場所:川口総合文化センター
リリア音楽ホール
指揮:栗山文昭
ピアノ:須永真美
合唱:女声合唱団 青い鳥
曲目:
第1ステージ
Adorna thalamum tuum 作曲/William Byrd
Veni,sponsa Christi
作曲/Claudio Monteverdi
Veni,Creator Spiritus 作曲/Hector Berlioz
Ave Maria 作曲/Zoltan Kodaly
第2ステージ
27の同声合唱曲集より 作曲/Bela Bartok
(マジャール語指導/森本覚)
Z-1 Banat
2 Ne lattalak volna!
3 Elment a madarka
[-1 Parnas tancdal
2 Kanon
3 Isten veled!
第3ステージ
女声合唱とピアノのための
形見―万葉の愛のかたち五篇―
詞/川口義晴 作曲/新実徳英
ピアノ/須永真美
形見
遠く…
夜
別れ
魂逢ひ
第4ステージ
無伴奏女声合唱のための
モニュメント
詩/木島始 作曲/信長貴富
(英語発音指導/山内房子)
(2003〜2004年八ヶ岳ミュージックセミナー・青い鳥委嘱作品全曲初演)
第一章
第二章
アンコール
「青い鳥」(タイトル不明) 作曲/国枝春恵
★朝、黒熊の三角氏(@COSMIC GARDEN)からメールが入り、この演奏会に誘われた。
それまで羽田氏&大谷嬢のコンサートに行くつもりだったのだが、信長氏の初演があるのでは行かない訳には行かない(プロフィール参照)。
どうせ(失礼)あちらのチケットも当ったものだったので早々と人に譲った。
というわけで黒熊の三角氏、ありがとうございました。そんでもってまた信長氏の初演の時は誘って下さい(どさくさ)。
第1ステージは有名作曲家の宗教曲を中心に。全て聞き終わってから見ればこのステージが一番親しみやすい曲が集まっていたと言うのも
面白いですね。
そして、この合唱団、構成年齢は若めのはずなのですが、声が成熟されていてとても美しい。
若いソプラノ特有のキンキンした音が無く、まるく優しいものに包まれたかの様な
音色は逸品。ハーモニーもバッチリで見事な美しい倍音がホールを満たしました。
おそらくホールの設計も良いのでしょうが、倍音が増幅されて聞こえた気がします。
とにかく安心して聞けました。宗教曲だけあって(偏見?)安らかな気持ちになれましたし。
何よりここまで女声合唱で倍音が出るって言うのは素晴らしいですね。
久々に倍音が出る合唱団を聴いた気がします。
第2ステージはマジャール語のせいかソプラノが急に浅くなった気がしたのですが、曲目が進むに連れて安定してまた深めの音色に。
第1曲目の音が当った部分なんかではわざと地声っぽく出してハンガリー曲特有の演出があったり、なんだか親しみを感じました。
私が「バルトークってハンガリー人だったんだ」と発言したら
「そうだよ。知らなかったの?」と当然のように返されました。ごめんなさい。勉強します…。
それにしても普通の曲ではありませんでしたね。一見美しい音で構成されているように感じるのですが、細かい所ではバチバチと火花が散っていました。
この辺からどんどん現代音楽〜って感じが漂ってきていました(笑)。
第3ステージの新実氏の曲は昨年委嘱初演したもの。
第1曲と第5曲はメロディアスで親しみやすい(と言ってもそこここで当りがあったり、現代音楽なんですけど)?と思ったのも束の間、
間の3曲はバリバリの現代音楽でした。特に第2曲、第3曲なんかは突っ走っています。
第2曲は素敵な当りが満載で、これを歌っている団員たちは凄いな・とただただ感心するばかり。
次の第3曲も断続的なピアノと合唱で、メロディらしきものがあるのはハミングとヴォカリーズ(?)の部分のみ。
あ、特にnのハミングがとても綺麗でした。しっかり音が鳴っていて、美しかった。あんなハミングできるようになりたいなぁ。
第5曲ではピアノの音が切れ、それに続いて合唱が切れた瞬間に長く音が響いた
(解り難い説明でごめんなさい)のですが、それ、ピアノが合唱に共鳴して弦が響いていたのです。
おそらくペダルで弦を開放してあったのでしょうが、それにしたって凄かった。
そして本日のメイン。信長貴富氏の新曲!
