斎藤美奈子



趣味は読書。 文学的商品学
男性誌探訪






2003年12月4日 趣味は読書。


出版社:平凡社(2003)

★タイトルから分かるように、ミステリィではない。所謂「ベストセラー」と呼ばれる本を読者の代わりに読んでみよう、 と言う企画の連載を纏めた単行本。「大河の一滴」がエッセイ集であるとか「鉄道員(ぽっぽや)」がホラー小説(笑)であるとか、この本で初めて知りました。 「大河の一滴」ってトランペット青年(セルゲイ・ナカリャコフ)の出てくる話じゃなかったんだ…(<映画のCMを観て判断。映画も見ちゃ居ない)。
 確かに、そう言えばベストセラーと呼ばれる本は大まかな中身は知っていても、何故か読んだ、と言う人にあまり会わない。そう言う本を何故売れたのか、どういう本なのか、 代わりに読んで教えてくれる本である。読んだら「なるほどなぁ」と思えるし、読まなくても「やっぱりなぁ」と思えるのである(笑)。
 ココまで読んでうさんくさー、と思った人はこの本の前書きにあたる「本、ないしは読書する人について」だけでも読んで貰いたい。 なんと言うか、ごもっとも。であるから。
 ちなみに館風は確実に「読書依存型」である。読書依存型の説明文を紹介しよう。
「この一族は年中本に関するゴタクばっかりこねている。書評や書籍広告にもよく目を通し、読んだ本について あれやこれやと論評し、頼まれもしないのに、ネットで読書日記を公開したりする。目的がなくても書店があると入ってしまい、 買う気が無かった本まで飼ってしまう。『本の置き場所がない』は彼らの最大の悩みだが、きっぱり売り払う勇気もない。」
 ・・・ごもっとも。


2004年5月22日 文学的商品学


出版社:紀伊国屋書店(2004)

★マヂメな小説をストーリィや登場人物と言う視点ではなく、 出て来るモノの視点から読んでみよう・と言う本である。 それも、そのモノそのものをどうこう言うわけではなく、モノがどう描かれているかに主眼がある。

 主人公がどう言う服を着ているのか、や何を食べるのか、どんな部屋に住んでいるのか、全て描写される時、それは そのモノに関連するものにドキドキしているからに他ならない。興味の無いものなど 目に入っていても見えていないに等しい。映像ならば見ている側は全てを見るが、文章では作者が 「視えるモノ」の取捨選択をする。
 何をとって何を捨てるか、作品が豊かになるもならないもその辺りの手腕にあるのかもしれない。


2004年6月26日 男性誌探訪


出版社:朝日新聞社(2003)

★男性誌の特徴は何か、男性誌とはなんなのか、そんな所も織り交ぜつつ、その雑誌の特徴を捉え、どう言うところが「男性的」で あるのか、批評する本。
 どうも男性誌は女性誌と違い、まだ「コレ」と言うパターンが無い。その趣味の分野に女性が少ないと言う理由で 結果的に読者が男性に偏ってしまうものもあれば(例えばつり雑誌とか鉄道雑誌とか)、そもそもターゲットを男性に定めている物まで、 色々有る。それを見ていくだけでもかなり面白い。
 前半は世の中を読む系の雑誌で、どんどん趣味的な雑誌へと移行する。それにしてもここでくくられた「男性誌」ってほとんどが偉そう。何で?

 「男性」的なものって、そう言う風にくくる自体が差別的なんじゃないかとか思ったりもするんだけれど、 それをあえてこうして真剣に読んで研究するって事も、大切なんじゃなかろうか。斎藤さん、かなり真剣に各雑誌を読んでます。 ここで槍玉に挙げられている雑誌が好きな人は一度読んで考えてみるべし。

 それにしてもBRUTUSの宇宙人向け地図とか結構面白い写真なんかも有り。雑誌の表紙がそのまま載っていたりするので雰囲気 が良く分かります。
 Tarzanなんかいつも半裸の男性が表紙だから女性誌だと思っていたけど(でも不思議と女性誌で男性の半裸が表紙って無かったりするよね)、 男性誌なんですね。そしてそれがどうして男性誌なのか、 と言う理由も結構面白い。その辺は是非読んで確かめて欲しい。



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