2004年演奏会日記10月

10月10日 ★横浜JAZZプロムナード@情文ホール
10月10日 種谷睦子マリンバ・コンサート(19時)@KH
10月11日 コール・ヴァフナ第20回記念定期演奏会@石橋メモリアルホール
10月11日 Tango SpiritV@東京国際フォーラム ホールC
10月14日 三善晃の世界@文京シビックホール
10月17日 ★神奈川フィル第210回定期演奏会@KH
10月28日 喜多直毅+タンゴフォビクス@STB





2004年10月10日
横濱JAZZプロムナード
TRIO LIBERTAD


場所:情文ホール(関内)
演奏:トリオ・リベルタ
 ヴァイオリン:石田泰尚
 サックス:松原孝政
 ピアノ:中岡太志
曲目:アストル・ピアソラ
トーノ・ブエノスアイレス
ブエノスアイレス午前0時
ブエノスアイレスの夏
天使の死
天使のミロンガ
天使の復活
デカリシモ

タンガータ
リベル・タンゴ
 アンコール
乾杯

★なんと言ったらいいのだろうか。ジャズプロというイベント性も手伝って、 もう全員の気合が違う。一時間と言う短い短期集中的要素もあるだろうが、トリオ・リベルタから発せられる オーラはいつもの二倍も三倍もあったように感じた。
 始まりはブエノスアイレスのシリーズより3曲。始めは腕ならしっぽい感じだったのだが、 「ブエノスアイレスの夏」では3人とも大ブレイク。フィニッシュがとにかくカッコイイ!!

 石田様は出番が無い所では松原氏のソロに合わせて身体を揺すったり、頷いたりして弾きたくて仕方がない様子。 演奏中も様々なきっかけの部分で松原氏と顔を見合わせてニヤリ。とても楽しそうでした。

 後半、「デカリシモ」からは益々気合がノってきて、ド派手な演奏に仕上がっていました。
 個人的には「鮫」の石田様の高音にクラクラです。力強い高音は生命力を感じさせ、鮫が泳ぎまわって闘う 様が目に見えるようでした。

 タンガータはクラシックよりのナンバーなのですが、改めて聴くとなんだかヴァイオリンソロだけコンテンポラリー 入ってますよね(笑)。
 トリはリベル・タンゴ。聴くたびにアレンジが変わっているけれど、今日も変わっていましたね!くぅう!例の有名なメロディが 出て来るまでが腕の見せ所なんですね。石田様もメインを弾く時はここぞとばかりに動きが派手に。またそれが魅せ方を知っていて、 とてもカッコイイのです。しかも、脇役のメロディの時はちゃんと控えめなのだけれど、存在感だけは誰にも負けていません。 しっかり音楽を支えていて、そこはオケで弾いている時の石田様と共通するかも。

 アンコールは最近お気に入り(なのだと勝手に思っている)の「乾杯」。これは松原氏のソプラノサックスが素晴らしく、 指の動きが光速でした。なんだか松原氏も最近とみに上手くなったと思います。いや、いつも石田様ばっかり見ているから今更 気付いただけかもしれませんが(苦笑)。

 演奏が全て終わると石田様は汗だく。会場内、私は少し涼しいくらいだったので石田様たち演奏者の気合の入りようがよく解ると言うもの。 時間は短いけれど、こう言うイベントだからこその演奏もある。
 また来年が楽しみです。
 まだ赤レンガ行った事が無いので是非来年はまた赤レンガで宜しくデス(笑)。




2004年10月10日
海岸通りのクラシックコンサート
種谷睦子マリンバ・コンサート


場所:神奈川県民ホール小ホール
マリンバ:種谷睦子
菅原淳
岡田眞理子
安原千晶
ピアノ:一柳慧
曲目:
モーツァルト/ディベルティメント ニ長調 K.136
 (マリンバ:種谷睦子・菅原淳・岡田眞理子・安原千晶)
J.S.バッハ/シャコンヌ
 (マリンバ:種谷睦子)
一柳慧/パガニーニ・パーソナル
 (マリンバ:種谷睦子・ピアノ:一柳慧)
権代敦彦/木霊[世界初演]
 (チェロマリンバ:種谷睦子・菅原淳)
一柳慧/バラード
 (チェロマリンバ:種谷睦子)
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
 (マリンバ:種谷睦子・ピアノ:一柳慧)
アンコール
 山田耕筰/荒城の月
 (マリンバ:種谷睦子)