始まる前に栗山氏と信長氏の二人でフリートーク。栗山氏の背の高さ(大きい!)と信長氏のイケメンさにびっくりしました。
信長氏、カッコいいなぁ…(<そんな所しか見ていないのかお前は!<そんな事ありません!!)
この曲を作曲しようと思ったきっかけ、と言うかそう思った心理的欲求の源泉などのお話でした。
曲はいきなり合唱団員が片方をグーで、片方でそれを覆うように口元に当て、不思議な息の音を繰り返し、覆ったほうの手を開いたり閉じたりする事でその
不思議な音が変化させると言う思わず惹き付けられる始まりでした。
四つに分けられた合唱団のそれぞれがそれぞれのタイミングで始め、その後台詞を子音だけで喋る。
いきなりガツンとした始まり方なのですが、その後は圧倒的な音の洪水。
おまけにあまりにきっちりハモるものだから、ものすごい量の倍音が出て、私はちょっと音に「酔う」くらいであった。
この曲ソリストが居たのですが、特にアルトのソリストが秀逸。澄んだハッキリとした音色に好感が持てました。
倍音がぐわんぐわんして半トランス状態で聴いていたので色々事件があった(笑)と言う記憶はあるのですが
ハッキリとした感想はありません。(と言うかそんな偉そうな事言えない…)
とにかくこの最後の曲が「凄かった」と言う印象があって、演奏が終わってから立ち上がるとちょっとふらつきました。
きっと演奏会を聴きに来ていたのは95%が合唱関係者なんでしょうけど、これ、合唱に興味なかったら「何コレ?」と言う曲のオンパレードでしょう。
後半になればなるほど不可解(笑)になっていきました。
言うなればもっと聴きやすい曲があっても良かったかな・という感じ。でもま、合唱関係者しかこないんだったらコレでいいのか。
2004年3月13日現代の音楽展2004
室内オーケストラの領域W
―日仏交流現代音楽の夕べ
場所:津田ホール
製作・指揮:小鍛冶邦隆
演奏:東京現代音楽アンサンブルCOmeT
ピアノ:中井正子
ヴァイオリン:ノエミ・シントラー
アコーディオン:パスカル・コンテ
曲目:
吉田進/五つの俳諧
〜室内オーケストラのための
(1996フランス文化省委嘱作品/日本初演)
久行敏彦/BreathsU
〜for chember orchestra〜
(2004/初演)
小鍛冶邦隆/ピアノと16奏者のための
《ドゥブル・レゾナンスU》
(2004/初演)
フランソワ・ロッセ/プラトニウム
(1993フランス文化省委嘱作品/日本初演)
ベルナール・カヴァナ/ヴァイオリン協奏曲
ensemble―
(2000フランス国営放送およびアンサンブル・モデルン委嘱作品/日本初演)
★現代音楽である。いつもの通り私は当たったチケットで鑑賞したのだが、
津田ホールを8割方埋めたお客さんはみんな現代音楽好きらしい。
私も勿論現代音楽が好きだが、これ程一般受けしているとは思っていなかった。これだけお客さんが集まるなら
現代音楽の未来も明るいのでは・と思え喜ばしかった。
しかしまあ、ある意味どんな音楽も出てきた時は現代音楽なのだから、
いつかは今日聴いた音楽が古典と呼ばれる事もあるのだろう。
それでもこれだけ現代音楽にお金を使おう・と言う人が居るのなら音楽界って結構大丈夫なんじゃないかな・そんな感想。
さて、曲の方。勿論私は全ての作曲者を知らず、演奏者にも知っている人は居ない(連れは知っていた様だが)。それでもわくわくして聴けたのは
現代音楽と言うくくりがあるからだろうか。何かやってくれると思っていたからかもしれない。
始めの吉田氏の曲はヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コンバス、フルート、オーボエ、ファゴット、トランペット、トロンボーン、
トランペット、ハープ、それにパーカッションが2人。
ピッコロが和楽器の様な音を出した美しい曲で、
タイトル通り、五つの松尾芭蕉の俳句をタイトルに五つの曲が付けられています。
第二句の「古池や蛙飛びこむ水の音」はチロチロと水面を現して居たかと思うとバチャン!と
蛙が水に飛び込む音がして、その後また水面が滑らかになっていく。それだけ。
びっくりしてしまいました。あまりにそのまんまなんですが(笑)、とても面白かったです。こう言うアイデアはやったもん勝ちですね〜(<褒めてますよ)。
後は第四句の「菜畠に花見顔なる雀哉」では句の通り可愛らしい音楽で、とても楽しくなりました。
そして全ての曲を聴いてから思えばこの曲が一番メロディアスで「普通」の曲だったのです…(笑<昨日もそんな事言ってなかったか?)。
