場所:横浜みなとみらいホール
指揮:高関健
ソロ・コンサートマスタ:石田泰尚
曲目:スメタナ/連作交響詩「我が祖国」
1.ヴィシェフラド(高い城)
2.ヴァルタヴァ(モルダウ)
3.シャールカ
4.ボヘミアの森と草原から
5.ターボル
6.ブラニーク
アンコール
歌劇「売られた花嫁」より
道化師の踊り
★今年はチェコを代表する作曲家4人の記念年が重なったらしい。
そんな訳で神奈川フィルの定期演奏会も「チェコ音楽祭2004」にこのコンサートで参加している。
連作交響詩を一時に聴けるのはとても嬉しい。
今日は2ndヴァイオリンを上手に、チェロを1stヴァイオリンの奥に、更にその奥にコントラバスと言う、対向配置。
2ndヴァイオリンとヴィオラの後ろには2台のハープが据えられている。
注目は弦の首席奏者が全員揃っている所だろうか。首席不在のヴィオラは成田寛氏がゲストで、安心して聴く事が出来た。
いつも見えない黒木氏が対向配置のおかげでじっくり弾く姿をみる事が出来た。しかし、コンバスを抱え込むように弾く為に
表情は殆ど見る事が出来ず。とほほ……。
1曲目は美しいハープのソリから。ハープの音が思いのほか力強く、大きな音でびっくり。美しさと強さを兼ね備えた音色は
オープニングを飾るに相応しかった。中間部でも1stヴァイオリンと掛け合いの部分では美しい音が際立って聴こえ、2台ある意味がわかったかも。
しかもその部分、石田様は弾く度にハープの反応を窺っていた様に見えました。石田様が視線を向ける先でその直後に
ぱっと音が鳴るんですよね。それが面白くて今日は石田様の視線を追っていました。
プロなら当たり前の事かも知れないんですが、どこで何が起こるのか、全部解ってての演奏なんですよね。もしかして
頭の中に総譜が入ってるんでしょうか。凄いなぁ。
今日の注目はパーカッションで、シンバルの平尾氏は4セットのシンバルを使い分けていました。私には何がどう違うのか良く解らなかった
のですが、多分、大きさの違いかと。小さく連続で鳴らす時は小さめの物を、大きく一発響きを残す時には大きな物を使っていたように思います。
その持ち替えが忙しくてついつい注目してしまいました。
ティンパニの女性は神奈川フィル初登場……ですよね?弾き方が所々独特な所があって、
とてもカッコ良かったです。個人的にティンパニは叩いている所を見るのが好きなので、ああいうカッコよさはステキでした。
指揮の高関氏はパーカッションのみならず様々なパートのきっかけを一つ一つ丁寧に振っていて、
見ていてとても面白かったです。しかもとても嬉しそうに振るんですよね。その姿勢に好感が持てました。
気に入ったのは3番のシャールカで、冒頭から攻撃的な演奏なのですが、途中には美しいクラリネットソロもあり、様々な要素が楽しめました。
森川氏のソロは暖かい音で安心して聴く事が出来ました。
ヴィオラも地味においしい所を持って行っていましたし、ラスト直前のトロンボーンのユニゾンはとてもカッコ良かったです。
色んな楽器に見せ場があって面白い曲と言う事なのでしょう。
5曲目のターボルのオーボエのメロディにクラリネットとホルンが絡むのもカッコ良かったですしね。
後半に入るとどの曲も情熱的で迫力のフィナーレなので、1曲毎に拍手をしたい!と言う気持ちになりました。
最後の曲のフィニッシュではP席寄りのバルコニーから「サイコー!!」の声。いや、気持ちは解りますけど……ブラボーでも無く「サイコー!!」ですか(笑)。
その人も自分で気付いたのかブラボーって言い直していましたね(笑)。
私は演奏会で「サイコー!!」って言うの、初めて聞きましたけど、まあ、それもアリでしょう。石田様は苦笑いしていましたけど(笑)。
だって演奏は「サイコー!!」でしたもの。
2004年9月20日
第11回新しいうたを創る会演奏会