★4いきなりモーツァルトである。しかもマリンバは3台、奏者は4人。激しいにも程がある。 バッハのシャコンヌは一人でここまでやってしまうのかと言う大迫力。しかも種谷さんは全ての曲 (委嘱新曲以外)が暗譜なのです。それだけでも彼女の素晴らしさがわかるでしょう。

 前半ラストの「パガニーニ・パーソナル」はいきなり食器が乗ったワゴンを思い切り突き飛ばしたみたいな 激しいピアノから。しかもパガニーニの24番をモチーフにしてあると言うのですが、始めのワンフレーズ弾いたら後は殆ど 原型を留めていません。おそらくパガニーニを良く知っていれば似ているところもあるとは思うのですが、私にはさっぱりでした。 しかし現代音楽好きの私と友人はいたくこの曲がとても気に入りました(笑)。

 今日の注目の権代敦彦氏の新曲ですが、世界に一台しかないチェロマリンバの為の曲で、しかも二重奏(一台を二人で叩く)。 種谷嬢と菅原氏は子どもの頃からの知り合いらしく、息も合って、素晴らしかったです。二人で一つの 鍵盤(って言うの?)を叩いたりする場面もあって、面白かったです。最後なんて低音から高音へ向かって一人ずつぐるぐる回ったり(ああ、 ダメだ、言葉で説明できない)して、連弾でもピアノじゃこれは出来ないなぁ、と思いました。やはりコンテンポラリー、 試み自体が面白かったりしますね。

 チェロマリンバは種谷嬢による特注の全てが木製のマリンバで、最低音がチェロと同じ音の所からチェロマリンバと名前をつけたとか。 音は低音の方は何故か高い音の方が良く聞こえ、その後ろから亡霊のように低い音が響いてくる、と言う不思議な音色でした。 音が高くなるとそのギャップが段々と埋ってきてまた違う音色になって、とても面白かったです。

 最後の「ツィゴイネルワイゼン」はまさかマリンバでここまでやってしまうとは・と言う凄い内容。 ううん、超絶技巧ってこういう事を言うのだろうか。ヴァイオリンでも超絶技巧満載のこの曲、マリンバで演奏しても超絶技巧が満載でした。 トリルの残像しか見えません(笑)。

 私は初めて彼女の演奏を聴いたのですが、本当に素晴らしい演奏でした。トークもかなり面白かったです。権代氏との トークはなんだか不思議な雰囲気でした。あの二人、妙にテンションが高いです(笑)。しかし演奏の方は真摯で、まっすぐで、 曲の中に入り込んで弾いている感じがして、とても良かったです。
 しかもこのコンサート、昼の部はチケット完売、私が聴いた夜の部は追加公演だったのです。おまけにこの夜の部も チケット完売。素晴らしいですよね。コンテンポラリーの演奏会で会場が埋っているのを久々に見た気がします。とても 嬉しく感じました。




2004年10月11日 Chor WAFNA
 第20回記念定期演奏会


場所:石橋メモリアルホール
指揮:川合良一(常任指揮者)
 車真佐夫(団内指揮者)
テノール:小林彰英
オルガン:中野ひかり
ピアノ:武部純子
合唱団:コール・ヴァフナ
曲目:
1:男声合唱組曲「草野心平の詩から」
 作詩:草野心平 作曲:多田武彦
 指揮:川合良一
2:混声合唱曲「季節へのまなざし」
〜第20回記念混声合唱ステージ〜
 作詩:伊藤海彦 作曲:荻久保和明
 指揮:川合良一 ピアノ:武部純子
3:ライン河の歌
1.Rheinische Lieder-Schoene Frau'n beim Wein
 作詩・作曲:Willi Ostermann
2.Wir vom Rhein
 作詩:Ludwig Andersen 作曲:Curt Mahr
3.Frolicher Rhein
 源編曲:Rolf Bender
編曲:佐渡孝彦
指揮:車真佐夫 ピアノ:武部純子
4:ミサ曲 変ロ長調(Op.172)
 作曲:J.G.Rheinberger
 指揮:川合良一 テノール:小林彰英
 オルガン:中野ひかり

