2005年10月9日
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
第219回定期演奏会『仮面の作曲家』
場所:みなとみらいホール
指揮:現田茂夫
チェロ:ナサニエル・ローゼン
ソロ・コンサートマスタ:石田泰尚
曲目
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番変ホ長調作品70
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲作品33
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47
★神奈川フィル定期に久々に石田様が帰って来た。9月定期をお休みしただけなのですが、
8月は無いので本当に久し振り。でも現田氏とのコンビネーションは既に見に染み込んだ物であるのか、
違和感やぎこちない所は全く無い。時折現田氏へ向ける視線が鋭く、指示を何一つとして見逃さんとしている様。
前半のショスタコーヴィチとチャイコフスキーを一緒に聴くと、まるで違う音楽だと言う事が良く分かる。
同じロシアなのだけれど、ここまで方向性が違うものなのかと痛感する。前半のショスタコが硬く、攻撃的な音色で
あったのに対し、チャイコは柔らかく、華やかで包み込むような音色。これにはびっくりしました。
ショスタコの9番では、1楽章に石田様のソロがあったりして中々聴き所アリ。道化風のピッコロや、
2楽章のクラリネットからバスーン、フルートへと移るソロなんかも酔っ払いみたいな音で面白い。
想像力を掻き立てるメロディが多く、なんだか映画音楽を聴いているような気分になった。ドラマチックと言う風にも言えるかもしれない。ただ、ちょっと
暗すぎるかもしれないが(笑)。
トランペットソロや金管隊のファンファーレも中々良い音をさせていて良かったです。
最終楽章の凱旋行進曲は、凱旋にしてはちょっと不協和音が多くて不思議な気分になりました。
不安を煽るような音になっているんですよね。。。この辺りがショスタコが仮面の作曲家と言われる所以なのかしら。
チャイコのロココ風はナサニエル・ローゼン氏の素晴らしいソロで。間近に聴くとかなり呼吸が聞こえて、びっくりしました。
うーん、気合が入っている人ってみんなそうなのかしら……(コンバスの黒木氏もソロの時は呼気凄いよね)。
音は、と言うと、深めの音なんですが、曲想の付け方が素敵。私は凄い好きだなぁ。これを声楽でやられると凄く嫌いな付け方なんだけれど、
楽器でやる分にはOK。と言うか、こう言う遊びが入っていないと楽器は色気が出ませんから。そう、色気の有る音なんですよ。これが結構イイです。
しかも、音のよさだけではなく、かなり技巧的な所も激しい曲なのにそれを難なく弾ききっているところからも素晴らしい演奏家である事がわかりますよね。
さて、本日のメインはショスタコーヴィチの第5番。略してタコ5(と言うらしいよ)。
神奈川フィルの弦は巷で「魅惑の弦」と言われているらしいですが、それだけの事はあります。
ビチリと嵌った弦の統率感、ハーモニーは素晴らしい。今日は特にヴァイオリン2パートが素晴らしかったなぁ。。。ヴィオラも
首席奏者が居ない中、段々安定感を増してきたし、弦は本当に素晴らしい。
1楽章のラストや、2楽章のコンマスソロの石田様の演奏も本当に素晴らしかったです。安定した高音で微妙な音楽の機微を
表現されて、聴いている方の心にストレートに這入って来る音ですね。ううむ。
3楽章はパンフに初演時、観客が涙にむせんだとあったが、現田氏はあまり強烈に涙を誘うようには造らなかった様だ。
ただ、淡々と端整な演奏をする事で逆に涙を誘った。しかし、「あー…泣いちゃうかも。」と思った良い所で3楽章が終わり、
全てを裏切る様な第4楽章に突入したのでちょっと残念。それにしても、第4楽章には全てを叩き伏せるだけのパワーがありますね。
コンマスとトロンボーンがノリノリでした。凄い印象的。笑顔が違うよ……。いや、演奏者が楽しそうだと見ているこちらも楽しいから良いんだけど。。。
実は明日も同じ曲を聴いたり(笑)。指揮が変わればどう変わるのか。それも楽しみ。