森博嗣



赤緑黒白悪戯王子と猫の物語
猫の建築家虚空の逆マトリクス
森博嗣の浮遊研究室アンチ・ハウス
迷宮百年の睡魔四季 春
森博嗣の浮遊工作室2四季 夏
ZOKU四季 秋
四季 冬探偵伯爵と僕
ナ・バ・テア 数奇にして有限の良い終末を
ミニチュア庭園鉄道 星の玉子さま
ミニチュア庭園鉄道2 Φは壊れたね
工作少年の日々 工学部・水柿助教授の逡巡
どきどきフェノメノン ダウン・ツ・ヘヴン
θは遊んでくれたよ






2002年10月29日 赤緑黒白


出版社:講談社(2002)

★図書館で予約待ちの末にやっと読めました。Vシリーズ10作目。どうやらこれでVシリーズはおしまいらしい。 それはそれでかなり残念ですが、始まりがあれば終わりがありますから。次回作に期待、です。

 ちょうど「ふっ」と息が止まるような唐突で、それでいて自然な幕切れ。いつも通り前口上で保呂草さんが色々言っていて、 どうも今回はなんとなく作者の気持ちそのものなんじゃないかと思わせるような内容。本の終り方はいつも通りの終り方で「これ、本当に シリーズ最終作なの?」と言うような感覚すら覚えます。でも、それがまた森博嗣っぽいと言うか、Vシリーズらしいんですよね。

今回の殺人事件は発見される死体が全身くまなくカラースプレィでカラーリングされている、と言うもの。もちろん連続殺人。 でーすーが!今回の話は私、殺人事件に集中できません。
 だって、だってそっちより恋愛関係の方が気になるんだものー!!!(笑)。
 だってそうでしょ?紅子さんと林さんと七夏さんはどーなるの?!とか、保呂草さんの気持ちは?!とか、紫子さんはどーするのっ!とかね。 今回は七夏さんが良かったな〜。紅子さんと七夏さんの関係も変わってきたんじゃない?前作までは二人の対決があると「うわぁ。表面上がキレイなだけに恐ぁ。」とか 思っていたんだけど、今回はそう言う感じしませんでしたね。全体的に雰囲気が良かったんじゃないでしょうか。
 個人的に小鳥遊さんと紫子さんのコンビが好きで、今回の話を読んでると今後に期待大(意味がわからないならいーです)なのですが、 これで終わりなんですよね。残念。

 今回は始めからほとんど犯人が割れているとだけあって、色々な人間関係が錯綜して、あまり『推理小説ーっ』て感じはしませんでした。 館風はそう言う小説の方が好きなんですけど。

 でも、やっぱり森博嗣の犯人の動機とか、そう言うのは恐いな、と感じました。ネタバレになるのであまり言及しませんが、 ああいう殺人者が居たらやっぱり困りますねぇ。恨まれて殺されるならまだ納得がいくかもしれないけど (いや、絶対納得なんかいかないって!)、ああいう理由で殺されるというのは恐い。Vシリーズではこういう動機の殺人について何度も言及されて(てか、毎回こんな理由の殺人じゃなかったっけ?) いるけど、読むたびに恐くなります。もしかしたらそう言う理由はあるのかも、と思ってしまうから恐いのです。

 森博嗣の次回作が楽しみです。
 あ、そう言えば、スカイ・クロラの続編が出るらしいですね。ちょっと楽しみです。



2003年1月17日 悪戯王子と猫の物語


イラスト:ささきすばる
出版社:講談社(2002)

★これは小説ではなく、絵本。森氏は絵本と言っていたが、イラスト付き短篇集と言った方が近いかもしれない。ただ、 内容はショート・ショートのようなクスリ・と笑ってしまうような短篇と、詩的な響きが強い短篇が含まれている。
 そして、その物語を悪戯王子と猫が読んでいる、と言う設定なのか、イラストはその物語のイメージと王子と猫のイメージが 重ね合わされている。