★友人が出演するというので久々にアマチュア合唱団の演奏を聴きに行った。しかも男性。 友人が出演したのは第2部混声合唱ステージである。

 1ステの多田武彦は中々によくハモり、微妙な音程も気持ち良く聴かせてくれた。流石男声合唱団と言うべきであろうか。 ベースの鳴りが良い。これは2ステの荻久保和明も期待できるぞ――と思ったら何だか女声に押され気味(笑)。
 男声もっと頑張れ!と思いながら聴いていたのだが、男声がノッてきた後半は女声も益々エンジンが快調になり、フィナーレは 最大に盛り上がった。ソプラノ、お見事。また、この曲はピアノが難しく、それを美しく弾いた武部嬢にも拍手。

 3ステのライン河の歌はどれも軽快で、気持ち良く、割り合い重い曲に挟まれていたので気軽に楽しめて良かった。しかも、 ソリストが何人もいたのだけれど、全て団内でまかなっていました。そういう、実力のある人が沢山居ると言うのは素晴らしい事ですね。

 4ステはパイプオルガンとテノールソロと男声合唱。このテノールソロがまた迫力でカッコ良い。団員はヒラで2列に並び、中央奥のパイプオルガンの前に テノールソロと言う配置で、合唱団との対比が面白かったです。

 実はアンコールは3曲目まで聴いたのですが(しかもタイトルが解らない……)次があったため 失礼してきてしまいました。ごめんなさい!!

 20回も定期演奏会を行なえると言うのはすばらしい事ですよね。私も合唱を長く続けていきたいです。




2004年10月11日
 小松亮太プロデュース
Tango SpiritV
 〜第三章。疾走のTango〜


場所:東京国際フォーラム ホールC
出演:小松亮太&ザ・タンギスツ/オルケスタ・ティピカ
スペシャルゲスト
ピアノ:オスバルド・べリンジェリ
ダンス:ミリアム&ウーゴ
曲目:Bプログラム
 ペトチャプリカ/熊田洋
 スピカ・エスキス/小松亮太
 リベルタンゴ/ピアソラ
 鮫/ピアソラ
 バンドネオン協奏曲/ピアソラ
 ア・ミス・ビエホス(わが両親に)/ベリンジェリ
 ピスシアーノ/ベリンジェリ
 タコネアンド/マフィア
 泣き虫/ラドリサーニ
 アパシオナード/ベリンジェリ
 マランボとミロンガ/ベリンジェリ
 クィーンタンゴ/ベリンジェリ
 ティエンポ・イマヒナード/ベリンジェリ
 アディオス・ノニーノ/ピアソラ
 ラ・クンパルシータ/ロドリゲス

★実は小松亮太初体験である。おまけに散々タンゴ(つかピアソラのみだけど)を聴いているくせに バンドネオン入りのタンゴのコンサートも初体験と言う館風である。

 冒頭から小松氏の軽妙なトークで会場内はリラックスムードに。
 「こんな曲知らないとか言わないで聴いて下さい。」と始まったのは本日第1部のピアノを担当する熊田氏作曲の「ペトチャプリカ」。 ベートヴェンのSQ14番を聴いて思いついたと言うこの曲、確かにタンゴなのですが、様々な要素が入り混じり、とても面白い曲でした。 館風的にはこの曲が一番好き。

 前半は「リベルタンゴ」でミリアム嬢とウーゴ氏がダンスを披露。やはりタンゴ、かなり大人のムード。ミリアム嬢の スリットが脚の付け根まっで入っていて、目のやり場に困ってしまいました。なんと言うか、逆に目が行っちゃうんですけどね(笑)。
 ウーゴ氏はこれでもかと言うほどミリアム嬢を頭上で回してフィニッシュ。何なのだこれは!!と言う様な新たな世界を知りました。

 前半ラストは本来ならば40人以上の置けで演奏する「バンドネオン協奏曲」を13人で。小松氏のバンドネオンの1から10までを 体験できました。感傷的な2楽章と熱情的な3楽章との対比が素晴らしく、オケとの息も合っていてカッコ良かったです。

 後半はピアノのベリンジェリ氏を迎えての演奏。1曲目はご本人の曲を。
 それにしてもピアノが上手い!!!小松氏がベタ褒めで紹介したのですけれど、それもそのはず、音が全然違うのです。軽やかに引いていて、 それでいて一つひとつの音がきっちり立っている。さり気ないようでいて存在感は誰にも負けていない(あれ、これ昨日も書いたな……)。 本当に素晴らしいピアニストです。

 「アディオス・ノニーノ」では華麗なピアノソロを披露。始まって暫くした所ではフォビクスの喜多氏との絡みがあり、喜多氏のヴァイオリンも艶のある響きを聴かせてくれた。 流石フォビクスの代表!!カッコイイです!!

