時雨沢 恵一



キノの旅 キノの旅U
キノの旅V キノの旅W
キノの旅X キノの旅Y
キノの旅Z






2004年4月26日 キノの旅
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2000)
イラスト:黒星紅白

★久々に青少年向けのライトノベルの登場である。と言っても、中々にテーマが面白い。

 主人公キノが喋る二輪車エルメスと旅をする話である。と言ってしまったらどうしようもないが、 連作短篇集形式で描かれるこの物語は、毎回深いテーマがある。
 キノが訪れる国は皆、 どこかしらズレている。キノはそのズレを直したりするわけではなく、 むしろ積極的には関わろうとしない。そこはまあ向こうから接触してくるのでキノは結局は関わる事になるのだが。

 しかし、キノが積極的に関わらない事で、読者がその国のズレについて 考える事が出来るのである。


2004年5月9日 キノの旅U
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2000)
イラスト:黒星紅白

★キノの旅、第二弾である。今回もキノとエルメスが色々な国を旅して回る。いつも 訪れた国で優しい人々に出会い、少し、辛い思いをする。

 毎回帯の文句がストレートだ。1巻は「世界は美しくなんかない。」だったし、2巻は 「世界は正しくなんかない。」である。何が綺麗か、何が正しいかの定義がはっきりしていないので それを全く受け容れる訳にはいきませんが。
 しかし、きっと世界は歪んでいる。何が正しいか、何が美しいかは個人個人が自分で決める事だ。 きっと世間での「正しい」事なんて、多くの人の共通認識でしかない。それは国が変われば変わること。 その国で「正しい事」は他の国では「間違った事」かもしれない。
 キノの旅のシリーズはそう言った事をちょっぴり考えさせてくれる。


2004年7月21日 キノの旅V
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2001)
イラスト:黒星紅白

★今回もなんと言うか理不尽な話が詰っている。
 カラー口絵のページはシズの物語。モノローグとエピローグも毎度のことながら手が込んでいる。
 今回実験的作品が多かったように思う。物語が文章の途中でブツと終わったり、文章の 肝心の部分が×××で消してあったり。 多分あの部分は作者も考えていないに違いない(笑)。
 いつものことながら色んなことを誤認させる手口は鮮やかだ。しかしそれ故に真相を看破しやすくなっているのもまた、事実かも。
 個人的には、短いけれど「差別を許さない国」のテイストが好き。


2004年7月29日 キノの旅W
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2001)
イラスト:黒星紅白

★今回も不思議な話満載。
 朱に交われば赤とか、そう言ったことわざもあるけれど、主人公キノは相手にあわせつつも、 決して自分の大切な部分を譲る事はない
 今回の話の中に「伝統」と言う話があるのだけれど、これのオチが面白い。あぁ、もうここでバラしてしまう事が出来ないのが 少々悔しいが、まあ、読んでいただけると宜しい。

 シズと陸の話も入っていて、シズがいかにお人よしなのかが良くわかる。本人はそのつもりではないだろうけど、多分お人よしだ

 今回のプロローグと、二つ目の話、どうもキノの過去の話とか、名前の事とかが関わってくるのだけれど、どうもよく分からない。 と言うか、いい加減キノの本名の「赤い花」って何なんでしょうね。いつも其処の部分だけ×××××で消してあるんだよナァ……。


2004年7月31日 キノの旅X
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2001)
イラスト:黒星紅白

★なんだか議論を呼びそうな話が満載。今回のテーマは考え方の違いかなぁ……。
 どんな事も違う側面から見たら違う見方があるって事をお伽話的に、象徴的に描いている。
 キノはいつだって自分を殺そうとする人には厳しいし、関わりのない事には考え方すら表明しないけど、実は結構優しい。 その優しさがこの物語をギスギスしたものじゃなくて、ふんわりとした独特の雰囲気にしているのだと思う。
 それにしても「英雄たちの国」は結構凄かったけれども。


2004年7月31日 キノの旅Y
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2002)
イラスト:黒星紅白

★考え方の違い、第二弾。同じタイトルで、違う話がいくつか収まっていたりする。象徴的なのは「中立な話」だろうか。 旅人が変わる事で同じ状況でも物語が大きく変わっていたりする。キノ、シズ、師匠の三人三様の旅が面白い。
 シズについては一巻に繋がる話が収録されていたりして、中々に楽しませてくれる。
 時系列がめちゃくちゃなのはいつもの事だけれど、最後のエピローグまで読んで「あぁ、あれはこの事だったのか」と思わせるのは やはり凄い。この、物語の絶妙な配置もキノの旅シリーズを面白くしている重要なポイントだろう。

 後、5巻の後書きで「安全な国」は今回も却下になった、とあったけれど、この6巻には収録されている。まあ、どこらへんがどう言う風に マイナーチェンジされたのか、それとも全く違う話なのか解らないけれど、なるほど、ボツになるのも何となく解る。そうそう、問題は、使う人間って事(読めば解ります)。
 ちなみに今回の後書きはとんでもない。何をどうしてこんな事になったのか。いやはや。とてもセクシー!


2004年8月3日 キノの旅Z
―The Beautiful World―


出版社:メディアワークス(2003)
イラスト:黒星紅白

★えぇっと、もしかして、この巻でキノシリーズは終わりなのかな?今回本の冒頭と末尾を飾る 「何かをするためにa・b」は、キノが旅に出る前の話である。

 今回のキノは珍しく国に3日以上の滞在をする。一つの国に3日まで、と決めているキノにしては珍しい事だ。 しかし、その期間延長には全て理由がある。特に理由が面白いのは「迷惑な国」だろうか。

 最後の「何かをするために」はキノがキノになった物語を描いている。キノが過去と決別するには何が必要だったのか、 何を捨てたのか。それもまた、キノの旅の原点かもしれない。



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