宮部みゆき



ブレイブ・ストーリー 誰か






2003年8月27日 ブレイブ・ストーリー


出版社:角川書店(2003)

★この日記に初登場の宮部みゆきです。そう言えば読書日記、大極宮の本が1冊も入って無いですね…。 このHPを立ち上げてから読んでなかったんですねぇ。。。(原因は主に京極氏が新刊を出さなかった事にあると思われる。) それはともかく。私自身久々の宮部みゆきです。

 主人公は平凡な小学5年生のワタル。私生活のごたごたで心がくじけそうになった時、異世界へ 行く事になり、ワタルはその世界で何でも願い事をひとつだけかなえてくれると言う女神が居ると言う運命の塔を目指す。

 前半はひたすら主人公の置かれた状況が描かれるが、それがとても辛い。読んでいる方が辛くなった。 それでもワタルが異世界で経験する事のひとつひとつは彼を育て、辛い出来事にも立ち向かえるだけの人物に成長させる。
 宮部嬢の書く物語はいつも人物に対する視線が優しい。しっかりと見つめているからこそ、ワタルに課す試練も厳しいもの になる。きっと、作者も自分の愛着のあるキャラクタにあんな試練を課す事はかなりのストレスだったと思う。 だからこそ読み終わってのカタルシスが大きい訳だ。最後にワタルが願い事をするシーンはその極みだろう。

 おそらく、主人公と同じ年齢の小学生が読めるようにだろうが、この本は殆どルビが振ってある。 そのためとても読みやすい。多少分量が多いが、引き込まれてしまえば1日か2日で読んでしまうだろう。 子どもにも大人にも手にとって欲しい本である。


2004年8月5日 誰か


出版社:実業之日本社(2003)

★物語は主人公がある企業の会長の私用運転手の娘たちから「自分たちの父親の伝記のような物を作りたい」と言う依頼から始まる。 彼女たちの父親、つまり運転手は自転車事故(しかもひき逃げ)で亡くなっていた。犯人は捕まっておらず、そのような本を出したら 犯人はいたたまれなくなって自首するのではないか、と言うのが娘たちの主張だった。
 主人公はそのある企業の会長の娘婿。と言っても婿養子に入ったわけではない。しかし会長にはとても弱い立場。そんな主人公である。
 ただのひき逃げ事件の解決に向けて本を作るだけ、と思っていたら、娘たちの一人は「父の過去を詮索させないで欲しい」と頼んできて――。

 運転手の娘たちの性格の違いが激しい事にびっくりするかもしれないが、その違いが何からもたらされていたのか、と言う事が解るときちんと納得できる。 その辺りの人物像の書き込みは宮部嬢ならでは。個人的には主人公がとても良い。情けないのだけれど、頑張っている感じがして好感が持てるし。

 解決へのヒントがかなり明確に示されているので、自分で推理しながら読んでみるのも面白いかもしれない。



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