 ラストは超有名な「ラ・クンパルシータ」。有名なだけにどうなのかな〜と思っていたのだけれど、有名だからこそ、バンドの個性が思い切り 出るんだなぁ・と感じました。つまり、それくらいアレンジが素敵だったと言う訳です。
 やっぱりタンゴとかジャズって言うのは即興が勝負、それぞれの個性が大切なんですね。同じ曲をやってもバンドが違うと全く違う曲になるので とても面白かったです。招待券で。




2004年10月14日 音楽の未来遺産
シリーズ三善晃の世界 2003-2004
 第三回 言葉の世界


場所:文京シビック大ホール
指揮:沼尻竜典
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:天羽明惠
合唱:東京混声合唱団
 東京大学柏葉会合唱団
合唱指揮:田中信昭
曲目:三善晃作曲
焉歌・波摘み
ソプラノと管弦楽のための『決闘』
レクイエム

★友人が「今回聴かなかったら100年は聴けない」と言い張るので(笑)聴きに行きました。 東大の柏葉会が出るだけあって、どうやら東大生と思しき学生がわらわら。 学生券はびっくりするほど安いのでちゃんとこの演奏会成り立っているのかしらと勝手な心配をしてしまいました(笑)。 でも何はともあれ、若い人がコンテンポラリーの演奏会に沢山来てくれるって言うのはうれしい事です。

 1曲目の「焉歌・波摘み」は神奈フィルの春の定期でも聴いたのだけれど、何度聴いてもあの音が渦を巻く感じは凄い。 二度目だったからか、演奏会前に読んだ解説が詳細だったからか、真ん中らへんでヴィオラが子守歌を歌う前に トランペットやボーンの金管陣が調子外れの子守歌を歌っているのが聞こえました。それが何だか悲鳴のようで妙に苦しくなりました。 重層的に構築された音の洪水に飲み込まれる感覚は三善晃ならではで、この後の二曲もその感覚は変わらない。

 2曲目の「決闘」ではパンフレットの楽器編成に「混声合唱」とあるのに舞台上に合唱団が居ない。 何で?!と思ったのですが、時折ソプラノの後ろからもや〜っと女声が……。おそらく舞台裏で歌っていたのだと思いますが、殆ど解らず。
 この曲はソリストの天羽嬢が伸び伸びとした声でとても良かったです。いや、もう本気で思いっきりコンテンポラリーど真ん中なので歌うのは凄く大変そうなのですけどね(笑)。

 そして最後の「レクイエム」はもう、何を語れというのか。それ程の圧倒的な音圧でもって飲み込まれてしまった。
 この「レクイエム」は通常のキリスト教のテキストを用いる訳ではなく、反戦の詩が主に選ばれている。中には特攻隊の方の遺書なども含まれており、 かなり重い。しかし合唱は殆どその意味が解らなくなるほど歌詞を分解し、重ねて歌うので、意味を聞き取ろうとするのは無意味である。 その音圧によって意味が身体に染み込んで来る。だけど第二章の部分で泣いてしまったのは秘密である。

 そして今日も三善先生はカッコ良かったです。これからもばりばり作曲していって欲しいですね。


















2004年10月17日
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
第210回定期演奏会『浄化の世界』


場所:横浜みなとみらいホール
指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
クラリネット:カール・ライスター
ソロ・コンサートマスタ:石田泰尚
曲目
W.A.モーツァルト/クラリネット協奏曲
 イ長調 K.622
ブルックナー/交響曲第9番
 ニ短調 (ノヴァーク版)

★本日の定期はモーツァルトとブルックナー。しかも今回はどちらも結果的に見れば晩年の作品。
 しかし、35で死んだモーツァルトと70過ぎまで生きたブルックナーとでは、かなり意識が違うかもしれない。

