2003年1月31日 密室の鍵貸します
出版社:光文社(2002)
★東川氏の文章はこれが初体験。あっさり・さっぱりの語り口で、中々に読みやすい。サクサク読めて、一見軽く見える。
ただ、主人公が無実の罪からどう逃れるか、と言う部分はかなり練られていて面白い。しかし、それを感じさせない所がまた良い。
主人公はまさに「焦った人間」と言う典型の行動を次から次へと引き起こし、自分から追い込まれてゆく。これだったらいつ逮捕されてもおかしくない、と
思うような状況だが、幸運な事にそうはならない。
事件が解決する段になっても、主人公はもう正直に供述するばかり。しかし、この供述を刑事が真摯に受け取ってくれたから良いものの、何を寝言を言っとる、と一蹴されたら
終りである。まあ、そうなったら話が終ってしまうのでそうはならないのだが、そのちょっと都合が良すぎるのでは?と思う所も軽い語り口でフォロー。
何故かあの口調だと誤魔化されてしまうのである。
まあ。こんな小説も良いではないか。
2003年4月16日 密室に向かって撃て!
出版社:光文社(2002)
★関東某県に存在するとかしないとかの烏賊川市(声に出して読むと笑えます)が舞台。上の「密室の鍵貸します」と同じシリーズにするようです。探偵役は私立探偵の鵜飼杜夫。
今回の密室は衆人環視下における密室トリックを暴く!と言うもの。
凶器は拳銃。銃声トリック(なんてものがあるのかは知らんが)によって密室に似た状況で殺人が行なわれた。
この銃声トリック、とってもスマートでエレガント。全ての伏線が無駄なくキレイに使われています。しかもそれが「あー?そんなんあったっけ?」と言う風な印象ではなく、きちんと
「ああ!そう言えば!」と妙に印象に残ってるんですよね。うまいなあ。うまいこと騙されてしまいました。
登場人物と読者と作者の心情が入り混じって書かれた文章は私のような雑食ミステリィ読者(笑)にはかなり面白かったです。
2003年10月23日 完全犯罪に猫は何匹必要か?
出版社:光文社(2003)
★烏賊川市シリーズ第3弾。今回はアリバイ崩し。いつも良い所ナシの砂川警部が今回はなんだかたのもしい。きっちり
真相にたどり着くしね。
ビニールハウスの中で殺人が。しかし家族は皆犯行時刻にはアリバイがあった。果たして
犯人は誰か、そしてその動機とは?
今回、動機は割とオマケ的である。しかし、思いもしなかった動機に驚かされた。
今作では猫やら招き猫やらが沢山出てくるが、全て無駄に出てくるわけではない。
その辺も気にしつつ読んで欲しい。
2004年8月17日 学ばない探偵たちの学園
出版社:実業之日本社(2004)
★学園探偵モノと言えば霧舎巧氏の霧舎学園シリーズとかを思い浮かべるが、こちらの学園は
なんと探偵部がある。元々探偵小説研究部だったのが、小説研究が取れてしまったらしい。
語り部はそこへ間違って入部してしまった赤坂通。
学校内で起こった密室殺人に見える事件。果たして誰が犯人なのか。密室の構成法は?そして続く第二の殺人!
探偵部が動き出した!
何と言うか、ノリがギャグみたいである。それでもちゃんとミステリしてくれるし、だからこそ読みやすいのかもしれない。
でもびっくりしたのは探偵役が探偵部の面々ではない事。そこまで探偵しておいてアンタ達が謎を解くんじゃないんかい!みたいな。
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