場所:横浜みなとみらいホール
指揮:若杉弘
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ソロ・コンサートマスタ:石田泰尚
曲目:モーツァルト/交響曲
第29番 イ長調 K.201
三善晃/焉歌・波摘み
マーラー/交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
★今日の指揮者・若杉弘氏は神奈川フィル初登場。それでこのプログラミングは何だろう。
モーツァルトとマーラーで三善晃をサンドイッチ。プログラムノートに寄ると「三大M」だそうだ。
そして期待通りの面白い演奏会だった。
新年度一発目とあって、「そのりて(神奈川フィルの定期演奏会のパンフ)」が一新していた。今年のデザインはなんだか楽譜の表紙みたいにシンプルで素敵。
今回の表紙の色が真ピンクと言うのも好感度高し。この無難に行かない攻めの姿勢がいいですね。今の神奈フィルを象徴しているみたい。
次のパンフも楽しみ。
一番始めのモーツァルトでは若杉氏とオケのコンビネーションもバッチリで、これが初共演だとは思えないほど。
若杉氏のしっかりとした指示が良かったのかもしれません。見ているこちらも若杉氏が指示した部分から
「ふゎ!」っと音が出て来るのが目に見えて面白かったです。後、今日は
若杉氏が出を指示して放置(って言ったら変だけれども)したパートも積極的に音楽を作っている感じがしましたね。好感度◎。
第2楽章の前、どーも曲が始まらないと思ったら、若杉氏と石田様のコンタクトがイマイチ。石田様はどうやら
客席の五月蝿い咳に気を取られていた模様。確かにアレはこれでもか!ってくらいの咳の音がしていましたからねー。
アレは出演者じゃなくても気になります。別にしなくてもいい咳はしないで欲しいんですね…。
でもそのおかげ(?)で第2楽章のしっとりとした静かな出だしが際立ったかも。
もしかしたらこれは狙いだったのかな・と言う気も。第3楽章、第4楽章は比較的直ぐ始まりましたしね。
そして私が今日一番聴きたかった三善晃!!現代音楽好きな私はこれが楽しみでした。
ぞくぞくするような音で始まりましたが、全体的に哀しい色をしていた気がします。これはテーマを考えたら仕方ないかも。
静かな部分と激しい部分の調和が取れていて良かったです。
金管部隊がガンガン鳴らす部分もあって、メリハリのある曲でした。私の席は金管がガンガン響く席なので弦が遠くてちょっと残念。
中盤でヴィオラが「ねんねんころりよ」のメロディを弾く部分は弦がバッチリ聴こえたんですけどね。しかし、「子守歌」を変形させたモチーフが
どこにあったのか、このビオラとその後のヴァイオリンの部分以外さっぱり分からず。やっぱり現代音楽はわからん(笑)。
ま、私は「分かる必要なんか無い」と言うスタンスですが。
このゆったりと流れていく音楽は良いですね。この音の波に飲み込まれるような感覚が好きです。
特に三善氏の音は耳に馴染んでいるせいかすんなりと楽しむ事が出来ました。
演奏終了後、若杉氏が右手を広げててくてくと歩いていくと思ったらなんと客席に三善晃氏が来ていました。全然気付かなかったよ…。
ど、どうしたんでしょうか。びっくりですよ。若杉氏が連れてきたのかしら。
そしてやっぱり三善氏はカッコイイ音楽家でしたね。服装もちょっと洒落たシャツを着ていてカッコイイ。石田様とも握手をしていました。
作曲家的にはどう言う演奏だったのでしょうか。ちょっと気になりますね。
さて、本日のメインは石田様もお好きな作曲家・マーラーの一番有名な曲「巨人」。聴きなれている音楽だけに色んな部分を楽しむ事が出来ました。
やっぱり予習はすべきですね。予習した方が数倍は楽しくなるはず。
第1楽章はじっくりと弾(はじ)けるパワーを温存した出だし。オケからも「早くハジケたい!」と言う空気が伝わってくるほど抑制された演奏でした。
始めのペットのバンダは始めは袖の中で。下手の袖が開いた奥からファンファーレが聴こえて来ました。このファンファーレ、
結構良かったと思います。今日のファンファーレの中では一番かも。
1楽章のラストはまるでフィナーレの様な激しいフィニッシュ。石田様もカッコいいし、オケもカッコ良いし、素晴らしい。
この曲って、各楽章毎に拍手したくなっちゃうんですよねぇ。
第2楽章になるとオケはノリノリ。2楽章の出だしってこんなにフォルテでしたっけ?と言うくらいのしっかりとした出だし。
