2004年演奏会日記5月〜

5月20日 ★題名のない音楽会21公開録画@人見記念講堂
5月23日 カジュアルコンサート@AH
6月5日 神奈川フィル第207回定期演奏会@KH
6月9日 武満徹全室内楽作品連続演奏会〜響きの海〜@タケミツメモリアル
6月19日 ★泉ゆりのピアノリサイタル@Hakuju Hall
6月20日 ★TRIO LIBERTAD PLAYS PIAZZDLA@Blue Jay Way
6月24日 ★横浜シティ合唱団第7回演奏会@MMH
6月27日 
「遊声」第七回演奏会@新宿文化センター





2004年5月20日
題名のない音楽会21公開録画


場所:人見記念講堂
司会:羽田健太郎 大木優紀
指揮:金聖響
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

第1部ゲスト:セルゲイ・ナカリャコフ(Tp)
 6月20日放送予定
第2部ゲスト
 森麻季(sop)
 経種廉彦(ten)
 アナスタシア・チェボタリョーワ(Vn)
 羽田健太郎(pf)
 6月13日放送予定

★本日も曲目は放送まで秘密。石田様も忙しいし、降り番かしら〜??と思っていたのですが、やっぱり石田様が乗り番でした。 神奈川フィルとしてもやっぱり全国放送に石田様は欠かせないのですね。

 第1部はセルゲイ・ナカリャコフアワーと言う感じ。指揮の金氏は彼と一緒に収録もした仲らしく、とても仲が良いのだとか。「ラスト・サムライ」を一緒に見に行った らしいです。中々にミーハーなんですね(笑)。
 ナカリャコフ氏は中々にお茶目な方らしく、かわいい冗談を連発していました。放送でどれだけ使われるかは疑問ですが……(笑)。
 金氏は大阪センチュリー交響楽団の専任指揮者と言うのが影響しているのか、軽い関西弁で、とても面白い方でした。指揮を見るのは何度目かですが、 トークを聞くのは初めて。こんなに楽しい方だったんですね。指揮者はトークも出来なきゃだめなのかしら(笑)。

 さて、本編の方はナカリャコフ氏の超絶技巧オンパレード。とんでもない速さのスタッカート有り、循環呼吸による50秒間吹きっぱなし のデモンストレーション有り、とても面白かったです。
 テレビ音楽の「その時歴史が動いた」や連続テレビ小説「あぐり」のテーマなど、トランペットが印象的な曲の演奏も(そう言えばどっちもNHKだがオッケーなのか??)。
 この二曲では石田様もノリノリっぽい感じで良かったです。ソリストをちらりと気にしてタイミングを合わせたり、 これぞコンマス!の本領発揮。こう言う細かな調整力もコンマスには必要不可欠なんですね。

 最後に演奏したJ.=B.アーバン作曲の「ヴェニスの謝肉祭」の主題による変奏曲はナカリャコフ氏のトランペットソロの素晴らしさも去る事ながら、オケも盛り上がって 演奏が素晴らしい。石田様がとても楽しそうに演奏していたのが印象的でした。金氏もノッているのか、足が跳ねていましたし、大柄で手が長いので振って居る姿が見ていて気持ちいい。爽やかな指揮でした。 金氏、笑顔も爽やかでしたよ……石田様と演奏後に握手した時とか(あ、これは第2部の後ですが)……笑顔が素敵です。

 さて、少々のハプニング(ノーマル日記参照)が有りましたが無事始まりました第2部。
 「クラシック・ラブソングス」と題してクラシックの「愛」を歌った曲を中心に。それぞれの演奏者が選んだ曲も演奏したりして、バラエティ豊か。

 実は森麻季嬢の演奏を生で聴くのは初めてだったのですが、素晴らしい!あのほそっこい身体のどこからあんな豊かな声が出て来るのか、と言うほどの声。 動きの一つ一つもゆったりとして優雅で、風格が有りました〜。流石、ですね。今回チケットが当たらなかったのはそれで倍率が上がったのかしら……(邪推)。
 森嬢はトークも正直で明るい話し方で好感が持てました。カッコ良いなぁ。経種氏も軽妙なトークで楽しい方でした。しかし 演奏が充実しているだけに、トークがどれだけ使われるのかは疑問。勿体無いわぁ〜。

