嶽本野ばら



鱗姫 エミリー
カフェー小品集 ミシン






2003年1月7日 鱗姫


出版社:小学館(2001)

ゴシック・ロリータ少女たちのあこがれ、嶽本野ばら氏の登場です。
 図書館でたまたま見つけて、冒頭を読んだらかなりイっちゃってて面白そうだったので借りてみる。割と短くて読み・・やすい?うーん。文章を好き嫌いされそうです。 ちなみに館風はどちらでもありません。

 ストーリィは美に固執する少女楼子(たかこ)がストーカーされた事に端を発し、楼子がひたかくしにしてきた謎の病気についてあきらかになる。
 謎の病気は楼子の一族の女性にしか発症せず、セックスをすると感染し、その場合は男性であっても発症し、治療法は無い。
 楼子は唯一の治療法を見つけるが、あまりの方法に段々と狂気に飲み込まれていく。

 えーと。。。そうですね。あまりの事にびっくりしますね。気付かないうちに狂気へ走る心理がうまいですね。 でも、楼子の一人称で描かれているのですが、これをいい歳行った男性が書いているのか、と思うとちょっと凹むかも(笑)。 あ、でも女性が書いていると思ったらもっと嫌だな(笑)


2003年12月10日 エミリー


出版社:集英社(2002)

★恋愛をモチーフにしたお話を集めた短篇集。「レディメイド」は片想い、「コルセット」は不倫、「エミリー」は…なんと言うか不思議な恋愛話である。

 私が一番気に入ったのは「レディメイド」。価値観の違う相手にどうしても告白できない主人公の微妙な気持ちが丁寧に、だが軽やかに描かれている。自分と違う 価値観を認めるが、それに合わせる事は無い・と言う考え方には好感が持てた。まぁそれも限度はあるでしょうけどね(含笑)。

 嶽本氏はヴィヴィアンが大好きだから仕方ないけれど、服の描写がちょっと多すぎる。でもまぁ、ヴィヴィアンやら何やらのロリータ好き世代に向けて書いている、と言うのならそれもアリですかね。 そのわりに掲載誌が「小説すばる」だったりしているけれど。

 それでも「エミリー」の中で主人公が初めてEmily Temple cuteの服を試着したシーンは良かった。
 まあ、店員さんはどんなに似合っていなくても服を売る為に「お似合いですよ」と言うものだけど、このシーンの台詞はちょっと信じてもいい。
「(前略)でも、人の為に着るんじゃなくて、自分の為にお洋服は着るものだから、嗤われても気にする必要はないと思います。(中略) お洋服が似合うか似合わないかは、体形や年齢、容姿で決まるものではないと思います。似合うかどうかは気合次第です。」
 気合ね。気合。そうかもしれませんね。


2004年5月14日 カフェー小品集


出版社:青山出版社(2001)

★小さな一軒カフェーを舞台にした短篇集。カフェじゃなくてカフェーだそうで、どうも現在の明るい健康的なカフェブームに 背中を向けたカフェーの物語なのだそうだ。

 物語は全て男の子と女の子の物語。上手く行く話もあれば、わかれちゃう話もある。しかし、殆どの話に共通するのが、 女の子が「相手が自分なんかの事を見ていてくれるはずが無い」と勝手に思い込み「それなら別れが来る前に自分から去った方が良い」と 考えて男の子の前から去ると言うパターンである。
 はっきり言ってこの物語の登場人物たちは相手の事を考えすぎる。そう言う、繊細な人物ばかりである。こう言う人たちはきっと生きるのが 難しい。世界は優しくないから、こういう繊細な人たちには生き難い世界だと思う。だからみんな少しずつ鈍く、鈍くなっていくのだと思う。

 こんな繊細な人たちが絵空事だと思ってはいけない。実は結構身近にも居るものである。


2004年7月16日 ミシン


出版社:小学館(2000)

★嶽本野ばら初めての小説。実はコレ、一度トライしようと思ったものの、始めの五行で音を上げて投げてしまった 本なのでした。しかし、もう2冊も3冊も読んだ後にトライしてみたら、まあ、読めました(笑)。
 多分これは野ばら作品を初めて手に取った人が感じる違和感だと思うのですが、きっとその違和感が野ばら作品のらしさだと思います。
 内容は表題作ともう一編。どちらも恋の物語……だと思う。自信ないけど(笑)。何と言うか、共感できるかできないかは別として、相変わらず(と言うか、始めから?) 繊細な人々を描いた小説だな、と思いました。



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