 この幻想的な雰囲気は森博嗣の短篇集に通じる所がある。最後まで読んで、ああそうだったのか、とわかる物語の方が少なく、 結局よく分からないことの方が多い。その物語のほんの少ししか分からなくて、物語と言うより詩を読んでいる気分になる事もある。
 でも、森氏の物語はこれで良いのだと思う。完全に理解なんてする必要はない。それはそうできる人に任せておこう。 自分は自分なりに物語を楽しめればいいと思う。


2003年2月20日 猫の建築家


イラスト:佐久間真人
出版社:光文社(2002)

★これも小説ではなく、絵本。こちらは全編を通してのストーリィがある。猫の建築家が何を作るべきか、と言う事を考える為に「形」や「自然」そして「美」について 考えると言うもの。
 小説よりも森博嗣氏の考え方が全面に押し出されている本です。これを読んで何を考えるかはまあ、人それぞれですが、ちょっと「形」とか「美」について考えたくなる本です。
 イラストがとても好きです。猫の視点から見ているような風景が面白くて、ちょっと淋しい感じが素敵なのです。


2003年4月7日 虚空の逆マトリクス


出版社:講談社(2003)

★こちらは森博嗣の最新短篇集。シリーズものとはちょっと違ったイメージの話が主ですが、犀川&萌絵シリーズのお話も一篇入っています(最後の「いつ入れ替わった?」)。
 その「いつ入れ替わった?」は、事件の方も、犀川と萌絵のお話の方もとても面白くて、ちょっとドキドキしました。しかし、こういう展開を迎えるって事は、 犀川&萌絵シリーズはもう終りかな?って感じもしますが。。。如何なものでしょうか。

 中でも館風が気になったのは「探偵の孤影」と言う一篇で、これ、ピーター・ラヴセイの「クレッセント街の亡霊」って話に似ていませんか?もちろん、そのままではないんですけど、 最終的な所は似ているな、と。違う所は探偵にその(なんの、かは読んで確かめて下さい)自覚があったかどうかって話でして。 これも面白く読ませて頂きました。

 何か、最近本屋に行くと森博嗣の新刊がたくさん出ていますね。エッセイ本が主ですけど、うー、割と森博嗣ファンなので読みたい気も。。。


2003年7月26日 森博嗣の浮遊研究室


イラスト:コジマケン
出版社:メディアファクトリー(2003)

★こちらは普段とは違った形式の著作。エッセイでも小説でもない(作者は度々小説かもしれないと言ってはばからないが)。 読むと分かるが、本当にエッセイでも小説でもなかった(笑)。これ、とてもポイントが高い所です。元々はネットで公開されているのでそれも良いですが このネタバラシは本だけなのでこちらもどうぞ。
 日常の中に落ちているけれどもスルーしてしまうような小さな問題提起がしてあります。ちょっと考えてみてもいいかも。
 ミステリィファンはVol.20とVol.40を読むだけでも価値があります。これ、読むと視野が拡がりますね。


2003年7月26日 アンチ・ハウス


共著:阿竹克人
出版社:中央公論社

★これ…すっごく面白い。ホント、すごく面白い。実際二日で読んだ。
 始めに森博嗣も言っているが、これは専門的な部分もあるが、そこを読むのではなく「生き方」を読むのである。 ぶっちゃけ、専門的な部分ははっきり言って訳がわからない(笑)。だって、四次元立方体を三次元に投影した形、って言われて分かりますか?(笑)。 それに、多分ガレージを建てようと思って読んでも、意味が無い。これが見本になるとは思えないからだ。
 「夢を実現させる為に生きている」と思えばどんな夢も必ず叶う。森博嗣は前書きでそう言いきった。 そんな森博嗣の夢(今回はガレージ)に対する「やる気」の詰まった本である。この夢に対する姿勢、と言うのは学ぶべきものだと思う。

 ちなみにこのガレージはとんでもなく面白い。おそらく日本には森博嗣以外にこんなガレージを建てようと思うのは他に居ないだろう。
吹き抜けになっている為2階の床面積は半分だが、下にお気に入りの車を3台並べてそれを見ながら模型雑誌を読む。彼にとってはそれは 床面積なんかとは比べ物にならないほど 大切な事らしい。こういったある種「無駄」が必要になる事もあるのだ。
 住みやすい家が必要なのではない。住みたい家が必要なのだ。ちょっと、納得した。