続いての久行氏の曲は下手前列からヴァイオリン2、ヴィオラ、クラリネット、オーボエ、フルート。
その後ろが上手からコントラバス、チェロ、ファゴット、
トロンボーン、トランペット、ホルン。一番後ろにパーカッションが二人。
クラリネットの変な音(って言ったら悪いですけど)で始まり、その後フルートへ引き継がれる、不思議な出だし。
とにかく打楽器が印象的で、チューブラーベル
(カァーンと気持ちいい音のする吊るしてある金属の棒みたいな奴)や大太鼓が大活躍。特にチューブラーベルはクライマックスでは
これでもかと言うほどの速打ちを披露。この楽器がメロディラインを演奏するなんて事、滅多にないんじゃないだろうか。
心なしかパーカッションのお姉さまも楽しげでした。
後、この曲はパーカッションは楽器持ち替えが多く、とても忙しそうでした。ついついパーカッションを見てしまうんですよねぇ。
チューブラーベルとアンサンブルの対決(としか言いようが無いクライマックス)の後はまた冒頭の音楽に戻って来て了。とても面白かったです。
ああ、今日の感想こんな感想ばっかりになりそう…(汗)。
前半のラストを飾るのは本日の指揮者小鍛冶邦隆氏の「ドゥブル・レゾナンスU」。中央にピアノ、下手側にはフルートの隣にヴァイオリンが二人並び、
その後ろに下手からトランペット、オーボエ、ホルン。ホルンの真後ろあたりにコントラバス、その左にマリンバ。
上手には手前上手からクラリネットとヴィオラ。その後ろに上手からファゴット、
チェロと並び、その後ろにトロンボーン。更にその後ろにハープが居て、そのちょっと手前に
トロンボーン。そしてその斜め前にビブラフォン(かな?ああいう楽器って名前分からないんですよね…早い話でっかい鉄琴)。
一見するとちょっと歪んだ対抗配置に見えて、きっと音響効果もねらってあるんだろうなぁ。と思いました。
この曲のピアニストは中井正子嬢。どうやらゲストの模様
(東京現代音楽アンサンブルCOmeTにも黒田亜樹嬢と言う素晴らしいピアニストが居ります。)そしてそのピアノが凄かった。
ピアノのガシャーン!と言う音で始まり、それに触発されるかのように他の楽器も音を奏で始めるのですが、そのパワーがちょっと違いました。
ご本人の指揮だからでしょうか。
とても解りやすい音楽で面白かったのですが、いかんせんパンフレットの解説は全くわかりませんでした。わからなかったんですってば(笑)。
15分の休憩を挟み、後半はフランスの作曲家の曲を。それにしても、会場内にフランス人が多いです(笑)。
フランソワ・ロッセ氏の曲は下手にピアノがあり、最前列はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。2列目はフルート、オーボエ、
クラリネット、バスクラリネット、サックス(なんとバリトンサックス、テナー
(?アルトかも。判らない)サックス、ソプラノサックスの三つを持ち替え!!)、ファゴット。
ピアノの奥になる形でトランペット、ホルン、トロンボーン。そしてパーカッションは3人。この曲のピアノは黒田亜樹嬢。
淡々と弾く様がカッコ良かったです。
フルートの妙に和風のメロディで始まり。
フルートとクラリネットの音がもつれて転がるような所へヴァイオリンがちょっかいを出して・みたいな感じの部分や、
ビブラのかかったトランペット(って言うのか?よく判らない…)など、
不思議な音楽の連続でした。ピアノパートが地味に(笑)重要だったりして、注目でした。連れの話によるとかなり特殊奏法を駆使していた模様。
私はその時何処を見ていたんだろう…(笑)。
中盤を過ぎた辺りでチェロのオイシイパートがあったり、
最後の最後でソプラノサックスがド派手に、華やかに散って(っておかしいけど)みせたり、と中々色んな楽器に
スポットが当る曲でした。
そしてこの曲の一番のプッシュはフルート!えぇと、フルートを吹いたのは資料によると木ノ脇道元氏となっております。
この方、長髪をオールバックにして後ろで一つで結んでいる(しかもその長髪めちゃ長のくせに綺麗なウエーブなの!ずっこいの!)と言う
ぱっと見ちょっと普通じゃない(褒め言葉)お兄ちゃんなのですが、フルートの演奏が凄い。素晴らしいんです。
どの曲もフルートは割と重要だったのですが、この曲でその実力を如何なく発揮。
曲の後半でおもむろに立ち上がったかと思うとピアノの所へ行き、
そのままピアノの中へ楽譜を置いて頭を突っ込んで吹き始めたではありませんか!!