 収録が押しに押しましたがちゃんと最後まで観覧できて良かったです。今日は石田様がトークに笑ったりして妙に笑顔も多かったですし、得した感じでした。ファンって、 こんな事でも幸せになれるんですね……ソロが殆ど有りませんでしたけど、それでも満足できました(笑)。



2004年5月23日 第24回カジュアルコンサート-第一-
 二胡・詞のしらべ


場所:かながわアートホール
指揮:邵恩(シャオ・エン)
二胡:許可(シェイ・クゥ)
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

曲目:
モンティ(許可編曲)/チャールダーシュ
チャイコフスキー(許可編曲)/ノクターン
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
王建民/第1二胡狂想曲
許可/郷間喜悦
二胡アンコール
 熊ん蜂の飛行
 ケイバ(二胡ソロ)
モーツァルト/交響曲第40番
アンコール
 モーツァルトだとは思うけど……不明。

★全席ご招待のカジュアルコンサート。私の隣は小さい女の子だったり、お爺さんだったり、結構色んな年代の 人が来ている。普段はクラシックを聴かない様な人も来ている様で、雰囲気が和やか〜な感じ。いいですね。やっぱり、 いろんな人に神奈フィルを聴いてもらおうというこの企画、応援したいです(<だったら何回も聴いてるアンタが応募しちゃだめじゃ…)。

 シェイ・クゥ氏は日本語も堪能で、面白いトークを繰り広げてくれました。二胡を知らない人の為に二胡の楽器解説から、楽曲解説まで事細かに手短に(笑) 解説してくれました。
 チャールダーシュは演奏者自身の編曲で。コンマスの方を何度も見る等、お互いのコンビネーションもバッチリ。 オーケストラへの気遣いが見える人で好感が持てました。ノクターンも音の「泣き」方が良かったです。
 二胡はアジアでは「人間の声」と呼ばれているらしく、確かに、人の歌う声の様です。特に印象的だったのはアジア的な、中国音楽っぽい メロディの部分は京劇の女役の声のよう(すごい回りくどい例えだ……)。この音、嫌いじゃありません。
 弦楽器だけあって確かにヴァイオリンに音は似ているのですが、決定的に音色が違います。うーん、なんと言うか、ワイルドだけど繊細な部分も ある、不思議な音色でした。

 真ん中2曲は中国の作曲家による曲。第1二胡狂想曲はアメリカやヨーロッパではヨーロッパのクラシックに影響されすぎていると不評だったらしいのですが、 中々どうして、いいじゃないですか。影響受けてたってなんだって。
 バリバリの現代音楽の様に始まりながら、メロディアスな所あり、木魚がポクポクと鳴ってたり、中々面白い。チェレスタとハープのコンビネーションが 綺麗な曲でした。聴いている方の目を惹き付ける曲ですね。私は気に入りました。

 その後のシェイ氏作曲の「郷間喜悦」は二分と短いアンコール用の曲ですが、二胡とは違う「バングゥ」と言う楽器を使っての演奏で、大迫力でした。 サイズは二胡と殆ど同じなのですが、ニシキヘビの革が張ってある部分に木の板が張ってある楽器で、二胡よりずっと大きい音が出る楽器で、 オーケストラが大迫力の演奏をしても全然負ける事無く、派手な演奏を魅せてくれました。

 本当のアンコールは「熊ん蜂の飛行」と「ケイバ」の2曲。「ケイバ」は二胡を演奏する人なら誰でも通る曲らしく、 二胡の技術を全て投入した曲に思えました。右手で弾きながら左手で弦を弾(ハジ)いたりするのはヴァイオリンにも似て面白かったです。

 後半のモーツァルトはちょっと速めの流れるような演奏で始まり、神奈川フィルのパワーを感じました。3楽章の冒頭などは屹然としていて格好良い 音でした。でも、強いだけではなくて、メリハリの効いた良い演奏だったと思います。指揮のシャオ氏は割りと大ぶりな感じなのですが、それが 音楽の爽やかな感じに合っていて良かったと思います。最近の神奈川フィルは何かを吹っ切った様な爽やかな弦で、好きです。

 今回の様な小さなコンサートから、色々なホールでクラシックを聴いてみたい・と思う人が出てくれば良いなぁ、と思いました。



2004年6月5日
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
第207回定期演奏会『大河の流れ』