2003年8月7日 迷宮百年の睡魔


出版社:新潮社

★サエバ・ミチルが主人公の「女王の百年密室」の続編。 こちらは「百年密室」のネタバレがかなりあるので順番どおりに読んだ方が良いでしょう。
 今度の舞台も開放されているのに閉鎖的な街が舞台。 そしてその街に君臨する女王・メグツシュカ。今回も立ち寄った街で殺人が起きる。初めは逃げ出したかったミチルも どんどん事件の結末が気になって街を立ち去り辛くなる。

 今回のテーマはミチルの存在に関わる部分がテーマ。生命はどこに生きている・死んでいるの境界線を引くのか。 事件も謎もあるが、それはあくまでそのテーマを語るための道具でしかない。人間、ウォーカロン、そしてクロン。 3者の関係、そしてそれらに対する認識は。

 はっきり言って女王・メグツシュカの考えている事は理解できるが同意する事は難しい。 別に同意する必要は無い。そう言う風に考える事も出来るのか、と思うだけでよい。森氏の本はそう言うスタイルで読むと良いと思う。
 今回はミチルの存在が重要なキーポイント。前作のラストで明らかになったミチルとロイディの関係を押さえておくと良いだろう。

 さて、ここからは頭の悪い(笑)感想である。
 ミチルはロイディとの関係から、ウォーカロン(自律人間型アンドロイドと言った所か)のロイディに対しても友達のように接する。 誰に対してもロイディをパートナだと紹介する。その成果なのか、ロイディの言葉や行動のバリエーションがついてきた。 それこそミチルがちょっと笑ってしまうような、些細な変化である。それでもミチルはロイディの変化が嬉しいのである。 これが、良い。
 話のラストのパトリシア(これもウォーカロン。なんだかロイディと仲良しになれそうな感じである)の行動が面白い。 あの展開だったら第3弾が期待できる・・・かな?と言うか、ホント、第3弾読みたいです。
 でも、うーん。今回で閉鎖された街は打ち止め(笑)って感じですかねぇ。。。


2003年10月17日 四季 春


出版社:講談社(2003)

★「すべてはFになる」で衝撃的な真相をもたらした真賀田四季4部作の第一弾。 彼女は5歳で既に世界から独立していた…。
 今回、殺人事件はあるものの(しかも森本らしくやっぱり密室)、それは問題ではない。ほとんど四季の周りに居る人物の一人称で話が進むが、 勘の良い人間なら(むしろ森ファンなら)ここに仕掛けられたトリックにすぐ気が付くだろう。しかししかし。ああどんでん返しがくるとは思わなかった…。

 興味深いのはやっぱり真賀田四季の思考であろう。何に価値をおくのか、と言うのがとても興味深い。 そしてまた、四季と一緒に居る栗本其志雄の気持ちも興味深い。四季についていけなくなった自分を認め、四季の側を離れなければならない のを怖れる気持ちは理解できた。彼と彼女の特殊な関係がこの後どう変化するのか、後の3作を待ちたいと思う。


2003年12月18日 森博嗣の浮遊研究室2
 未来編


イラスト:コジマケン
出版社:メディアファクトリー(2003)

★7月に読んだ浮遊研究室の第二弾。纏める分量を50回から30回にした事で持ち歩きもしやすい薄型タイプになりました。 ま、分量が5分の3になっただけ、と作者は言っておりますが。
 このエッセイ集ともなんとも言えないシリーズはインターネットで公開中。毎週毎週この分量を書く、って言うのがすごいですよね。 で、更に凄いのはそこに内容はないのだけれど何か残る物がある、と言う事。内容が無い、と言うのはけなしているのではありません。抽象的、と言いたいだけです。 多少具体的な話から入りますが、そこから抽出される「なにか」は抽象的で一般性のある話題です。 森氏のエッセイの類いはもしかしたら思想書なのかもしれませんね。

