場所:神奈川県民ホール
指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
ピアノ:小菅優
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスタ:石田泰尚
曲目:ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番ハ長調
ピアニストアンコール:ショパン/ノクターン「遺作」
ブラームス/交響曲第1番ハ短調
★2005年シーズンの幕開けとなる今回のコンサートはシュナイト氏による、ベートーヴェンとブラームス。ブラームスの
第1番はベートーヴェンの第10番と呼ばれるほどの曲。この2人の曲をセットで聴かせると言うのはシュナイト氏らしい、
正統派な選曲と言えよう。だってタイトルも「ドイツ音楽の王道」だもんね。
ベートーヴェンのピアノは若手ピアニストの小菅優嬢。シンプルだけれどインパクトのある真っ赤なドレスで、笑顔で登場したが、
ピアノに向かうと表情が一変した。眉を寄せ、表情から笑顔が消え、真剣な表情になった。ソロ部では特に厳しい表情で鍵盤を叩いていた。
その後ろでピアノのメロディに合わせて楽しそうに体を揺らしていた石田様との画が対照的でした。集中するのも良いけど遊びの部分もないとね〜。
今回の演奏会、石田様は全体的にとても楽しそう。やけにノリノリで、自分が弾いていない所はウキウキで体を揺らしていました。
後、自分が弾いている所でも他のパートへの合図を出したりして、コンマスのお仕事もやってます。と言うか、体を揺らす事で
合図を出したりする事こそがコンマスのお仕事なのかも。
今年度の県民ホールの私の席はオーケストラを聞くと言う点では間違っている席なので今回はバランスについては何も言えず。
ただ、舞台の奥に位置する管楽器群の元気が良くて、しっかりと響かせて居たのが印象的だった。
ベートーヴェンの3楽章では弦楽器の音の色がコロコロ変わるのが面白く、
楽しませてくれた。神秘的に綺麗な音かと思えば、粗雑に、荒々しい感じのガシガシとした音まで、この音色の
使い分けにメリハリが効いていて流石神奈川フィル。最近の神奈川フィルはこう言う所が上手いんだよナァ。
さてブラームス。もう、出だしからしてぞくぞくする音色。この一瞬が幸せの瞬間だなぁ……と思う。また、
アレグロになってからの音の表情の変化も体が震えるような感動があった。2楽章のクラリネットとオーボエのメロディも良くて、久々に目が離せない演奏だった。
そしてそして!!ラストのコンマスソロッ!!妙に弦の音が静かになったな〜と思ったら石田様だけ弾いてない。
コレは!と思ったらコンマスソロです。もう口が開きっぱなしになっちゃうくらい綺麗なソロ。ホルンがしくならければそのまま夢の世界に
旅立っていたかも(笑)。ほんの少しでしたが、とても心が洗われました。
そして3楽章を経て4楽章。バラエティに富んだメロディや手法で、次は何がくるかと楽しみにさせる。弦楽器がピチカートオンリーになる部分があるのだけれど、
そのピチカートが段々大きくなっていったりする所の表情がとても面白かった。
この曲はメロディが豊かで、ベートーヴェンの第九に通ずる所があると言われているけれど、なんと言うか、第九よりも
ドラマティックな感じがする。なんと言うか、テレビドラマで盛り上がった時にかかる音楽みたいなのだ。
それは決して安っぽいと言う意味ではなくて、生々しい、と言う意味で捉えていただけると幸い。第九はちょっと神懸ってると思うのは私の偏見?(笑)
後半に至ってからの木管のメロディや弦楽器のメロディがそう感じました。今か今かとラストへ向かう進行も期待を良い感じに裏切ってくれて面白い。
いつまででも楽しめる曲である。
そしてとうとうラストだな!と言う部分へ至るともう、演奏から目が離せません。終わりの一音が響き渡ると同時に
今日は体に電流が走りました。こんなにドキドキしたのは久し振りかもしれません。いつも新しい感動を与えてくれるオケが神奈川フィルなんだなぁ。
私も今日は足をバタバタさせながら拍手してしまったので言えた事じゃないのですが、今日のブラボーはちょっと下品だったかなぁ……と思いました。体育会系の飲み会じゃないんだから(笑)。
2005年4月22日 現田茂夫&及川浩治
情熱のコンチェルト
場所:藤沢市民会館
指揮:現田茂夫
ピアノ:及川浩治
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲目:グリンカ/「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
変ロ短調 作品23
ムソルグスキー(ラヴェル編曲)/組曲「展覧会の絵」
プロムナード
1.こびと
プロムナード
2.古城
プロムナード
3.テュイルリーの庭
4.ビドロ
プロムナード
5.卵の殻をつけた雛の踊り
6.サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ
7.リモージュの市場
8.カタコンブ
9.雛鳥の足の上の小屋
10.キエフの大きな門
アンコール
チャイコフスキー/アンダンテカンタービレ
★今回の藤沢公演はロシア尽くし。最初のグリンカは後の五人組やチャイコフスキーに多大な影響を与えた人物。
続く2曲を期待させる様なわくわくした曲である。
悠々とした現田氏の指揮っぷりは見ていて気持ち良い。石田は居ないけれど任せろ!と言うかの様な弦楽器群の一体感は
素晴らしかった。石田様が居なくても神奈川フィルは良い演奏が出来るんだ!と言うのを証明してくれた演奏だった。
舞台の天井が低いので金管楽器の音が押し込められた様な窮屈な音に聞こえたのだが、これは明らかにホールのせい。勿体無い。
ただ、2階席の私にはダイレクトに音が届き、管弦のバランスが良いな・と感じた。いつも異常な席(音度外視の前のほう)で聴いているからなぁ(苦笑)。
自分、石田様が降り番の時は割合まともな席(笑)で聴いている気がします。
そして、本日の館風的メイン(笑)、チャイコフスキーのピアノコンチェルト第1番!