場所:神奈川県民ホール
指揮:リー・サンシオ
リー・チャンユン
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ゲスト・コンサートマスタ:山本友重

曲目:シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
 ニ短調 作品47
アンコール
 半収漁歌

ベートーヴェン:交響曲 第7番
 イ長調 作品92

★本日の定期演奏会は久々にコントラバス首席の黒木氏もチェロ首席の山本氏も揃っている。 2ndヴァイオリンの小宮氏も居るのだが、石田様は流石に降り番でした。しかし、今日のゲストコンマス山本氏は そう、チェロ首席の山本裕康氏のご兄弟なのだそうです。兄弟共演ってステキ……。

 シベリウスのソリスト、リー・チャンユン氏は見た目びっくりするぐらいワイルドな弾き方をするのですが、音のほうは至極 誠実で真直ぐ。雑味のない澄んだ音を響かせてくれました。最初のpの部分も素直な高音になっていましたし。
 第3楽章の頭、ズッズッズと言う部分(<もう少し言いようは無いのか)、チェロが2本でコンバスは1本だったんですね。CDで聴いていたのではそう言うところは解らないので やっぱり生を聴くって言うのは良いですね。
 オケとソリストの絡みもバッチリで、落ち着いて聴けました。

 ベートーヴェンは管楽器が各パート二人ずつで、トロンボーンは無し。だからあまり管が五月蝿くなり過ぎないようにと言う 配慮があったのかも。でも人数が少ないのを補うぐらい大きい音が出てましたけど。それとそれを補うぐらいの 人数が弦パートに居ました。コントラバスも7本で低音までバッチリって感じです。

 全体的に弦が忙しそうだな〜……と思う曲で、第1楽章から弦パートを見ているのが面白い。
 指揮のリー・サンシオ氏は几帳面な人なのか、きっちりきっちり各パートへの指示が出ていました。 また、次の楽章へ移る時ももったいぶらずにさっと次の楽章へ行ってしまいます。これは全体的に速いテンポのこの曲に 合っていたかも知れません。

 前半はなんだか指揮とオケが合って居ない様な(実際に合っていないんじゃなくて、何と言うか、感覚的に)感じがしたのですが、 後半になってくるとオケもノってきて、指揮と一体になっていたと思います。あ、そうか。わかった。指揮とオケで情熱がズレていた・と言う 言い方が私の感覚に一番近い。多分シベリウスはソリストが居たからそれが触媒になっていたのでしょう。

 第4楽章の一番最後、全ての楽器で鳴らすところ、私の位置ではやたら金管が鳴ってびっくりしたのですが、 正にフィナーレ!と言う迫力でした。三階席で聴いていたのですが、左手奥から正面にかけているはずの金管楽器の音が右手足元から 聴こえて驚きました。これは多分反響したんでしょうけど、今までこんな風に聞こえた事は無かったので驚きです。

 今日の三階席はほぼ満席。1、2階席の様子は全く分からなかったのですが、 そちらも結構入っていた様子。ど、どうしたのかな……イープラスだか何だかで安売りしてたのは知ってるんですけど(笑)。 ま、入ってないより入ってた方が絶対いいので来月もこの調子でお願いします。いや、ホントに。



2004年6月9日
武満徹全室内楽曲連続演奏会
 響きの海


場所:タケミツメモリアル
演奏:アンサンブル タケミツ
曲目:
 すべては薄明のなかで(ギター)
 ディスタンス(オーボエ、笙)
 閉じた眼U(ピアノ)
 ピアノ・ディスタンス(ピアノ)
 秋のうた(クラリネット、弦楽四重奏)
 (チャイコフスキーのピアノ独奏曲を編曲)

 水の曲(フルート3、テープ、舞)
 夢見る雨(チェンバロ)
 雨の樹(打楽器3)
 そして、それが風であることを知った(フルート、ヴィオラ、ハープ)

 海へV(アルトフルート、ハープ)
 ギターのための12の歌より
 (インターナショナル、サマータイム)
 ゴールデン・スランバー(ピアノ)
 美トゥウイーン・タイズ(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)