 クラリネット協奏曲ではモーツァルトの軽やかなメロディが踊って心地よい。ソリストが出て来るまで等は 殆ど弦楽器の独壇場で、小編成ならではの可憐な響きを楽しませてくれた。
 ソロは難しく書かれているとの事だが、ソリストのカール・ライスター氏があまりに軽々と演奏するので、もしかしてあまり難しくないのではないかと思わせるほど。 しかし、よくよく見れば表情は真剣そのもので、かなり気の遣った演奏である事が分かる。
 この曲のソロパートは音域の広いクラリネットの特徴を生かしたもので、高音部と低音部がサンドイッチになる部分などもあった。 この部分では軽くまろやかな高音と、それを更に包み込むような低音が乱れる事なく入れ替わり、カール・ライスター氏の凄さを感じさせた。
 技術については良く分かりませんが、とにかく音が柔らかく、優しい音で、クラリネットっていいなぁ・と思いました。

 パンフに寄れば、モーツァルトはクラリネットが大好きだったらしく、クラリネット用の曲などを沢山残しているらしい。 先日聴いたモーツァルトで、オーボエの代わりにクラリネットが入っていて驚いた事があったが、どうやらこう言う事情だった様だ。 今回も管はファゴット2、フルート2、ホルン2、と言う変わった編成で、ソリストにクラリネットが居る為かオケはオーボエもクラリネットも無し。 チューニングをフルートが行なう、と言う面白いことになっていた。

 ブルックナーは所謂ブルックナー開始なのだが、弦楽器は弓を持つ右手が動いているのが殆ど分からないぐらいの小刻みなトレモロ。その上に重なるホルンのハーモニーがバッチリ 決まり、出だしは上々。更にその後一番始めの盛り上がりの部分では総力を尽くした金管パートが派手な和音を決めて、今日の演奏の成功が約束されたと思う。

 個人的に一番お気に入りなのは2楽章で、とにかくド派手な不協和音がたまらない。あの弦楽器が揃って低音をジャジャジャッと弾くのは 2階席から見ていて壮観であった。
 この部分の石田様はとにかく派手な演出で、最後の1音を弾くところでは弓捌きが特別に大きい。心なしか弓どころかヴァイオリンまで動いていた 様な気もします(笑)。
 このテーマは何度か出て来るのだが、その間に挟まれたピチカートの部分も負けずに派手なのが石田様らしい。この楽章は何度CDで聴くよりも一度実際にホールで聴いた方がずっと面白いですね。

 3楽章は1stヴァイオリンのパートソロから始まるのだが、これがまた一つの音になっていて、カッコ良いのだ。ヴァイオリンと言うと高い音ばかり注目されてしまうけれど、 低い、中低音も中々にカッコ良い。
 ついつい管パートが気になってそちらに目が行ってしまったのですが、そちらのメロディのやりとりなんかもかなり面白い。 ヴァイオリンはオケの華だけど、おいしい所はホルンやクラリネット、オーボエなんかが持っていくんですよね(笑)。
 あ、おいしい所、と言えば、今日は時折2ndヴァイオリンがおいしいな!と思わせる部分がありました。なんと言うか、1stの陰に隠れがちなんだけど、 やる事やりますおいしい所は頂きます、みたいな感じでカッコ良いです。渋い!

 今日の演奏会はオケのノリがとても良かったように思います。弦の首席も全員揃っているし、管の方も首席が揃っていたんじゃないかと推測するので、 オケの方もかなり本気。と言うか、何より石田様の気合の入り方が違う(様に見えた)。
 今日の石田様は演奏中弓の毛が切れること……何回?とにかくブチっと素早くちぎっていたのは5回以上。それ程激しい演奏でした。 ヴァイオリンは殆ど休みなしの状態なので石田様は隙を見て弓を整える、なんて事も中々できず、チラチラする千切れた毛が 邪魔そうでした。
 演奏中はいつもより指揮者を見る回数が多く、きゅっと口を引き結んでの演奏でした。演奏に対する真摯な姿勢が伝わってきた気がします。石田様は演奏している時は いつも楽しそうだな〜と思っていたのですが、今日みたいにちょっと真剣!みたいな感じもいいですね。

 実は私、予習の為に何度かこの曲を聴いたのですが、中々馴染めなくて、当日大丈夫なのだろうか……と思っていたのですが、 百聞は一見にしかず。生演奏を聴いたらブルックナーも良いじゃない!と言う気持ちになりました。好きになりそうです。 やっぱり、生の威力は違いますね。