 今回もオマケ付き。今回は浮遊研究室の面々が自由研究と称して色々な事をしています。これが中々に真剣で面白い。ネット派の方も是非どうぞ。


2003年12月22日 四季 夏


出版社:講談社(2003)

★天才・真賀田四季の奇跡の続きである。この巻は大体13歳から14歳の四季の選択と行動が描かれている。

 これを読んで「すべてがFになる」を読んでいない人は居ないと思うのだが、あの切り口では見えなかったモノが見えてきます。
 四季が13歳と言う若さで選択した「出産」。そこにあった意図とは。
 もー。とにかく四季の思考が怖い。あぁ、ネタバレなので未読の方は反転させないようにして下さいネ(笑)。
 四季が子どもを産んだのだって かつて同じ天才と言う存在であった瀬在丸紅子の 選択は一体どういった物だったのか・と言うのを試してみたに過ぎない。そして得た結論が "何でもない"なのである。
 はぁ〜。真賀田四季…。天才の思考だから理解できるわけも無いのである。それを考えてしまう森博嗣…。 読んだ後はもう、感嘆のため息を吐くだけです。果たして秋・冬とどう言う世界が描かれるのか。最後は「F」の 物語が四季視点で描かれるのでしょうか。とても楽しみです。


2004年2月27日 ZOKU
Zionist Organaization of Karma Underground


出版社:光文社(2003)

不思議な物語である。意味の無い悪戯をする謎の団体「ZOKU」。それに対抗するのが「TAI」。 この二つの組織の構成員それぞれの立場から物語が描かれる。
 正直自分はこれがどう言う話だったのかよく解らなかった。多分何処が謎なのかも理解出来なかったのだと思う。 なんと言うか、つかみ所が無いのだ。
 お話は勿論面白い。私的にキャラ萌えし放題だったし(<そんな事を念頭に置いて読んでいるのはアナタだけです)。

 私が特に良いな・と思ったのは森氏特有の表現。比喩や言い回しがとにかく面白い。こう言う違和感を違和感として感じさせないのは森氏だけだろう。


2004年4月5日 四季 秋


出版社:講談社(2004)

★最早恋愛小説である。私はこれがどの辺がミステリィなのか理解が及ばない。もしかしたら 始めからミステリィじゃなかったのかもしれない。メインは 犀川創平と西之園萌絵、そして保呂草と各務亜希良 のお話である。

 萌絵ちゃんの物語は見ていて可哀想になってくる。相手が犀川では何を言っても無駄。暖簾に腕押しに思えてしまう。 しかもライバル(ぷっ)は真賀田四季だし、創平くんのお母様はあの方(笑)である。 勝ち目ナシ(笑)・と読者も思えてしまう。
 でもまあ、これで萌絵ちゃんも無事創平君をゲット(笑)した訳ですから、安心して冬を読みたい。これで創平が萌絵ちゃんを裏切ったら 首締めますよ(笑)。
 あまりに変人(多分天才)が多すぎて、S&Mシリーズではその特異っぷりを発揮した萌絵もこのシリーズではただの人である。 つまり、それだけ四季寄りの人間が多いと言うわけであるが…。だからこそ萌絵ちゃんはきっと心配だったんでしょう。犀川先生は 四季寄りだから。その気持ちは理解できる。
 また、各務と保呂草に至ってはもっと複雑である。いったい、もうなんと言って良いのやら。でもこの不確定さが 実際の人間関係では殆どだと思うんだよね。多分。


2004年6月16日 四季 冬


出版社:講談社(2004)

★S&Mシリーズから始まる森ミステリィの総決算。S&MシリーズやVシリーズは勿論、 他のどの本を読んでいなくても読んではならない
 私はこの本がどこにリンクするのか分かった瞬間に驚いた。まさかあの本にリンクするとは。 思わずあの本を読み返したくなったのは言うまでも無い。

 真賀田四季は全ての時空から独立しているが故に、いつでも、どこにでも存在している。 天才の思考とはこういうものなのか。どんどんコンピュータに近付いているような気がする。でもそんな 四季もバグのように涙を流し同じ人間なのだと安心できた。
 天才がこんなにつまらないものなら馬鹿のままで良い。分からない事が何も無いなど、 つまらないだけなのかもしれないと感じた。