 アンコール
 エア

★すごい演奏会である。どうやらこれはシリーズ最終回らしいが、それにしたって 一人の作曲家の室内楽曲作品を全て演奏しよう、と言うのだから、凄い。大体、シリーズでやっているはずなのに、 一回の分量がコレだけっていくらなんでも多い。アンコール前に出てきた小泉浩氏が言うには 「二回に分けると短いので一回で」らしいのだが、それにしたって。
 何しろこの演奏会、休憩が2回入るものの、演奏時間だけで165分あるのだ。終了したのは22時も 迫った頃であった。

 全ての曲目が初めて聴く曲でした。まあ、コンテンポラリーはコンテンポラリーなので不思議な和音が 炸裂しましたが、そこまで拒否反応を示すと言う程の曲でもなく。

 最初のギターソロ曲等は不思議な雰囲気を醸し出し、綺麗な曲でした。天窓から 見える薄っすらと明度が失われて行く空が雰囲気に合っていて、これを狙ってこの曲を1曲目に持ってきたのかと思いました。
 どの楽器においても初めて聴くような特殊奏法が多く、びっくりしながら聴いてしまいました。オーボエなんて、喋りながら 吹いているとしか思えない変な音を出したり、ハープも音を出した弦を掌で押して音を歪ませたり、不思議でした。
 「水の曲」では能面を付けた踊り手が出て来て、踊るんですが、これがまた不思議。白い水干の様なものを着ているのですが、 それがふわりと揺れて、目でも楽しめました。この曲はフルートと水が流れたり落ちたりする音で構成されていて、ホールのあちこちから 水滴が滴り落ちるような、そんな響きがしていました。
 「雨の樹」ではセンターにビブラフォン(?)、その両脇にマリンバ(?)が一台ずつ、そしてそれぞれの前にアンティークシンバルがいくつか。 センターはアンティークシンバルなんですが、両脇は譜面台から同じような小さいシンバルが吊り下げられていました。
 この曲ではセンターで叩いていた吉原すみれ嬢がなんと暗譜。この曲、短くないんですよ……それなのに暗譜。迫力でした。証明も凝っていて、 叩いている人に呼応するように明滅します。舞台全体が演出されていて素晴らしかったです。
 後、ギターのための12の歌は編曲なので元曲を知っていると割と楽しめました。やっぱり知っている音楽がどんなに耳に聴こえやすいかと言う事 を実感しました。コンテンポラリーも聴きなれれば耳に聴きやすくなりますかね??

 実はこのコンサート、私は応募もしないのに「以前応募された方で外れた方を中心にお送りしています」と言う 文言が書かれた招待ハガキが来たんです。やはり、こう言うコンサートは人が来ないんだなぁ……と実感し、それと 同時にこれからの作曲家や演奏家を保護出来なきゃいけないんじゃないかなーと思いました。
















2004年6月19日 泉ゆりの
 ピアノリサイタル  ‘ソロとトリオ’


場所:HAKUJU HALL
ピアノ:泉ゆりの
ヴァイオリン:石田泰尚
チェロ:阪田宏彰
曲目:第1部
ドビュッシー 前奏曲集より
 「パックの踊り」
 「沈める寺」
 「仙女たちはあでやかな踊り子」
リスト シューベルト歌曲
 トランスクリプションより
 「セレナーデ」
 「水に寄せて歌う」
 「ます」
ラヴェル
 ラ・ヴァルス
第2部
ショスタコーヴィチ
 ピアノ・ソナタ 第1番 作品12
 ピアノ・トリオ 第2番 作品67

★石田的週末生活一日目。私も初めて行くHAKUJU HALL。代々木八幡の駅から徒歩10分と言う所でしょうか。商店街を抜けると 直ぐホール、と言う感じで、ガラス張りの建物がとてもカッコ良い。
 ホールの内装も不思議な雰囲気ですみだトリフォニー小ホールと匹敵するぐらい(私はあの小ホールが好きだ)の素敵さ。 小さいが響きが良さそうなホールはとても好感が持て、300席程ですが、椅子もとても座りよく、身じろぎしても音が出ないクッションが このホールが本当に演奏者、観客の事を考えて作られたんだなぁという事を感じさせました。