2004年10月28日 喜多直毅+The Tangophobics


場所:スイートベイジル STB139
Violin:喜多直毅
Cello:阪田宏彰
Guitar:竹内永和
Piano:飯田俊明
Contrabass:田中伸司

曲目:1st
1:タンゴエチュードより第4楽章(A.Piazzolla:Vnのみ)
2:とろ火で(H.Salgan)
3:レスポンソ(A.Troilo)
4:街角のロマンス
5:コモ・ドス・エストラーニョス(Vn,Vc,G)
6:ミロンガ・デ・ミス・アモーレス(P.Laurenz)
7:機械のカラダ(喜多直毅:Vn,pf,cb)
8:リベルタンゴ(A.Piazzolla)

2nd
1:タンゴエチュードより第1楽章(A.Piazzolla:Vnのみ)
2:リアチュエロ波止場の霧
3:酔いどれ達(Vn,Vc)
4:秋のテーマ(E.M.Francini)
5:モモケロ(喜多直毅)
6:想いの届く日(C.Gardel)
7:ノヴィエンブレ・メランコリコ(喜多直毅:Vn,pf,cb)

アンコール
 来るべきもの(A.Piazzolla)

★とうとう館風も六本木デビューである。スイートベイジルはあまりにも敷居が高すぎて 敬遠していたのだけれど、これを逃したら都内のライヴは暫く無いかもなーんて言われたら行くしか無いです。

 結論。
 行って良かったです。やっぱり、生じゃないと分からない事とか、たくさん有りますからね。
 雰囲気がとても良いし、演奏はクールでホット。カッコイイのですよこれが!!噂の喜多氏も淡々とボウイングしているんですが、 アツイんです!!

 また、凄く勉強になったなぁ、と思ったのは、どこで何をやっているのか見えたこと。これでちゃんと認識して聴けたと言う感じがして、 ライヴを楽しめました。
 私なんかは耳が悪いのでCDだと今聴いているのがチェロの高音なのかヴァイオリンの低音なのかわからなかったりするのですが、 それがライヴだと視覚的にバッチリ見えますから、勘違いしようが無い。しかも、一度こうやって聞くと 次にCDで聴いてもバッチリその音は何の音、とわかるようになる。認識しながら聴くとその音の特徴を覚えこむんでしょうかね。 今日聴いてみたらチェロとヴァイオリンを間違える自分がどうかしてたと思いました。ごめんなさい。
 後、ピアノの鍵盤が波打ってるのを久々に見ました。手が痛そう。残念ながら飯田氏は演奏中ずっと後姿でしか拝めなかったのですが、 背中がカッコ良かったです。えっと、スイートベイジルって、チェロとピアノがバッチリ見える席ってどこなんですか?(<また行く気らしい)

 今回のライヴはタンゴフォビクスのCDから沢山引っ張ってきていた様で、タンゴ初心者の私でも充分に楽しめました。 でもきっとライヴが初めてなのにCDは持ってるなんて言うのは私だけ(笑)。でもCDに入れるような曲って事は、 やっぱり良い曲ばっかりだし、その上CDから更にアレンジされていて、またカッコ良くなっていました。喜多氏は即興バリバリだったみたいですね。 喜多氏のセンスがスパークしてました。

 タンゴフォビクスのメンバーを見ているとなんだかとってもクールで職人な感じ。この中に入ると先日の小松亮太ではさらっとクールな演奏だと思っていた 喜多氏もホットに見えてしまうから不思議。
 喜多氏は常にオイシイのでともかくとしても、全員それぞれ魅せ所があって、面白かったです。

 喜多氏の音はしっかり芯のある力強さに溢れる音で、ぐいぐいと観客を音楽に惹き込んで行く魅力がありました。スイートベイジルは お酒を飲みながら音楽を聴けるお店だけれど、演奏が始まると誰もが舞台に惹き付けられて、食事やお酒なんて俗世の事は忘れてしまいました。 実際、観客の視線は舞台に釘付けでしたしね。
 喜多氏は何をすれば一番効果的かを知っている人で、こんなことはなんでもないさ・と言う表情でクールに弾いているけれども、それがまたアツい。 個人的には喜多氏の激しい高音が好き。うーん、ヴァイオリンはやっぱり高音が好きだ。