「創世神話劇〜祈りの彼方に〜」
場所:カトリック目黒教会
曲目:
権代敦彦《「A」 ―阿―》
(2004)委嘱新作世界初演
指揮:田中信昭
ソプラノ:半田美和子
カウンターテノール:彌勒忠史
打楽器:池上英樹
合唱:新しい合唱団
高橋悠治〜スイジャクオペラ〜《泥の海》
(1999)委嘱作品
藤井貞和詩集
「ピューリファイ、ピューリファイ!」による
語り:藤井貞和
女ソロ:山口道子
男ソロ:近藤政伸
打楽器:池上英樹、入交泉
合唱:新しい合唱団
演出:田中信昭
★私が所属する神奈川フィル合唱団の音楽顧問の近藤先生が出演と言う事もあって権代敦彦好きの友人と
一緒に聴きに行ってきました。
現代音楽と言うことだけあってどんな演奏になるのやら……と思っていたのですが、期待以上の面白い演奏でした。
1曲目の新作初演は合唱団が4方に分かれての演奏。教会の2階回廊の左右に3人ずつ女声、後方にも女声が4人、
前方は女声3人に男声全部。その前に上手にカウンターテノールソロ、下手にソプラノソロが。合唱団の後ろには
打楽器の池上氏。
圧巻は打楽器の池上氏。大太鼓をティンパニの様に叩くのを初めて見ました(笑)。
マリンバの演奏も激しく凄かったのですが、左手で大太鼓を叩きながら右手でチューブラーベルを叩き、
挙句の果てにその合間に楽譜をめくると言う神業でした。両手で違う楽器を演奏するだけでも凄いのに、
譜面までめくっちゃうなんて……いやはや、素晴らしかった。
この曲は9つの章から成っていて、その一つ一つと歌が対応しているのがなんとなく(笑)わかりました。
8章の「ひろがってゆく愛」と言う所では合唱団員がホール全体に散るので実際にも「ひろがって」ゆくのが眼に見えて面白い。
ソリストが素晴らしく、ソプラノの半田嬢はインパクトのある歌声で楽しませてくれました。力強いのにソプラノらしい
声で、感動でした。ラストの高音なんて、もう、鳥肌が立つほどの迫力。素晴らしかった!!
カウンターテノールの彌勒氏も柔らかな声で、アルトかと勘違いするほどの綺麗な歌声。ピッチも素晴らしく良く、感動。
ビブラートの無い清潔な音が私の好みにはまっていて聴いていて心地よかったです。
合唱団もよくぞあんな難しい曲をしっかり歌いきったと思います。歌いながら鳴り物を叩く合唱団員も居て、
合唱団員一人ひとりの能力の高さが判りました。
そして後半はスイジャクオペラ。女声ソロと男声ソロは確かに単に「ソロ」としか書き様が無いかも。
ただ単に高音が出るだけでは務められないような内容のソロで、ソロはお二人とも本職はソプラノとテノールですが、
しっかりした声に存在感があって、普段の演奏とは違う感じがしました(って、私近藤先生のボイトレの時の声しか知らないけど)。
ソプラノの山口嬢は会場後方に据えた視線に鬼気迫るものがあり、ぞくぞくしました。衣装も変わっていて、特に白いストッキングに
真っ赤な紋様が入っていたのには驚きでした。チラっと見えるだけなんですが、とってもカッコ良かったのです。
合唱団員個人個人も少しづつ演技があったりして、面白かったです。特にグリーンの衣装を着ていた二人はソリストのリードとして台詞っぽいものが沢山
あったので大変だったのでは。それぞれがそれぞれのパートを持っていたので、おそらく1人1パートだったのではないかと推測。
それを全員が暗譜なのだから凄い。
個人的に気に入ったのは聴く前から歌詞カードでちょっと気になっていた式八番の「ジープ」。
6人の白い衣装の男声が、前二人は跪き、後ろ四人は頭上に茶色い布をみんなで支え、ジープを表現。
走って揺れているのを表現する為に小刻みに揺れる細かい演出つき。その中でもしっかり歌っているのだから凄い。
しかも歌詞に対応して潰れたりするのですよ。眼で見て楽しめる曲でした。