 前半はソロで、後半はショスタコーヴィチの曲でまとめて。
 第1部開演前に彼女のメモリアルビデオみたいな物が流れて、とても面白い試みだと思いました。幼い時の発表会の写真等も流れたので その当時を知っている人には懐かしく、知らない人には「こんな子どもだったのね」と知ることが出来たと思います。
 泉嬢の師である伊藤恵嬢やヤマハマスタークラスの講師のコメント等も出て来てこれから始まる演奏に期待がふくらみました。

 ドビュッシーから始まったソロは瑞々しい若さ溢れる演奏。曲によって泉嬢の表情が違うので「きっとこの曲は特に好きな曲なんだろうなぁ」と言うのが垣間見えました。
 泉嬢は淡いレモンイエローのドレスで登場胸から右半身にオレンジ色のバラの模様が入っていて、とっても爽やか。写真より本物の方が可愛いなー。

 ドビュッシーでは「沈める寺」の陰鬱な雰囲気がとても素敵で、最後の不自然な和音が終わりを告げるのに相応しく、聴いていて心地よくなりました。次の曲に入るまでにもう少し静寂を楽しみたかったぐらい、 この曲、気に入りました。

 リストは最早原曲が見えないのでは無いか、と言うぐらいのアレンジが施されていて、プログラムノートで泉嬢が「素朴な曲をこんな難曲にしてくれちゃって・・」と 書いている通り、ピアニストは一瞬たりとも気が抜けないと言う曲でした。真ん中の「水に寄せて歌う」では長調と短調の入れ替わりが凄く、いつの間にか 入れ替わっていて、それがまた何度もあるものだからクラクラしました。ピアノ曲って、面白いんですね。

 ラヴェルは黒雲の隙間から大広間でワルツで踊る人が見え、黒雲が晴れていく、と言う情景を描写した曲らしいのですが、まさにそう。 始めは黒雲そのものの音が思い切りの良い演奏で、びっくりさせられました。
 黒雲を表現する音とワルツの明るく華やかな音が本当に同時に聴こえるので混乱しつつもとても面白かったです。 でも、聴いている方も混乱しそうなのに、弾いている方はこういう同時進行を内部でどう処理しているのかしらと不思議でなりませんでした。 ピアニストって凄いんだなぁ……(<既に両手が別々に動く事を忘れた手を持つ女)。

 後半のショスタコに入るともう完全に現代音楽(正しくは近代のはずですが)で、もう色んな技法を試してみたんだと言うような盛り沢山な 内容。
 これはショスタコーヴィチが二十歳の時の作品で、これを二十一歳の泉嬢が弾く事に意義を感じました。

 さて、お待ちかねのトリオ。CDでバッチリ予習していた私ですが、出だしの高音、ヴァイオリンだと思ってましたごめんなさい。
 まさかチェロだったなんて!!!!
 チェロが不自然な高音をひねり出し(と言う表現が相応しい)、それよりも低い音をヴァイオリンがぶつけていく。この辺の逆転現象がなんともショスタコらしい。
 そう言えば泉嬢は激しい音色の部分を弾く時に鍵盤をグーで殴りつけていました。うわぁーカッコイイ!グーでグリッサンドなんて、ちょっと手が痛そう ですが、なんと言うかとっても男前(褒めてます)。あんな華奢な体からどれだけのエナジィが出て来るのかしら・と見ていて楽しくなりました。

 そして、私が驚いたのは第2楽章。とにかく速い。私が聴いていたCDよりもかなり速い。もしかしたら演奏者の平均年齢が低いからかも。それにしても迫力の演奏で、文句なし、 「凄い」演奏だった。
 蓋が全開ピアノに対等に渡り合うヴァイオリンとチェロ。ガンガン来るピアノにピチカートで音量面で太刀打ちできるなんて初めて知りました。 これはやっぱり一流の演奏者である石田様と阪田様だからこその演奏なのでしょう。

 第4楽章は序盤はヴァイオリンとチェロをリズム隊にピアノが弦楽四重奏の第8番でも出てきたメロディを奏で、ある所で メロディをヴァイオリンにバトンタッチ。違うメロディなのですが、この入れ替わりが面白い。
 石田様と阪田様が二人揃ってリズムを取っていた時は お互いに殆ど呼吸だけで音を合わせていた様に感じました。やっぱりお互いに慣れているんですかね。 お二人のコンビネーションはバッチリで、 時折顔を見合わせてアインザッツを出す場面もありました。お二人とも相手の呼吸が分かっていると言うか、一分の隙も無いアンサンブルでした。

