舞城王太郎



暗闇の中で子供 世界は密室でできている。
阿修羅ガール 熊の場所






2003年1月18日 暗闇の中で子供


出版社:講談社(2001)

★やっぱりこの人の作品は特殊ですねー。一人称の物語は多かれ少なかれそうだけど、この作品は思いっきり話し言葉。それもかなり乱暴。 前作も読んだけど、そちらもそうでしたね。

 物語は奈津川家の小説家の三男・三郎(まんまだよなー)を語り部に、前作の連続主婦殴打生き埋め殺人事件のコピーキャットを発見する所から始まる。 二つのコピーキャットは一体何をあらわそうとしているのか。そしてまたしても引き起こされる事件。そうして奈津川家は更にぐちゃぐちゃになっていく・・・。

 それにしても、前作の終りには母親と長男、父親が入院するわ、めちゃくちゃになり尽くしていたのに、今回はもっとめちゃめちゃになりました。 てゆーか三郎、それでいいのか。なんか妙な所で悟っちゃってるし、不思議です。
 前作と今作を通して見え隠れしていた二郎の結末も驚かされました。まさかそんなことになっていたなんて!!三角蔵の密室の立場ってば一体!(笑)
 でもま、館風がお気に入りの四郎くんはなんとか生きているみたいだし(作中では意識戻ってないけど)、よしとします(笑)。

 メフィスト賞系のミステリィが大好きな館風的にはオッケィなのですが、過激な暴力描写とかが苦手、と言う人は読まない方が良いかも。うっわー、痛そう、では済まない様な暴力が満載です。 それにしても色んなものがてんこもりなので、結構気をつけないと話が繋がらないかも。



2003年2月24日 世界は密室でできている。


出版社:講談社(2002)

★講談社の密室本の登場です。まんまなタイトルです(笑)。
 これは「煙か土か喰い物」でも登場したルンババが登場。思春期の話って感じですかね。
 めちゃくちゃな殺人が起こったりするのはなんかとんでもなく舞城ワールドなのですが、今回の本でしてやられたのはなんと言っても ラストシーンでしょう。不覚にも館風泣きました。ええもうそれだけでこの本について言う事は無いです。読んで。



2003年4月30日 阿修羅ガール


出版社:新潮社(2003)

★舞城ワールド全開!いきなりきわどい所から始まるし、容赦ない暴力シーンはあるし、おそらく舞城を初めて読む人はかなり引くだろう。
 しかし、やっぱり本は最後まで読まなきゃわからないわけで。この本も最後まで読めば救われるのです(<あんたはどっかの教祖か?)。そんでもって救われるからどんなに暴力シーンがあるとわかっていても、 とんでもない殺人事件が起こると分かっていてもまた舞城を読もうと思わせてしまうのだろう。しかし、今回の舞城はそれだけでは終わらない

 今回のストーリィとは直接関係のない、(おそらく)主人公の心の深淵を覗いた第2部の「森」と言う章が、とんでもなかった。この章、とても恐ろしい
 章の始めの方のナイフとフォークのシーンは、はっきり言って怖い。ゆるゆると恐怖が襲ってくる。こういうのの方が直接的な暴力シーンよりもずっと怖い。 そして、それ以上にその後のシーンは怖い。死ぬ順番が決まるシーンなんてもう。。。ちなみにこの章のラストシーン、館風はレベルE調の富樫義弘の絵柄で想像してしまいました。うわ。我ながら気持ち悪ぅ。。。
 本の最後にこの章はラッセ・ハルストレム監督の「やかまし村の子ども達」と「やかまし村の春夏秋冬」の2作品にインスパイアされて書いた、と書いてありました。館風は寡聞にして、この映画は知らないのですが、きっと ものすごいものなんでしょうね。ちょっと興味が。。。

 なんだかイマイチ本文の紹介がないですねぇ。。。(爆)。大まかなストーリィは主人公の女子高生の身に起こる色々色々。青春の悩みとか結構リアルに書き込まれていて、まだ青春中(であると思いたい)の自分には痛い事ばかりでした。 何にも考えていない自分に鬱入る所とかね(笑)。いや、あんな激しい青春は送ってませんよ?(笑)。

 しかし今回の「森」だけでも私はこの本を読む価値があると思いますね。本当に舞城氏はすごいです。以上。



2003年5月20日 熊の場所


出版社:講談社(2003)

★あぁ、もうなんと言ったら良いのだろう。この舞城王太郎の短篇集は圧倒的な何かで出来ている。 その何かが何なのかはよく判らないのだけれど。
 いつも舞城の小説はバイオレンスで苦しくて哀しく、そして優しい。今回もそうなのだけれど、これまで読んだ舞城作品のどれよりも 強く、優しい。

 実のところ、私は全編通して泣いてしまった。どの作品も、強い者が勝ち残り、弱者が虐げられると言う構図をまざまざと 描き出している。そんな中で哀しくも強く生きる人を書いている。
 どの作品も、最後に至るまで哀しくて辛くて痛いのだが、そんな中に決定的な分岐点と言うか、救いのようなスポットがある。 だから、また舞城を読みたいと思わせるのかもしれない。

 とにかく、この「熊の場所」は文句なしに名作なので、是非とも読む事をお薦めする。

以下蛇足(しかもネタバレ)

 最後の「ピコーン!」の犯人の台詞の中に「訳の分からん無意味な死ってやつを特別な死にしてあげようと思って」 と言う台詞があった。そう言えば、清涼院流水の「コズミック」は特別な死を迎えたい人たちがキーポイントになっているし、 なんか犯人(と言うか死のうとする人?)がそう言う事を思っている話もよく読んだように思う。
 しかし、特別な死など存在し得るのだろうか。密室で死のうが、見立てで変な風にされて殺されようが、死は死でしかないように思う。 そして、ただの死だからこそ、それがまた哀しいのだ。



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