及川氏の燕尾服姿、カッコ良いですね。ソロ直前と言うのににこにこと爽やかな笑顔で会場の雰囲気を和ませた。
しかしピアノの前に座ると雰囲気が一変。出だしの金管に呼応する和音は最早弾くと言うよりも叩きつけると言う方が相応しい。
そして演奏スタイルは荒々しいのだが、決して1音1音をなおざりにしない丁寧な音楽造りをする。強拍と強拍に挟まれた弱音も弱弱しくならず、
きちんと自己主張している辺りが及川氏らしい。もう、この出だしを聴いただけで今日の演奏会の元は取れたなと感じる(なんせ館風が取ったB席は1500円と言う破格のお値段)。
及川氏は完全にマイ・ワールドに入っていて、2階席の館風邪にも息遣いが届いた。……と言うか、ちょっと凄すぎ。演奏が良いからそんなのは度外視すると言う意見と
演奏が良くても耳障りだと言う意見に二分するかも。館風は勿論前者です。
今日の神奈川フィルは、館風は調子が良いと思って聴いていたのだが、ピアノと一緒に演奏が始まったとたん、吹っ飛んでしまった。それ程及川氏の
パワー・エモーションは凄い。指揮の現田氏もオケを煽ってはいたけれど、もうひとつ物足りなさが残った。特に、弦楽器。
これは神奈川フィルのパワーが足りないと言うよりも及川氏が凄すぎるのでしょう。それに、館風は空に向かって口を開けるピアノの音がダイレクトに届く位置に座っていたので特にそう感じたのかも。
しかし、それを踏まえた上で、やっぱり及川氏に対抗するにはコンマスは石田様じゃなきゃ!と感じたのは館風だけだろうか。来年同じような企画を立てる時は早めに立ち上げるように(笑<誰に言ってるの?)。
後半、「展覧会の絵」は最早神奈川フィルのスタンダードナンバなのか、どっしりとした演奏。
出だしの金管(特にトランペット!)も傷なく滑り出し、10枚の絵に向かうプロムナードの厳粛でいて期待させる様な音楽に仕上がっていた。
この曲はとてもおどろおどろしい曲と可愛らしい曲が半々ぐらいであるのだが、可愛らしい曲でもどこか翳りがある様な
曲が多く、明るいだけの曲に飽きた人向きの組曲。第1曲の「こびと」は妙に暗い、何か出てきそうな音楽で、
館風は「こびと」と言うとなんだかちまちましていて可愛らしいイメージを勝手に持っていたのだが、それとは真逆。
邪悪なこびとが出てきそうな音楽。あぁ、毎回聴く度にそう思っている気がする。
また、この曲は贅沢な楽器編成で、音を際立たせたいからと言ってハープが2台居たり、「古城」の為に
だけアルトサックスが居たり……。「ビドロ」のユーフォニウムもこの曲の為だけに居るのだ。スタンダードナンバである
この曲ですが、結構演奏は大変なのかもしれない。
間間に挟まれるプロムナードは始めの内は堂々としたハッキリとしたメロディなのだが、段々とハーモニーがアレンジされ、
メロディまでも崩れていく。これがまた面白い。同じ曲を何度でも楽しめるのは、メロディを演奏する楽器が次々と入れ替わったり、
ハーモニーの変化が面白いからだろう。ラヴェルのオーケストラレーションの素晴らしさが分かる曲。まあ、ラヴェルは「ボレロ」を見れば分かるように
同じメロディで延々と演奏するだけなのに素晴らしい曲に書いてしまう人だ。「展覧会の絵」の編曲で今一番演奏されるのがラヴェル版だって言うのも納得だろう。
現田氏の指揮はドラマティックが何たるかを分かった指揮で、じりじりと盛り上げていくのが聴いている方としては焦らされているように感じ、最高潮に達した部分では
こちらも呼吸ができないくらいの興奮を与えてくれた。やはりこの指揮あっての神奈川フィルだろう。最後の「ため」もとてもギリギリのラインだけれど、心地よい
ためで良かった。あれより長くても短くても全く違うモノになっていただろう。
本日の演奏会、会場は若い観客が多かった様に感じた。私の隣も小学生でしたし(寝てたけど)。弦楽器をやっている様な高校生も
たくさん居たし、勉強になったかな?隣のお母さんが子どもに「ほら、今出てきた人は何をする人?」と教えていたり(結局子どもは2曲目の途中で爆睡し始めて結局展覧会の絵が全部終わるまで起きなかったけど)、微笑ましい姿も見られた。
確かに藤沢とか、その辺に住んでいたら横浜まで足を伸ばすのはちょっと大変・と思ってしまうかもしれない。だからこう言う地元密着型の
演奏会と言うのも大切で、良い企画だと思う。ただ、寝ても良いけど寝息は勘弁して欲しかったな〜……(苦笑)。