 トリオは気迫の演奏で、間違いなく今日のナンバワンでした。やっぱりこう言う曲目は本当に楽しい。今回は特に私の好きな作曲が が並んでいたので演奏会全てを充分に楽しめました。










2004年6月20日
TRIO LIBERTADスペシャルライヴ
 2nd Stage(19時より)


場所:Blue Jay Way
演奏:トリオ・リベルタ
ヴァイオリン:石田泰尚
サックス:松原孝政
ピアノ:松原太志
ゲスト:クラリネット:品川秀世
曲目:第1部
 トード・ブエノスアイレス
 ミケランジェロ70
 デカリシモ
 レオノーラの愛のテーマ(+Cl)
 むかしむかし(pf&CL)
 オブリビオン(pf&Vn)
 天使の死
 天使の復活
第2部
 ベリッシモ(pf)
 タンゴエチュード 3番(Sax)
 アディオス・ノニーノ
 リベルタンゴ
 ブエノスアイレスの冬
 鮫
 五重奏の為のコンチェルト(+Cl)
アンコール
 悪魔のロマンス
 レビラード
 レオノーラの愛のテーマ  リベルタンゴ
※プログラムは耳で聞いたものなのでタイトルがアヤシイものがいくつかございます。その辺はご了承下さいませ。
 また、無印がトリオ、「+Cl」はトリオにクラリネット、その他の楽器が書いてあるものはデュオ、又はソロという意味です。

★さて、石田的週末生活2日目。原宿何て言う場違いな場所に降り立った私は5時15分過ぎに会場に到着。 既に階段の上まで人が並んでいて、やっぱり人気だなぁ…と実感。
 会場内は小学生らしき女の子から結構な歳のおじ様まで、幅広い年齢層で、男女共に人気があるのね・と嬉しくなりました。 会場は満員かな。

 演奏に中岡氏の軽妙なMCを挟みつつの進行はいつもと変わらず。でもいつもよりMCが和やかな雰囲気だったのはやっぱり ライヴハウスだからでしょうか。会場内も自然に笑いが零れたりして、とても居心地が良かったです。
 中岡氏は松原氏&石田様に向かって「何か喋ってよ。俺ばっかりじゃなくて。」と言ったのですが、おもむろにマイクを取った松原氏が 言ったのは「振って下さい。」でした。そして話を振ったら中岡氏が口を挟む余裕すらなく喋り倒す松原氏。もしかして天然でしょうか(笑)。
 石田様も中岡氏にバシバシ突っ込みを入れられつつ「最近仕事であった良い事」を話して下さいました。 って、例の長渕剛氏と録音でご一緒した、と言う話なのですが、中々話が進まない上に結局長渕氏の名前も出ないので中岡氏は「で、それ誰なの?」と 観客の代弁をして下さいました。
 石田様はそのレコーディングの日、黒スーツを着てサングラスをかけていたらしいのですが、初対面でホストに間違えられたそうです。 ほ、ほすと……うん……確かに、解らないでもないけれど(笑)。でも実際のホストってもっとカッコ悪いですよね……(うわぁ問題発言だ)。

 始めの3曲はどれも勢いのある曲で、3人の演奏に圧倒されました。途中クラリネットを入れた曲目では音に厚みが出て、 音色が豊かになって良かったです。やっぱりタンゴを三つの楽器でやるっていうのは結構大変な事なのだなぁと感じました。 それでもいつも3人で音を充実させているのだから、それだけ演奏も良いし、編曲も良いって事なのでしょう。

 前半ラストは天使シリーズから死と復活。これは2曲セットでやるとやっぱりいいですね。 復活の方は始めは天使が死んだところから始まる訳ですからとても暗いのですが、その後段々と明るく変化していくのが とても凄かったです。

 ここで休憩が入ったのですが、これは観客にとっても良かったです。どうも息を詰めて聴いてしまうので凄く精神的に緊張しているんですよね。 だから休憩で精神的にリラックス出来て後半に備えるぞ!と言う風に仕切りなおしできたので助かりました。