コンクリート打ちっぱなしの教会で、かなり響き過ぎる感じだったのですが、演奏者側が
それも考慮して歌っている感じがしました。合唱団がハモる所はハモるかハモらないかのギリギリの音(そう言う風に
譜面が書かれているのです)で、不思議な心地よさを作り出していました。何と言うか、
麻薬的な気持ち良さが有りました。現代音楽も癖になりそうです。
2004年9月23日
パシフィック・コーラルデイズ
第二夜
<自然><祈り><愛>をテーマに
場所:タケミツ・メモリアル
合唱団:
アデレイド・チェンバー・シンガーズ
(指揮:カール・クロッシン)
ヴァンクーヴァー室内合唱団
(指揮:ジョン・ワシュバン)
東京混声合唱団
(指揮:松原千振)
曲目
>自然
スティーヴン・リーク/コンダリラ[滝の精](ACS)
R・マリー・シェイファー/ミニワンカ[水の瞬<とき>](VCC)
池辺晋一郎/チカプ・レキ-「東洋民謡集U」より
(北海道アイヌ伝承民謡・TPC)
>祈り
千原秀喜/「おらしょ-カクレキリシタン3つの歌」よりV(TPC)
黒人霊歌・ジョン・ワシュバン編曲/ギレアドの香油(VCC)
カール・クロッシン/カリタス[いつくしみ](ACS)
>愛
ポール・グラボウスキ/生きよう、ぼくのレスビア(ACS)
間宮芳生/知覧節「合唱のための12のインヴェンション-日本民謡による」より
(鹿児島県民謡による・TPC)
リオネル・ドネ/ミラボー橋(VCC)
>平和への祈り―現代の「アヴェ・マリア」(合同演奏)
ヨナス・タムリオニス(リトアニア)/アヴェ・マリア(指揮:松原千振)
エイトール・ヴィラ=ロボス(ブラジル)/アヴェ・マリア(指揮:カール・クロッシン)
イマント・ラミンシュ(カナダ)/アヴェ・マリア(指揮:ジョン・ワシュバン)
>ゾルターン・コダーイ/オルガン賛歌(合同演奏)
指揮:松原千振
オルガン:小林英之
>アンコール
モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス(指揮:カール・クロッシン)
パブロス・カザルス/O vos omnes(指揮:ジョン・ワシュバン)
★以前応募したチケットが外れたお陰で(笑)招待券を頂いた。招待券だけあって
座席はとんでもなく前でしたけれど、それだけ合唱団員が身近に感じられた演奏会でした。
どの合唱団もその国の代表、と言う位置付けなのか、とても上手い。特にオーストラリアが凄かった。
ソプラノのソリストの女性は何でも無い顔をして凄い音を出していました。彼女は本当に凄かったです。
一番気に入ったのは一番初めに歌った「コンダリラ」。舞台上は男声だけで、女声は二階席と三階席のバルコニーに散って
殆どソリスト。と言うか、全てのパートが違う事をしていたと思います。女声の一人ひとりの声がそれこそ
滝のように流れ落ちてくる感覚で、前のほうに座っていた私は思わず上を見上げてしまいました。
合同合唱は上手い合唱団が合わさっていて、凄い人数になっているので音圧が凄い。前のほうに座っていた為
殆どの音が頭上を越えていきました(涙)。合唱団のお姉さんのお腹がボコボコ動くのが見えました。なんだか凄いなぁ。。。
オルガン付きの曲は、なんと言うか、この人数、この上手さじゃないと出来ないなぁ、と思いました。オルガンの音がどうしても
大きいので人数が必要ですし、何よりハモる部分も多いので音感の良さが要求されると思うんですよね。
ただ、問題はどの合唱団も上手すぎて眠りの世界へ誘わ……ごふんごふん。
どこをとっても素晴らしいハーモニーの演奏会でした。やはりプロは違います。ただ、惜しむらくは
チケットを私が頂いたみたいに撒かないと席が埋らないと言う現実でしょうか。新聞に毎週応募が出ているのが
管弦楽、合唱のコンサートの現実……。もっといろんな人が聴いてくれればいいのに、と思いました。