クラリネット協奏曲ではモーツァルトの軽やかなメロディが踊って心地よい。ソリストが出て来るまで等は
殆ど弦楽器の独壇場で、小編成ならではの可憐な響きを楽しませてくれた。
ソロは難しく書かれているとの事だが、ソリストのカール・ライスター氏があまりに軽々と演奏するので、もしかしてあまり難しくないのではないかと思わせるほど。
しかし、よくよく見れば表情は真剣そのもので、かなり気の遣った演奏である事が分かる。
この曲のソロパートは音域の広いクラリネットの特徴を生かしたもので、高音部と低音部がサンドイッチになる部分などもあった。
この部分では軽くまろやかな高音と、それを更に包み込むような低音が乱れる事なく入れ替わり、カール・ライスター氏の凄さを感じさせた。
技術については良く分かりませんが、とにかく音が柔らかく、優しい音で、クラリネットっていいなぁ・と思いました。
パンフに寄れば、モーツァルトはクラリネットが大好きだったらしく、クラリネット用の曲などを沢山残しているらしい。
先日聴いたモーツァルトで、オーボエの代わりにクラリネットが入っていて驚いた事があったが、どうやらこう言う事情だった様だ。
今回も管はファゴット2、フルート2、ホルン2、と言う変わった編成で、ソリストにクラリネットが居る為かオケはオーボエもクラリネットも無し。
チューニングをフルートが行なう、と言う面白いことになっていた。
ブルックナーは所謂ブルックナー開始なのだが、弦楽器は弓を持つ右手が動いているのが殆ど分からないぐらいの小刻みなトレモロ。その上に重なるホルンのハーモニーがバッチリ
決まり、出だしは上々。更にその後一番始めの盛り上がりの部分では総力を尽くした金管パートが派手な和音を決めて、今日の演奏の成功が約束されたと思う。
3楽章は1stヴァイオリンのパートソロから始まるのだが、これがまた一つの音になっていて、カッコ良いのだ。ヴァイオリンと言うと高い音ばかり注目されてしまうけれど、
低い、中低音も中々にカッコ良い。
ついつい管パートが気になってそちらに目が行ってしまったのですが、そちらのメロディのやりとりなんかもかなり面白い。
ヴァイオリンはオケの華だけど、おいしい所はホルンやクラリネット、オーボエなんかが持っていくんですよね(笑)。
あ、おいしい所、と言えば、今日は時折2ndヴァイオリンがおいしいな!と思わせる部分がありました。なんと言うか、1stの陰に隠れがちなんだけど、
やる事やりますおいしい所は頂きます、みたいな感じでカッコ良いです。渋い!
今日の演奏会はオケのノリがとても良かったように思います。弦の首席も全員揃っているし、管の方も首席が揃っていたんじゃないかと推測するので、
オケの方もかなり本気。と言うか、何より石田様の気合の入り方が違う(様に見えた)。
今日の石田様は演奏中弓の毛が切れること……何回?とにかくブチっと素早くちぎっていたのは5回以上。それ程激しい演奏でした。
ヴァイオリンは殆ど休みなしの状態なので石田様は隙を見て弓を整える、なんて事も中々できず、チラチラする千切れた毛が
邪魔そうでした。
演奏中はいつもより指揮者を見る回数が多く、きゅっと口を引き結んでの演奏でした。演奏に対する真摯な姿勢が伝わってきた気がします。石田様は演奏している時は
いつも楽しそうだな〜と思っていたのですが、今日みたいにちょっと真剣!みたいな感じもいいですね。
実は私、予習の為に何度かこの曲を聴いたのですが、中々馴染めなくて、当日大丈夫なのだろうか……と思っていたのですが、
百聞は一見にしかず。生演奏を聴いたらブルックナーも良いじゃない!と言う気持ちになりました。好きになりそうです。
やっぱり、生の威力は違いますね。
場所:スイートベイジル STB139
Violin:喜多直毅
Cello:阪田宏彰
Guitar:竹内永和
Piano:飯田俊明
Contrabass:田中伸司
