンコール
乾杯

★なんと言ったらいいのだろうか。ジャズプロというイベント性も手伝って、 もう全員の気合が違う。一時間と言う短い短期集中的要素もあるだろうが、トリオ・リベルタから発せられる オーラはいつもの二倍も三倍もあったように感じた。
 始まりはブエノスアイレスのシリーズより3曲。始めは腕ならしっぽい感じだったのだが、 「ブエノスアイレスの夏」では3人とも大ブレイク。フィニッシュがとにかくカッコイイ!!

 石田様は出番が無い所では松原氏のソロに合わせて身体を揺すったり、頷いたりして弾きたくて仕方がない様子。 演奏中も様々なきっかけの部分で松原氏と顔を見合わせてニヤリ。とても楽しそうでした。

 後半、「デカリシモ」からは益々気合がノってきて、ド派手な演奏に仕上がっていました。
 個人的には「鮫」の石田様の高音にクラクラです。力強い高音は生命力を感じさせ、鮫が泳ぎまわって闘う 様が目に見えるようでした。

 タンガータはクラシックよりのナンバーなのですが、改めて聴くとなんだかヴァイオリンソロだけコンテンポラリー 入ってますよね(笑)。
 トリはリベル・タンゴ。聴くたびにアレンジが変わっているけれど、今日も変わっていましたね!くぅう!例の有名なメロディが 出て来るまでが腕の見せ所なんですね。石田様もメインを弾く時はここぞとばかりに動きが派手に。またそれが魅せ方を知っていて、 とてもカッコイイのです。しかも、脇役のメロディの時はちゃんと控えめなのだけれど、存在感だけは誰にも負けていません。 しっかり音楽を支えていて、そこはオケで弾いている時の石田様と共通するかも。

 アンコールは最近お気に入り(なのだと勝手に思っている)の「乾杯」。これは松原氏のソプラノサックスが素晴らしく、 指の動きが光速でした。なんだか松原氏も最近とみに上手くなったと思います。いや、いつも石田様ばっかり見ているから今更 気付いただけかもしれませんが(苦笑)。

 演奏が全て終わると石田様は汗だく。会場内、私は少し涼しいくらいだったので石田様たち演奏者の気合の入りようがよく解ると言うもの。 時間は短いけれど、こう言うイベントだからこその演奏もある。
 また来年が楽しみです。
 まだ赤レンガ行った事が無いので是非来年はまた赤レンガで宜しくデス(笑)。




2004年10月10日
海岸通りのクラシックコンサート
種谷睦子マリンバ・コンサート


場所:神奈川県民ホール小ホール
マリンバ:種谷睦子
菅原淳
岡田眞理子
安原千晶
ピアノ:一柳慧
曲目:
モーツァルト/ディベルティメント ニ長調 K.136
 (マリンバ:種谷睦子・菅原淳・岡田眞理子・安原千晶)
J.S.バッハ/シャコンヌ
 (マリンバ:種谷睦子)
一柳慧/パガニーニ・パーソナル
 (マリンバ:種谷睦子・ピアノ:一柳慧)
権代敦彦/木霊[世界初演]
 (チェロマリンバ:種谷睦子・菅原淳)
一柳慧/バラード
 (チェロマリンバ:種谷睦子)
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
 (マリンバ:種谷睦子・ピアノ:一柳慧)
アンコール
 山田耕筰/荒城の月
 (マリンバ:種谷睦子)

★4いきなりモーツァルトである。しかもマリンバは3台、奏者は4人。激しいにも程がある。 バッハのシャコンヌは一人でここまでやってしまうのかと言う大迫力。しかも種谷さんは全ての曲 (委嘱新曲以外)が暗譜なのです。それだけでも彼女の素晴らしさがわかるでしょう。

 前半ラストの「パガニーニ・パーソナル」はいきなり食器が乗ったワゴンを思い切り突き飛ばしたみたいな 激しいピアノから。しかもパガニーニの24番をモチーフにしてあると言うのですが、始めのワンフレーズ弾いたら後は殆ど 原型を留めていません。おそらくパガニーニを良く知っていれば似ているところもあるとは思うのですが、私にはさっぱりでした。 しかし現代音楽好きの私と友人はいたくこの曲がとても気に入りました(笑)。

 今日の注目の権代敦彦氏の新曲ですが、世界に一台しかないチェロマリンバの為の曲で、しかも二重奏(一台を二人で叩く)。 種谷嬢と菅原氏は子どもの頃からの知り合いらしく、息も合って、素晴らしかったです。二人で一つの 鍵盤(って言うの?)を叩いたりする場面もあって、面白かったです。最後なんて低音から高音へ向かって一人ずつぐるぐる回ったり(ああ、 ダメだ、言葉で説明できない)して、連弾でもピアノじゃこれは出来ないなぁ、と思いました。やはりコンテンポラリー、 試み自体が面白かったりしますね。

 チェロマリンバは種谷嬢による特注の全てが木製のマリンバで、最低音がチェロと同じ音の所からチェロマリンバと名前をつけたとか。 音は低音の方は何故か高い音の方が良く聞こえ、その後ろから亡霊のように低い音が響いてくる、と言う不思議な音色でした。 音が高くなるとそのギャップが段々と埋ってきてまた違う音色になって、とても面白かったです。

 最後の「ツィゴイネルワイゼン」はまさかマリンバでここまでやってしまうとは・と言う凄い内容。 ううん、超絶技巧ってこういう事を言うのだろうか。ヴァイオリンでも超絶技巧満載のこの曲、マリンバで演奏しても超絶技巧が満載でした。 トリルの残像しか見えません(笑)。

