横山秀夫



第三の時効 半落ち






2003年9月19日 第三の時効


出版社:集英社(2003)

★刑事ものである。親が「面白いから読んでみて」と言うので読んでみた。面白かった。 最近刑事ものづいているのか、ちょっとこう言うのが面白い。
 さて、本書は連作短篇集で、ある県警の捜査一課を舞台に色々な登場人物にスポットを当てる アンソロジーのような構成を取っている。つまり、前回脇役だった人物が次の話 では主人公になっていたりするのである。 この手法がそれぞれの人物をうまい事描写していて良い。 あるエピソードで明かされたある人物の性格などが他の話で説明もなしにちょろっと出てきたり するのである。これは纏め読みをしている方には嬉しい仕掛けである。

 どれも犯人と刑事の息詰る駆け引き、さらには刑事同士、刑事と新聞記者の駆け引きなどが臨場感を持って描写されている。 特に刑事間の確執や、刑事の被疑者に対する感情など、目が離せないものがある。
 殺伐とした一課を描いているものの、文体そのものは殺伐としておらず、むしろ人を見る目は温かい。
 私は「ペルソナの微笑」と表題作の「第三の時効」が気に入りました。「ペルソナの微笑」は主人公が笑っているのが悲しくて 泣きました。私だけ…じゃないといいなぁ。「第三の時効」の二班班長の策略には舌を巻きました。すごいです。

 ところで一班班長の苗字が朽木だって事にちょっと萌えたのは私だけデスカ…デスネ…(笑)。


2003年10月15日 半落ち


出版社:講談社(2002)

★今度は地方の刑事モノ。1章毎に一人称の人物が違う。一つの事件を色々な立場の人間の視点で 描いている。

 警察所属の梶はアルツハイマーの妻に「殺して」とせがまれて妻を殺してしまう。所謂嘱託殺人である。しかし梶が 自首したのは妻を殺してから二日経っていた。空白の二日間、梶が何をしていたのかが争点となった。
 犯行は認めているものの、その二日に関して梶は頑として口を割らなかった。半落ちである。

 梶に関わる人物がどう変化していくのか、どう動くのかがとても面白い。自分の立場に苦しめられる人々の姿がとてもリアルで怖い。 組織に縛られながら、その中でもがく人々が心に迫る。そして、梶が口を割らなかった空白の二日間の理由に泣かされるのである。



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