曲目:1st
1:タンゴエチュードより第4楽章(A.Piazzolla:Vnのみ)
2:とろ火で(H.Salgan)
3:レスポンソ(A.Troilo)
4:街角のロマンス
5:コモ・ドス・エストラーニョス(Vn,Vc,G)
6:ミロンガ・デ・ミス・アモーレス(P.Laurenz)
7:機械のカラダ(喜多直毅:Vn,pf,cb)
8:リベルタンゴ(A.Piazzolla)
2nd
1:タンゴエチュードより第1楽章(A.Piazzolla:Vnのみ)
2:リアチュエロ波止場の霧
3:酔いどれ達(Vn,Vc)
4:秋のテーマ(E.M.Francini)
5:モモケロ(喜多直毅)
6:想いの届く日(C.Gardel)
7:ノヴィエンブレ・メランコリコ(喜多直毅:Vn,pf,cb)
アンコール
来るべきもの(A.Piazzolla)
★とうとう館風も六本木デビューである。スイートベイジルはあまりにも敷居が高すぎて
敬遠していたのだけれど、これを逃したら都内のライヴは暫く無いかもなーんて言われたら行くしか無いです。
結論。
行って良かったです。やっぱり、生じゃないと分からない事とか、たくさん有りますからね。
雰囲気がとても良いし、演奏はクールでホット。カッコイイのですよこれが!!噂の喜多氏も淡々とボウイングしているんですが、
アツイんです!!
また、凄く勉強になったなぁ、と思ったのは、どこで何をやっているのか見えたこと。これでちゃんと認識して聴けたと言う感じがして、
ライヴを楽しめました。
私なんかは耳が悪いのでCDだと今聴いているのがチェロの高音なのかヴァイオリンの低音なのかわからなかったりするのですが、
それがライヴだと視覚的にバッチリ見えますから、勘違いしようが無い。しかも、一度こうやって聞くと
次にCDで聴いてもバッチリその音は何の音、とわかるようになる。認識しながら聴くとその音の特徴を覚えこむんでしょうかね。
今日聴いてみたらチェロとヴァイオリンを間違える自分がどうかしてたと思いました。ごめんなさい。
後、ピアノの鍵盤が波打ってるのを久々に見ました。手が痛そう。残念ながら飯田氏は演奏中ずっと後姿でしか拝めなかったのですが、
背中がカッコ良かったです。えっと、スイートベイジルって、チェロとピアノがバッチリ見える席ってどこなんですか?(<また行く気らしい)
今回のライヴはタンゴフォビクスのCDから沢山引っ張ってきていた様で、タンゴ初心者の私でも充分に楽しめました。
でもきっとライヴが初めてなのにCDは持ってるなんて言うのは私だけ(笑)。でもCDに入れるような曲って事は、
やっぱり良い曲ばっかりだし、その上CDから更にアレンジされていて、またカッコ良くなっていました。喜多氏は即興バリバリだったみたいですね。
喜多氏のセンスがスパークしてました。
タンゴフォビクスのメンバーを見ているとなんだかとってもクールで職人な感じ。この中に入ると先日の小松亮太ではさらっとクールな演奏だと思っていた
喜多氏もホットに見えてしまうから不思議。
喜多氏は常にオイシイのでともかくとしても、全員それぞれ魅せ所があって、面白かったです。
喜多氏の音はしっかり芯のある力強さに溢れる音で、ぐいぐいと観客を音楽に惹き込んで行く魅力がありました。スイートベイジルは
お酒を飲みながら音楽を聴けるお店だけれど、演奏が始まると誰もが舞台に惹き付けられて、食事やお酒なんて俗世の事は忘れてしまいました。
実際、観客の視線は舞台に釘付けでしたしね。
喜多氏は何をすれば一番効果的かを知っている人で、こんなことはなんでもないさ・と言う表情でクールに弾いているけれども、それがまたアツい。
個人的には喜多氏の激しい高音が好き。うーん、ヴァイオリンはやっぱり高音が好きだ。
田中氏はMCで住宅展示場を見に行って凹むという話を披露する等、中々におちゃめな方でしたが、演奏もコントラバスを叩くわ弾くわ