2004年8月7日 探偵伯爵と僕


出版社:講談社(2004)

★主人公・僕は夏休みの間に事件と不思議な『探偵伯爵』に出会った――。

 なんと言えばいいのだろう。事件としてはそれ程わかり難い事件ではなく、森氏にしては珍しく密室も出てこない(笑)。 逆に言えば割と単純な事件である。しかし、それが森氏の味付けによってこんなにも面白くなるものか。
 これはひとえに森氏の作品を読んでいれば読んでいるほど、騙されるお話である。子どもを 子ども扱いしていないのも、良い感じだ。と言うか、この物語はそこにかなりの価値がある気がする。


2004年8月30日 ナ・バ・テア


出版社:中央公論新社(2004)

★森博嗣の純文学モードの作品「スカイ・クロラ」の続編。いや、続編と言う言い方は変かな? 時系列で行けば「スカイ・クロラ」の前にあたる話と言えよう。 ついでに言えば主人公も違う。「ナ・バ・テア」は「スカイ・クロラ」に出てきた草薙水素が主人公(あ。これネタバレくさいな)。

 前作と同じく、主人公は戦争をする為に空を飛ぶパイロット。腕がいいのも前作と同じ。

 森博嗣は最近このテーマが好きなのかなぁ?と言うか、書きたいことなのかな。以下多分にネタバレなので 今から読もうって人は読まない方が良いかも。

 ここから反転
 今時女性に子どもを産む・産まない権利があるのは当たり前として(ああ、そう言うのを取り上げようって国もあったね……)、 男性側の「子どもを産んでもらう権利」(残念ながら産めないからねぇ)に焦点を当てたのは面白かったと思う。
 ただ、男性側の「産んでもらう権利」の問題は女性側に負担がかかりすぎるって事。だって産むのは女性だもの。 体が重くなったりするのが嫌だからおろしたいってのは有りだと思う。でもだからと言って男性の気持ちが無視されるのも可哀想な気もする。
 この物語みたいに堕胎できる様な小さな頃でもその命を生かす事が出来るようになったらそう言う問題は確かに解決されるかも。 まあ、勝手に生かされたらこの話の草薙水素みたいに激怒するだろうけど。話はそこまで単純じゃないけれど、 面白い視点だったとは思う。
終わり。


2004年11月25日
 数奇にして有限の良い終末を


イラスト:萩尾望都
出版社:幻冬舎(2004)

★森博嗣のweb日記シリーズ第5弾。2001年分を収録した今作が最終作となる。 巻末の煽りによると天才・森助教授の行動と思考シリーズになるらしい。

 この本の特徴はただの日記のような日常の出来事を書きながらも、必ずどこかに抽象的な部分があり、新しい価値観を 提示している。
 この森氏の思考自体が面白く、トレースするのも楽しい。時折かなり極端な意見があったりするが、それが狙いだったりすることもある。

 また、日々を有効に生きている事が伝わってくる生活ぶりで、ちょっと羨ましい。模型を作ったり、遊んでいる様は そちらの方面に全く知識が無い人でもかなり面白そうだ、と言う風に思ってしまうはずだ。


2005年1月13日 ミニチュア庭園鉄道
欠伸軽便鉄道弁天ヶ丘線の昼下がり


出版社:中央公論新社(2003)

★さて、森博嗣の趣味でお金を稼ごうシリーズ(笑)である。彼が小説を書き始めたのもこの庭園鉄道を作りたいがため、と言う目的があったかららしい。お金を稼いで資金を手に入れる、と言う至極まともな動機であるが、それを公言してしまう所が森氏らしい。これ、言うとすごく嫌味に聞こえるよなぁ(苦笑)。

 しかし、森氏が真剣に趣味に取組んでいく様は見ていて面白い。勿論、鉄道模型に興味がもてない・と言う人も居るだろう。しかし、この本は鉄道模型が大好き!と言う人を読者として設計されていない。むしろ、全然知らない。興味も無い、と言う人たちを対象にしているとも言える。それは別に鉄道模型を広めよう、と言う訳ではなくて、本気で遊ぶ事を見せ付けているだけである。