 田中氏はMCで住宅展示場を見に行って凹むという話を披露する等、中々におちゃめな方でしたが、演奏もコントラバスを叩くわ弾くわ 、目にも楽しい演奏でした。リベルタンゴではコントラバスソロを披露。シブくてカッコいいですねぇ。やっぱこの低音、たまりませんね。 喜多氏は折角だから・と言ってソロをお願いしたらしいのですが、田中氏によれば毎回ソロを弾いているそうな(笑)。確かにコントラバスは リズムとベースメインになってしまうので、ソロが少ない印象を受けるのも仕方が無いかも。でも毎回頼んでおいてどうなのリーダー(笑)。あ、もしかして 忘れた振りして毎回ソロやらせようって魂胆か!(笑<冗談です)

 阪田様はソロが多くてかなりオイシイ。街角のロマンスなんかはチェロのソロからスタートでしたし、酔いどれ達はチェロとヴァイオリンだけなので かなり目立ちます。秋のテーマはとにかくカッコ良かったです。いつも喜多氏の影の様に弾いているので気づき難いんですが、「お、この音いいなぁ」と 思うとチェロなんですよねぇ。阪田様はもっと主張しても罰は当らないと思います(笑)。サインも(笑)。

 影の様にと言えば竹内氏。黙々と弾いている風に見えて時折チラっと喜多氏をチェックして合わせて行くんですが、ギターの繊細な 音が良いのです。時折音が薄くなった時にメロディがギターで聞こえてきたりして、心地よくなります。前半のコモ・ドス・エストラーニョスは ヴァイオリンとチェロ、ギターの3人だったのでギターの旋律がいつもより聞こえてきて良かったです。

 ピアノの飯田氏については館風はライヴの最中「カッコイイカッコイイ」と大ハシャギだったのでマトモなコメントを書く自信がありません(笑)。 ほら、前に出てきた感想は「カッコイイ」しか言ってないでしょ?(笑)

 MCでは風邪をひいていると言う喜多氏はちょっと押さえ気味のトーク。それでもかなり面白くて一人で沢山笑ってました。会場の笑いの半分位は私の声だったかも(笑)。
 第2部の始めでは喜多氏が「それでは一人ずつ、踊りながら入ってきてもらいましょう!」と紹介した為にみんなが踊る羽目に。 飯田氏はそのクールな外見とは裏腹にクルクルとターンを決めて本当に踊りなら入って来てくれました。おちゃめな上にカッコイイなんてちょっと反則ですよ(笑)。
 我らの期待の阪田様は喜多氏が「踊ってくれないだろうなぁ〜」と言いながらの紹介で、本当に普通に入場。後々お話を聞いたら「踊るつもりだったけど『踊ってくれないだろう』って言われたから 踊らなくて良いかって」との事。くぅやしぃ〜!!阪田様が踊っているのが見れたかもしれないのに!!何だか 損した!と思ったのは私だけなのか(笑)!

 曲目としては、喜多氏オリジナルの曲たちが好きでした。3曲あったんですが、そのどれもがロマンティックなメロディで、盛り上がるし、好き。 一番のお気に入りは「機械のカラダ」でしょうか。残念な事にチェロとギターが居ません。譜面が間に合わなかったらしい。きーたーさぁーん!!

 アンコールの「来るべきもの」はピアソラのナンバーですが、私は直ぐに「あ、ピアソラだ!」と思ったものの タイトルが思い出せず、四苦八苦。しかもアレンジが原型を殆ど覆い隠すほどのアレンジで、元曲が解らなかった・と言う言い訳すら通りそうな凄いアレンジ。 これも本当にカッコ良かったです。やっぱりこう言うものってアレンジがカッコいいと違いますね。

 コンサート終了後、CDを買った人にサイン!と言うサーヴィスをしていたのですが、二枚持っている私は泣く泣く涙を飲む事に。 でもタンゴフォビクスの方々は皆さん良い人で、私がCDも買ってないのにおねだりしたらサインして下さいました。 本当に有難うございました。大事にします。

追記:ライヴ当日の夜感想を書いてアップしたんですが、あまりにハイテンションでおかしかったので 加筆・修正してみました。でもあんまり変わらないかも。人に言われて気がついたけど「カッコイイ」を連発しすぎ(苦笑)。 もう少しまともな感想が書ける様に勉強してきます。。。



















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