 後半は3人とも衣装チェンジ。前半は全員黒でそろえていたのですが、後半は中岡氏が銀、松原氏が赤、石田様が青紫(しかも見る角度によって色が変わる)の シャツを着ていました。素材がサテンか何かなのでライトの加減で色んな色に見えて、これぞライヴハウス!と言う感じ。

 後半の半ば、リベルタンゴではヴァイオリンソロの部分、石田様はノリノリ。指が回る回るって感じで遊びの音も結構入っていた様に感じました。 やっぱり有名な曲は聞き応えがあって楽しい。有名になるって事はいい曲だって事を改めて実感しました。

 鮫はヴァイオリンがガシガシ弾きまくるのでとても好きな曲ですが、今日も石田様は魅せてくれました!本当にカッコイイ!演奏後にはクルっとヴァイオリン回しちゃったりして、会心の出来?

 時折スタンドマイクを気にしながら演奏されていた石田様ですが、それを忘れて演奏に没頭していた時、ゴッと鈍い音が。弓が真下から突き上げる様にマイクに当たって しまったのです。うーん、スタンドマイクはもう少し高かった方が良かったかも知れない……。
 個人的にはマイク無しの生演奏が好きですが、ピアノとサックスに対抗する為に(と言ってもピアノにもサックスにもマイクはついているんですが)マイクが あったのも仕方が無いかな、と言う感じ。今日は音響がとても上手く行っていて、スピーカーの存在を意識させられるのはヴァイオリンソロの時のみ。 とても良いバランスだったと思います。

 アンコールを2曲やった所で三度目に出て来てしまった3人。中岡氏は「セカンドステージで三度目のアンコールで僕らも何やろうか困ってるんですよ。」
 すると客席から「リベルタンゴ!」との声。するとそれに呼応するように他の観客も「リベルタンゴ!」と声。中岡氏が「じゃあ リベルタンゴで。」と言って松原氏と二人で 楽譜を用意し始める。そこへ石田様。
「何?」
 目が点になる松原氏&中岡氏。ぷっと吹き出す観客(<それはお前だけだ)。中岡氏が苦笑いしながら曲目を教えてあげると 「全然聞いてなかった、今。」と石田様は少し笑いながら仰っていました。
 このトリオ、練習とか見てる分には楽しそうですよね。ツッコミの中岡氏は二人にツッコミ入れなければいけないので大変かもですけど(笑)。

 ラストのリベルタンゴでも石田様のヴァイオリンは勢いが衰える事無く、迫力の演奏でした。
 3人とも約2時間弾きまくって最後の最後までこの演奏って言うのは、やっぱりプロ。 トリオ・リベルタがまたカッコ良くなったなぁと感じました。














2004年6月24日 横浜シティ合唱団第7回演奏会
ベートーヴェン ミサ・ソレムニス


場所:横浜みなとみらい大ホール
指揮:佐藤功太郎
ソプラノ:島崎智子
アルト:青木美稚子
テノール:川上洋司
バス:谷 茂樹
合唱指揮:鈴木竜哉
合唱:横浜シティ合唱団
オーケストラ:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲目:L.V.ベートーヴェン
 ミサ・ソレムニス

★実は横浜シティ合唱団の演奏を聴くのは初めて。横浜シティ合唱団は石田様の事が大好きなので 神奈フィルとやる時は必ずコンマスは石田様・と言う情報は前々から入っていましたけど、何故だか 行った事は無かったのでした。

 さてミサ・ソレ。以前聞いた時と全然印象が違います……。と言うか、以前聞いた時、 全然興味が無かったんだな……と言うのがバレバレ(<読み返したらしい)。
 何が言いたいって?勿論4曲目「Sanctus」です。