 私のお薦めとしては時折入るエッセイ部分。この部分は書き下ろし……なのかな?ちょっとよく分からないけれど、「インターネット」や「今後の課題」は必読である。森氏のスタンスはかなり極端であるが、そう言う考え方もアリか・と思うだけで何かしらの影響を受けるだろう。


2005年1月18日 STAR EGG
星の玉子さま


出版社:文藝春秋(2004)

★作も画も森博嗣による絵本。玉子(たまこ)さんが愛犬のジュペリと一緒に様々な種類の小さな星を訪ねながら、宇宙の疑問を投げかける。これが中々に素朴なのだが、案外 えっと、どうだっけと思ってしまうものばかりである。宇宙は関係ないけれど、ちょっと考えさせられるものも多い。絵本と言う体裁をとっているけれど、対象は明らかに子どもではない。ま、子どもが読んでも面白いだろうけど、子どもには当たり前の話かも。

 本の最後には絵本そのものの解説とそれぞれの「星」についての解説がある。この解説が一番メッセージ性が高いかも(笑)。


2005年1月19日 ミニチュア庭園鉄道2
欠伸軽便鉄道弁天ヶ丘線の大躍進


出版社:中央公論新社(2004)

★弁天が丘線第二弾である。今度の本はかなりテクニカルタームなので本当に鉄道模型がやりたい人向け。勿論、鉄道模型なんか見ているだけでいい、と言う人も大丈夫です。これの触発されて私なんてすごく気になって玩具屋でNゲージとか見ちゃったじゃないですか(笑)。後、カプセルプラレールが気になる今日この頃ですが、車両が入っていないカプセルが出るのが怖くてチャレンジできません(<しなくていい)。

 第二弾になっても森博嗣の「趣味を一生懸命やる」と言う事に変わりは無い。しかも楽しんでいるからとても良い。パートナのすばるさんがとっても冷めた目で見ているのもグッド(笑)。
 趣味を他人に理解してもらおう何て思ってはいけない、と書いてあった。なるほど、自分の好きなことなのだから自信を持ってすればいいのだ。その割には「天賞堂が銀座にある限り鉄道模型は崇高な趣味なのだ。」とか言い張ってたけど(笑)。


2005年1月20日 Φ(ファイ)は壊れたね


出版社:講談社(2004)

★森博嗣のS&Mシリーズ、Vシリーズ、四季シリーズに続く新シリーズ。えーっと……何シリーズなのかな。分からないけど、次回作を見るに数学記号シリーズっぽい(笑)。

 とあるマンションの一室で死体が発見される。が、それは奇妙にデコレーションされており、かつ、その部屋は密室だった。偶然巻き込まれた山吹とその友人たちは興味本位に密室のトリックを明かそうとするが……。

 S&Mシリーズの西之園萌絵が登場する為、警察の捜査状況や物的証拠などがあっさり判明する為、物語は円滑に進む。それでも始めから答えは提示されている感があるので、現実味が無いなどとは言ってはいけない(笑)。
 今回の探偵役海月及介は殆ど喋らない。はっきり言って、最後にどんな事が起こっていたのかを推測して話す部分でしか喋っていないのではないかと思うぐらい。また、事件を推理する事に対するスタンスが犀川先生に似ていて、萌絵が「似た様な人が居るのね」と言うくらい。
 最近森博嗣の本を読む時は今回のシリーズではどんな傾向の殺人が取り上げられるのか、それが楽しみになってきています。今回はなるほど、こう来たか、と言う感じ。中々に楽しめます。
 ところで、どうしてノベルス書き(2段組)ではなく一段組みなんでしょうね。


2005年1月27日 工作少年の日々


出版社:集英社(2004)

★小説すばる連載のエッセイを一冊にまとめた物。森博嗣はこれまでエッセイの様な物は沢山あったけれど、ここまでストレートにエッセイなのは珍しいかもしれない。連載中のタイトルは 「工事中よ、永遠に」でかなり趣味の出まくったタイトルだった模様。内容は確かに現在の日々の工作から、自分が今まで辿った工作人生(笑)を紹介している。でも、重要な所は殆ど工作とは関係なかったりするのも森流っぽい。

