古処誠二



分岐点 接近






2003年12月9日 分岐点


出版社:双葉社(2003)

★時は第二次世界大戦末期。中学生すらも兵に代わる労働力として徴用されていた。
 そんな中、下仕官達の目には優等生と映る成瀬と、身体が貧弱な為手を抜いているようにしか見えない対馬。 誰よりも頭が良いのに日本の勝利を盲目に信じているように見える成瀬。対馬ですら疑いを抱く未来に成瀬が何を考えているのか分からず 対立してゆく二人。
 そして、一人の下仕官が姿を消した。脱走か、アメリカの戦闘機に射殺されたか。そこに何が意図されているのか分からない上官達。下仕官が殺されたと 仮定すると容疑者は最後まで一緒に居た生徒。しかし、動機は。

 淡々とした筆致で描かれる第二次世界大戦。ひとつひとつが執拗に克明に描かれていて、思わず涙を流してしまう、そんな 本である。私はきっと作者が泣かせようと思って書いていない所でもその重さに耐え切れず泣いてしまった。私は全く戦争とは関係のない時代に生きてきた。 これからも関係が無いとは言い切れないが、沢山の人を不幸にしてまでする戦争に何の意味があるのか。古処氏の本を読むたびに考えさせられる。 取りあえず、人が生きることに理由は要りません。


2003年12月25日 接近


出版社:新潮社(2003)

★今度は沖縄戦である。沖縄に上陸するアメリカ軍。それを迎え撃つ日本軍。その背後で脅える住民達。そして戦線を離脱する遊兵。 その中にアメリカ人の日系二世が日本人に成りすまして潜入しているらしい。果たして誰が「敵」なのか。

 古処氏の戦争ものは淡々としているが故に辛くなる。読んでいると誰が「敵」なのか、何が「悪」なのか分からなくなる。 人が「正義」を決める事など、出来ない。そう思わせる。人それぞれ信じる「正義」があり、それに従って行動する。自分が信じられるのは 自分が接した人だけ。それすらも信じられなくなる日が来る。それが戦争と言う異常事態なのである。
 読み終わったとき、陰鬱な気分になる事請け合いである。しかし、何故そんな気分になるのか、是非とも考えて欲しい。



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