 私は初めて彼女の演奏を聴いたのですが、本当に素晴らしい演奏でした。トークもかなり面白かったです。権代氏との トークはなんだか不思議な雰囲気でした。あの二人、妙にテンションが高いです(笑)。しかし演奏の方は真摯で、まっすぐで、 曲の中に入り込んで弾いている感じがして、とても良かったです。
 しかもこのコンサート、昼の部はチケット完売、私が聴いた夜の部は追加公演だったのです。おまけにこの夜の部も チケット完売。素晴らしいですよね。コンテンポラリーの演奏会で会場が埋っているのを久々に見た気がします。とても 嬉しく感じました。


















2004年10月17日
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
第210回定期演奏会『浄化の世界』


場所:横浜みなとみらいホール
指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
クラリネット:カール・ライスター
ソロ・コンサートマスタ:石田泰尚
曲目
W.A.モーツァルト/クラリネット協奏曲
 イ長調 K.622
ブルックナー/交響曲第9番
 ニ短調 (ノヴァーク版)

★本日の定期はモーツァルトとブルックナー。しかも今回はどちらも結果的に見れば晩年の作品。
 しかし、35で死んだモーツァルトと70過ぎまで生きたブルックナーとでは、かなり意識が違うかもしれない。

 クラリネット協奏曲ではモーツァルトの軽やかなメロディが踊って心地よい。ソリストが出て来るまで等は 殆ど弦楽器の独壇場で、小編成ならではの可憐な響きを楽しませてくれた。
 ソロは難しく書かれているとの事だが、ソリストのカール・ライスター氏があまりに軽々と演奏するので、もしかしてあまり難しくないのではないかと思わせるほど。 しかし、よくよく見れば表情は真剣そのもので、かなり気の遣った演奏である事が分かる。
 この曲のソロパートは音域の広いクラリネットの特徴を生かしたもので、高音部と低音部がサンドイッチになる部分などもあった。 この部分では軽くまろやかな高音と、それを更に包み込むような低音が乱れる事なく入れ替わり、カール・ライスター氏の凄さを感じさせた。
 技術については良く分かりませんが、とにかく音が柔らかく、優しい音で、クラリネットっていいなぁ・と思いました。

 パンフに寄れば、モーツァルトはクラリネットが大好きだったらしく、クラリネット用の曲などを沢山残しているらしい。 先日聴いたモーツァルトで、オーボエの代わりにクラリネットが入っていて驚いた事があったが、どうやらこう言う事情だった様だ。 今回も管はファゴット2、フルート2、ホルン2、と言う変わった編成で、ソリストにクラリネットが居る為かオケはオーボエもクラリネットも無し。 チューニングをフルートが行なう、と言う面白いことになっていた。

 ブルックナーは所謂ブルックナー開始なのだが、弦楽器は弓を持つ右手が動いているのが殆ど分からないぐらいの小刻みなトレモロ。その上に重なるホルンのハーモニーがバッチリ 決まり、出だしは上々。更にその後一番始めの盛り上がりの部分では総力を尽くした金管パートが派手な和音を決めて、今日の演奏の成功が約束されたと思う。

 個人的に一番お気に入りなのは2楽章で、とにかくド派手な不協和音がたまらない。あの弦楽器が揃って低音をジャジャジャッと弾くのは 2階席から見ていて壮観であった。
 この部分の石田様はとにかく派手な演出で、最後の1音を弾くところでは弓捌きが特別に大きい。心なしか弓どころかヴァイオリンまで動いていた 様な気もします(笑)。
 このテーマは何度か出て来るのだが、その間に挟まれたピチカートの部分も負けずに派手なのが石田様らしい。この楽章は何度CDで聴くよりも一度実際にホールで聴いた方がずっと面白いですね。

 3楽章は1stヴァイオリンのパートソロから始まるのだが、これがまた一つの音になっていて、カッコ良いのだ。ヴァイオリンと言うと高い音ばかり注目されてしまうけれど、 低い、中低音も中々にカッコ良い。
 ついつい管パートが気になってそちらに目が行ってしまったのですが、そちらのメロディのやりとりなんかもかなり面白い。 ヴァイオリンはオケの華だけど、おいしい所はホルンやクラリネット、オーボエなんかが持っていくんですよね(笑)。
 あ、おいしい所、と言えば、今日は時折2ndヴァイオリンがおいしいな!と思わせる部分がありました。なんと言うか、1stの陰に隠れがちなんだけど、 やる事やりますおいしい所は頂きます、みたいな感じでカッコ良いです。渋い!

 今日の演奏会はオケのノリがとても良かったように思います。弦の首席も全員揃っているし、管の方も首席が揃っていたんじゃないかと推測するので、 オケの方もかなり本気。と言うか、何より石田様の気合の入り方が違う(様に見えた)。
 今日の石田様は演奏中弓の毛が切れること……何回?とにかくブチっと素早くちぎっていたのは5回以上。それ程激しい演奏でした。 ヴァイオリンは殆ど休みなしの状態なので石田様は隙を見て弓を整える、なんて事も中々できず、チラチラする千切れた毛が 邪魔そうでした。
 演奏中はいつもより指揮者を見る回数が多く、きゅっと口を引き結んでの演奏でした。演奏に対する真摯な姿勢が伝わってきた気がします。石田様は演奏している時は いつも楽しそうだな〜と思っていたのですが、今日みたいにちょっと真剣!みたいな感じもいいですね。

 実は私、予習の為に何度かこの曲を聴いたのですが、中々馴染めなくて、当日大丈夫なのだろうか……と思っていたのですが、 百聞は一見にしかず。生演奏を聴いたらブルックナーも良いじゃない!と言う気持ちになりました。好きになりそうです。 やっぱり、生の威力は違いますね。



















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