ピアノの反響板の方へ向かって吹いているわけですから、それに当った音がこちらへ響いてくる訳です。その間ピアノパートは無し。
ピアノの黒田嬢が指揮者が見えない木ノ脇氏の代わりに指揮者を見てタイミングを取るお手伝いをしていました。フルートの奏者はこちらに
お尻を向けているわけですからなんだか不思議な感じがしました。
更にその最中「フスー!」と言う息そのものみたいな音と「ふゎぁぁ!」と言うフルートの音(にしては少々カスレている)を同時に吹くと言う
ウルトラCをこなしてくれました。こんな奏法聞いた事無いです。どう言う奏法なんでしょう。わかる人、教えてプリーズ。
いやあ、このフルートは良かったなぁ。。。
今日のトリ、ベルナール・カヴァナ氏の曲は本日の曲目の中で
「これぞ現代音楽。これぞコンテンポラリー(意味一緒)」と言う感じ。思い返せばこれが一番激しい(笑)曲だった。
アンサンブルは下手手前からヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、2列目にフルート、オーボエ、
クラリネット、バスクラリネット、ファゴット、アコーディオン、コントラバス。
更にその後ろにトランペット、ホルン、トロンボーン。そしてパーカッションが二人。
ソリストは指揮者と少し距離を置いてアンサンブルのヴァイオリンより少し下手に。
雷のようなドカーン!と言う激しい始まり。全てのパートがやりたいようにやっているような印象を受ける部分が過ぎると、
大太鼓のカッコいいリズムが入って、それをコントラバスが踏襲。このパートがカッコ良かったです。アコーディオンのおかげか、低音が補充されて
音が厚くなっていました。実はアコーディオンは右手しか見えなかったんですが、凄い速さで指が動いていました。
お、恐ろしい…!!
第一章のラストは唐突に終わってびっくりしました。それから第二章。
ヴァイオリンソロのノエミ・シントラー嬢はフランスでの初演も担当した方らしく、堂々の演奏。
感情の籠った演奏でした。体中を使って表現すると言うのかな。膝から動いていましたね。運指もとてもキビキビしていて好感を持ちました。
弓で弾きながら左手で弾(はじ)いたり、色々忙しそうでした。
そう。忙しそうと言えば(笑)パーカッション!変な銅板がぶら下げられていて、それを叩いたり、
二人で何種類もの楽器を演奏していました。
一番凄かったのはチューブラーベル。その部分は片方がチューブラーベル、
片方が銅鑼を担当していたのですが、銅鑼のパートが終わった後、銅鑼を演奏していた方が
チューブラーベルを演奏するもう一人の後ろからにゅうと手を伸ばし、二人で演奏を始めたではありませんか!
こ、こんな演奏初めて見ました。もう目が点です。
そう、和音があって出来ない、じゃなくて、
そんな速いの一人じゃ出来ない・と言う感じで二人で演奏しているのです。なんだか見ていてうふふと笑ってしまいました。
こう言うのがあるから現代音楽やめられないんですよねぇ。
全曲通して素晴らしい演奏だったと思います。これだけの曲を演奏しきってしまう
東京現代音楽アンサンブルCOmeTに拍手。全員の名前は掲載できないのでこんな形ですが、一人一人が素晴らしかったと思います。
えぇっと、敬意を表してパーカッションの御三方だけ名前を書いておこうかな。
神田佳子嬢、渡邊理恵嬢、稲野珠緒嬢の御三方です。とっても楽しそうに演奏していたのが
印象的でした(そして忙しそうだった…)。
今日の演奏会はかなりマニアックな、それこそ現代音楽が大好きな人しか来ていなかったのではないだろうか。
その証拠に観客のマナーが素晴らしい!
観客も演奏会作りに一役買っている事をしっかり理解しているのでしょう。みんな本当に音楽が好きなんだなぁ。
それを思うとなんだかぽわんと幸せな気分になれました。