ベースのどっしりとした音の上にヴァイオリンが乗るのですが、そこでもフォルテシモ。木管が入って少し弦の音が控えめになるのですが、それでも
メゾフォルテと言うか、やっぱりちょっと大き目の音。もうオケが盛り上がりまくっているのが分かるのです。
そうそう。この部分、だったかな?コンバスの入りに合わせて石田様が頭振ってました。多分この人ほっといたら全部弾いちゃうんじゃないでしょうか(笑)。
本当に曲の隅々まで研究し尽くしていて、大好きなんだな・と言うのが伝わってきました。だって石田様終始にこにこ(と言うかニヤニヤかも)してるんですもん。
演奏者が楽しそうだと聴いてる方は幸せですよー。他のオケメンも楽しそうでしたしね。素晴らしいことだと思います。
マーラーの楽譜には不思議な指示が沢山あって、第4楽章でホルンがイキナリ全員立ったりするのですが、3楽章でもそのオモシロ演出はあります。
やっぱりホルンなのですが、ラッパの部分を高く持ち上げて胸を張るような演奏をしたり、ちょっと吹きにくそう。更にその上を行くのがクラリネット。
三人がぐいっとクラリネットが地面に水平になるように持ち上げ、殆ど上を向くような角度で吹くのです。これが三人揃ってぐい!と上げるので
上から見ているととても面白い。吹きにくそうでちょっと気の毒なのですが、コミカルでとてもカワイイです。
それにしても、マーラーは何を考えてこんな事を指示したのでしょうか。ここは目立って欲しいって事だったのかなぁ…。不可解ですけど面白いのでオッケーです。
面白くなければ誰もやりませんよね。
3楽章では石田様のソロがチラリとあったり(1プルの裏の人も弾いていたし、ビオラもソロあったよ…それには言及しないのね…)。
ソロの時の石田様の音って相当大きいのではないかと思いました。
管楽器って結構大きい音が出るのですが、それにヴァイオリン一本で対抗して渡りあってましたから。
しっかりとした音にいつでも優しい音色を乗せる事を忘れないのが石田様ですよねぇ…。なんか、ガンガン行くだけじゃないって言うのが好きです。
ラスト第4楽章はけたたましいシンバルの音で幕開け。平尾氏がコレでもか!と言う感じでたたきつけていました。気持ち良さそ〜!
パーカッションはフルメンバーで、ティンパニは2台。2台目は大分暇してましたけどね(苦笑)。
そうそう。今日の公演でティンパニの藤本氏が退団。東京芸大の助教授になるそうです。そうか…忙しくなるからオケには乗れないのね…。
神奈フィルパーカッションの平尾・藤本コンビが見れなくなるのはとても残念(だからって終演後うっかり藤本氏に話し掛けちゃうのはどーかと思うよ?)。
でももしかしたらこれからも客演と言う形で登場する事があるかも知れないとの事。それを楽しみにしておきます…。あのキビキビした演奏する姿が毎回見れないのはとても残念ですが、
これからの活動も頑張って欲しいですね。
中盤から後半にかけての部分で登場するヴィオラが重々しい音でカッコ良かったです。今日もトップの方が秋山氏ではなかったですよね(ちなみに女性の方でした…顔全然見えなかったんですけど)。
今日のヴィオラは魅せ場が沢山でしたね。あ、コンバスもか。コンバスは黒木氏が一人で持って行っちゃった感がありますけどね(笑)。館風の席からはトップに居る黒木氏は
全く見えませんでした…(涙)。
後半になればなるほど石田様は笑顔。もう、すごい楽しそうなんですよぅ。弾きたくて仕方ない、って感じでしょうか。普通にしているつもりでも
顔が笑顔になるのをとめられません(笑)。笑顔が素敵でしたわ〜。笑顔が!「にま」と笑ってるんです。
アクションもいつもよりもオーバー。魅せる演奏がカッコイイ!!!フィニッシュのボウイングとかカッコ良すぎです。自分の画力が無いのが悲しいです。
あまりに激しい演奏で、脳震盪を起こさないかちょっと心配になりました。頭もヴァイオリンも振りすぎだと思います。
でも石田様がこう言う曲で頭振ってなかったら「どうしちゃったの!?」と思うかも…。石田様がノってる印、かも。
待機中もノリノリでした(羨ましい…客席だってノリたい!!)。
ここまで音楽楽しめるって幸せだよなぁ。演奏者側がコレだけ楽しんでいれば聴いている方も幸せです。
若杉氏の指揮ともバッチリ呼応し合っていて、目でも楽しめましたし、神奈フィルらしいエナジィ溢れる演奏だったと思います。
惜しむらくは会場に空席が目立った事。こんな面白いプログラムを聴き逃すなんて!絶対勿体無い!そう思いました。