 その衝撃は休憩の直後の「Sanctus」で訪れた。石田様はおもむろに立ち上がり、指揮者の脇へ。 指揮者とコンマスが妙に離れていたのはこの為だったのである。石田様はそこで譜面台を整えるとソロが始まった。
 プログラムには「精霊(独奏ヴァイオリン)が天使(フルート)と共に舞い降りる」とあるが、まさに その通り。石田様の音色は優美で軽やかで、繊細な高音を何の気なしにやってのけるも、オケや合唱団には決して負けない。 この絶妙なバランスが石田様なのだ。
 リベルタの時と同じスタンディングでの演奏ですが、演出が全く違う。ミサ曲に相応しく、すっとしたシンプルな演奏で、 厳粛な雰囲気に包み込まれている。空気までも演出してしまう石田様の演奏への想いには脱帽だ。
 管理人がそんな石田様の素晴らしい演奏に圧倒され、感動のあまりこの曲の間中、阿呆の様に口を開けっ放しにしていたのは秘密である。
 惜しむらくはこの曲が全体の途中の曲だったので石田様にむけて拍手が出来ない事だが、それも最後に指揮者の佐藤氏が石田様を 立たせてくれたおかげで無事石田様に拍手を贈る事が出来た。
 石田様が指揮者よりもソリストよりも拍手を貰っているように感じたのは気のせいではない。 石田様の演奏はそれほどに多くの人の琴線に触れる演奏だったと言う事だろう。
 今日はこの演奏を聴けただけで満足である。実はこの曲に至るまで合唱団のテノールが健闘していたとか、 アルトのソリストの声が好きだとか色々書こうと思っていたのだけれど、この曲で全て吹っ飛んだ。本当に、聴きに行って良かったです。 いつか神奈川フィル合唱団でもやりたいなぁ……(勿論コンマスは石田様で)。



2004年6月27日 「遊声」第7回演奏会
歌のうた


場所:新宿文化センター
★曲&合唱&指揮&ピアノ
合同合唱 オープニング
 あらしの中
 (詩/馮至 訳/秋吉久紀夫 曲/萩京子)
 指揮:鈴木成夫
東京外語大学混声合唱団コール・ソレイユ
石垣りんの詩による五つの混声合唱組曲
「朝のパン」
 (詩/石垣りん 曲/萩京子)
 指揮:河内渉 ピアノ:森山至貴
日本大学合唱団
混声合唱組曲「あしたの灯」
 (詩/門倉訣 吉岡弘行)
 指揮:高井暁 ピアノ:大石浩子
東京家政大学フラウエンコール
川崎洋の詩による五つの女声合唱曲
「やさしい魚」より
1:感傷的な唄 2:ジョギングの唄
4:鳥が 5:やさしい魚
 (詩/川崎洋 曲/新実徳英)
 指揮:渡辺香織 ピアノ:壱岐利恵
東京大学コーロ・ソーノ合唱団
混声合唱曲集「光と風をつれて」より
1:いっしょに 2:秋のまんなかで
4:あいたくて 5:はじまり
 (詩/工藤直子 曲/木下牧子)
 指揮:田中啓道 ピアノ:森山至貴
合同ステージ
「武満徹のうた」
1:小さな空 2:小さな部屋で
3:うたうだけ 4:○と△の歌
5:死んだ男の残したものは
6:翼 7:明日ハ晴レカナ、曇リカナ
 (詩/1,4,6,7:武満徹 2:川路明 3,5:谷川俊太郎 曲:武満徹)
 指揮:鈴木成夫 ピアノ:山内知子
アンコール
 そのひとがうたうとき
 (詩/谷川俊太郎 曲:木下牧子)

★指揮者、鈴木成夫氏が常任指揮者を務める四つの合唱団の合同演奏会。
 そんな訳で個別の演奏は全て団の学生指揮者である。そのせいなのかなんなのか、 割とスタンダードな構成の曲が多く、安心して楽しむ事が出来た。
 どの合唱団も爽やかな声で、柔らかい、聞きやすい音色であった。テノールが結構頑張っているのが随所に見られて、 好ましいが、ベースも同じくらい頑張って欲しかったなぁ。

 混声合唱団三つに女声合唱団一つで合同合唱だったのだが、女声合唱が一つ入っている割に男女の 構成比が良かった。これだけ男声の人数が居れば結構サマになるんだけどなぁ……(<自分の所属する合唱団を振り返っての発言らしい)。

 合同合唱の武満徹は色々な趣で、中々に面白かった。爽やか過ぎるぐらいの声で武満徹の明るく、陰鬱な世界を 演奏されると、不思議な気持ちになった。これだけ人数が居るとやっぱり圧巻ですね。大体100名から150名ほどでしょうか(<幅が広いな!)。 この人数であの微妙なハモリを完成させたのは素晴らしいと思います。








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