 私が一番印象深かったエピソードは、幼いときに母親にドイツ製のニッパを買って貰って、今でもそれは現役だ、と言う話。子どもだからと言って安物で済ませなかった母親は凄く偉いと思う。何でも本物を与えるべき、と言うのはよく言うことだけれど、それを実感させる。
 後、何かが出来ない時、それは道具が悪いせいかもしれない、と言う言葉も良く出て来るのだけれど、その最後にあった「使っている自分だって道具なのかもしれないけれど」と言う一文が印象深い。


2005年1月27日
 工学部・水柿助教授の逡巡


出版社:幻灯舎(2004)

★実はこれ、シリーズ2作目である。1作目は「工学部・水柿助教授の日常」。これは小説か?と言うぐらいの型破りな地の文と、これは作者の事ではないのか?と言う主人公たち。
 今回は水柿くんが大学の助教授を経て小説家(と言うか兼業だけど)になる話がメイン。あれ?これどこかで聴いた事あるなぁ?と言う感じではあるのだが、それはまあ、置いておいて……。
 中々に現実と虚構の境目が分かり辛く、その酩酊感を味わう、と言うのがこの小説の楽しみ方かもしれない。
 


2005年7月25日 どきどきフェノメノン


出版社:角川書店(2005)

★森博嗣の初恋愛小説。実は恋愛小説と知らないで読み始めたのだが、 主人公の行動がおかしい。明らかにおかしい。その事を小説の中の人は誰も気付かない、 それが面白い。後、割合アクロバットな決着を見せるのだが、端から見ている人間の感想としては アンタそれでいいの?!である。
 森博嗣の小説で、ユルい恋愛小説チックな部分が好きな人にはお薦め。


2005年8月25日 ダウン・ツ・ヘヴン


出版社:中央公論新社(2005)

★「スカイ・クロラ」、「ナ・バ・テア」に続くパイロットシリーズ(何か間違っている……)第3弾。
 今までの2冊に続く(と言うか……その間?)本なので、読後に「スカイ・クロラ」読みてぇ〜!となる事間違いなし。 順番的には312と発表された事になるのかな。。。

 草薙水素の考え方とか、色々思うところあるけれど、今回はあえて違う所で(笑)。
 飛行機の描写がたまらんく良い。空を疾ってる所とか、ありありと眼に浮かぶよう。 ちょっとした会話とか、ちょっとした仕種とか、そう言う文章がとてもスタイリッシュな本。 表紙も飾りたくなるくらいカッコイイ。
 このシリーズを読むたびに主人公の「気高い」生き方にちょっとシビレます。


2005年10月13日 θ(シータ)は遊んでくれたよ


出版社:講談社(2005)

★Gシリーズ第2弾(何故Gシリーズなのかは不明)。
 物語はある一人の落下死体の額にθ(シータ)の様な記号が描かれていた事に始まる。 そして、全く関連の無い落下死体にもθが描かれていた。しかも3件でθを描くのに使われたものは同じものと言う事が判明する。果たしてこれは本当に自殺なのか、それとも他殺なのか……事件の背後にθを象徴とする謎の団体の影が見え隠れする。

 西之園萌絵とか、犀川先生とか、国枝先生とか、御馴染みな人も出てくるのでとても読みやすい。ただ、今までのシリーズから時間が経過している為その変化とかも面白い。特に西之園萌絵の成長っぷりはちょっと嬉しい。
 今回も探偵役は海月くんなのだけれど、やっぱり最後の30ページしか喋っていない。実際のところは良く分からないけれど、この結論は凄い。森博嗣の本はどんどん事件が一番ありそうな事に近付いている気がする。これは凄く怖いことだ。
 基本的に本は現実から逃避したくて読む様な気がするので、本を読んでもしかしたらこんな事があるかもよ的につきつけられるとちょっとぎょっとしてしまうかも。。。



読書日記のトップに戻る

日記のトップに戻る

トップに戻る


アクセス解析 SEO/SEO対策