、目にも楽しい演奏でした。リベルタンゴではコントラバスソロを披露。シブくてカッコいいですねぇ。やっぱこの低音、たまりませんね。
喜多氏は折角だから・と言ってソロをお願いしたらしいのですが、田中氏によれば毎回ソロを弾いているそうな(笑)。確かにコントラバスは
リズムとベースメインになってしまうので、ソロが少ない印象を受けるのも仕方が無いかも。でも毎回頼んでおいてどうなのリーダー(笑)。あ、もしかして
忘れた振りして毎回ソロやらせようって魂胆か!(笑<冗談です)
阪田様はソロが多くてかなりオイシイ。街角のロマンスなんかはチェロのソロからスタートでしたし、酔いどれ達はチェロとヴァイオリンだけなので
かなり目立ちます。秋のテーマはとにかくカッコ良かったです。いつも喜多氏の影の様に弾いているので気づき難いんですが、「お、この音いいなぁ」と
思うとチェロなんですよねぇ。阪田様はもっと主張しても罰は当らないと思います(笑)。サインも(笑)。
影の様にと言えば竹内氏。黙々と弾いている風に見えて時折チラっと喜多氏をチェックして合わせて行くんですが、ギターの繊細な
音が良いのです。時折音が薄くなった時にメロディがギターで聞こえてきたりして、心地よくなります。前半のコモ・ドス・エストラーニョスは
ヴァイオリンとチェロ、ギターの3人だったのでギターの旋律がいつもより聞こえてきて良かったです。
ピアノの飯田氏については館風はライヴの最中「カッコイイカッコイイ」と大ハシャギだったのでマトモなコメントを書く自信がありません(笑)。
ほら、前に出てきた感想は「カッコイイ」しか言ってないでしょ?(笑)
MCでは風邪をひいていると言う喜多氏はちょっと押さえ気味のトーク。それでもかなり面白くて一人で沢山笑ってました。会場の笑いの半分位は私の声だったかも(笑)。
第2部の始めでは喜多氏が「それでは一人ずつ、踊りながら入ってきてもらいましょう!」と紹介した為にみんなが踊る羽目に。
飯田氏はそのクールな外見とは裏腹にクルクルとターンを決めて本当に踊りなら入って来てくれました。おちゃめな上にカッコイイなんてちょっと反則ですよ(笑)。
我らの期待の阪田様は喜多氏が「踊ってくれないだろうなぁ〜」と言いながらの紹介で、本当に普通に入場。後々お話を聞いたら「踊るつもりだったけど『踊ってくれないだろう』って言われたから
踊らなくて良いかって」との事。くぅやしぃ〜!!阪田様が踊っているのが見れたかもしれないのに!!何だか
損した!と思ったのは私だけなのか(笑)!
曲目としては、喜多氏オリジナルの曲たちが好きでした。3曲あったんですが、そのどれもがロマンティックなメロディで、盛り上がるし、好き。
一番のお気に入りは「機械のカラダ」でしょうか。残念な事にチェロとギターが居ません。譜面が間に合わなかったらしい。きーたーさぁーん!!
アンコールの「来るべきもの」はピアソラのナンバーですが、私は直ぐに「あ、ピアソラだ!」と思ったものの
タイトルが思い出せず、四苦八苦。しかもアレンジが原型を殆ど覆い隠すほどのアレンジで、元曲が解らなかった・と言う言い訳すら通りそうな凄いアレンジ。
これも本当にカッコ良かったです。やっぱりこう言うものってアレンジがカッコいいと違いますね。
コンサート終了後、CDを買った人にサイン!と言うサーヴィスをしていたのですが、二枚持っている私は泣く泣く涙を飲む事に。
でもタンゴフォビクスの方々は皆さん良い人で、私がCDも買ってないのにおねだりしたらサインして下さいました。
本当に有難うございました。大事にします。
追記:ライヴ当日の夜感想を書いてアップしたんですが、あまりにハイテンションでおかしかったので
加筆・修正してみました。でもあんまり変わらないかも。人に言われて気がついたけど「カッコイイ」を連発しすぎ(苦笑)。
もう少しまともな感想が書ける様に勉強してきます。。。