パーネル・ホール



探偵になりたい 犯人にされたくない
お人好しでもいい 絞殺魔に会いたい
依頼人がほしい 陪審員はつらい
撃たれると痛い 俳優は楽じゃない
脅迫なんか恐くない 脚本家はしんどい
裁判はわからない 罠から逃げたい
サスペンスは嫌い






2004年7月30日 探偵になりたい


出版社:早川書房(1989)

★スタンリー・ヘイスティングスシリーズ第一弾。
 スタンリーは探偵とは名ばかりの私立探偵。大抵は雇い主であるリチャードの下請けで、 事故現場の写真を撮りに行ったり、怪我した足を撮影するだけ。それが本物の探偵と間違われて 話を聞いてしまう事から事件に巻き込まれていく。話をしていった依頼人(勿論スタンリーはそれを断った) が次の日には死体になってしまったのだ。
 事件の裏側を少しでも知っているスタンリーは、誰が依頼人を殺したのか・そしてそれを突き出すために動き始める。

 と、書いたらとてもカッコ良いのだが、スタンリーはとても臆病で情けない。自分では上手くやったと思っていても、 周りにはその1部始終が見透かされていたりするのである。そんなスタンリー(と言っても40歳だが)の様子がとても面白いのだ。

 ミステリィと言うよりもハードボイルドなのだが、全然ハードではない。言うならばソフトボイルド?とことん情けなくて カッコ悪い、そんな主人公なのである。


2004年8月2日 犯人にされたくない


出版社:早川書房(1990)
訳:田中一江

★スタンリー・ヘイスティングスシリーズ第二弾。
 今回も聞きたくないのに依頼を聞いて事件に巻き込まれていく。美人妻アリスの友人・パメラが売春事件に巻き込まれた。 脅迫のネタを取り返してくれ、と言うのが依頼内容。嫌々ながらも事件を解決しに動き出す。
 しかし捜査を開始した先で出会ったのはパメラを脅迫していた男の死体だった。危うく犯人にされかけるスタンリー。 果たして真犯人は誰なのか。

 相変わらずスタンリーはカッコ悪い。てゆぅか情けない。アリスには詰られるし、リチャードには助けられっぱなし。 おまけに刑事のマコーリフには全てを見透かされている。ああもう情けない。なのに何故か事件を収まる所へ収めてしまうんだなぁ。


2004年8月11日 お人好しでもいい


出版社:早川書房(1992)
訳:田中一江

★スタンリー・ヘイスティングスシリーズ第3弾。
 今回は警部のマコーリフに頼まれて彼の娘の夫を調べる事に。何か挙動不審な娘むこを調べて欲しい・と言う事なのだが、 調べていくと夫婦共に浮気をしている事が判明し、依頼人であるマコーリフに遠慮したスタンリーは板ばさみにされる。
 そして、マコーリフの娘夫婦は殺人事件に巻き込まれる。いつも失敗ばかりのスタンリーだが、二人を容疑者にしないように 努力をしているうちに容疑者になってしまった!!

 今回も殺人事件の容疑者である。もちろんスタンリーが電話する弁護士はリチャード・ローゼンバーグ。 警察をやり込める事が大好きなリチャードはヘリコプターとリア・ジェットをチャーターし、大型リムジンで乗りつけ ると言う力の入れっぷり。それで普通の来かたよりも15分早く来れたと鼻高々。うーん、これはもう 警察をやり込めるのが好きと言うよりもスタンリーを愛しちゃってるとしか思えませんね(笑)。  そんなこんなで今回のスタンリーは自分で駄目だー駄目だーと言いながら走り回ってます。 いっつも捜査の毎に借金を作っているけれど、あれはどうやって解消しているんだろう。。。後、時給10ドルってどーなの?(笑)


2004年8月24日 絞殺魔に会いたい


出版社:早川書房(1992)
訳:田中一江

★スタンリー・ヘイスティングスシリーズ第4弾。
 スタンリーが依頼人の所へ行ったら依頼人は絞殺されていた。臆病な探偵スタンリーは事件を自分で解決しよう等と言う事はせず、即通報。 まずする事は吐き気をトイレまで我慢する事。死体を見るたびに吐いているので気の毒なほど。
 今回登場したのはお馴染みのマコーリフではなく、頭からスタンリーを犯人だと決め付けているクラーク部長刑事。 スタンリーの行く先々で依頼人が殺されている。ますます容疑の深まるスタンリー。
 スタンリーは自分が犯人にされない為に(またリチャードからさっさと事件を解決したいと持ちかけられ)動き出す!!

 今回も笑ってしまうぐらい空回りするスタンリー。主人公がコレでよくぞ物語が成り立つ物だ(<褒めている)。 きちんとスタンリーも推理しているのだけれど、常にその上を行く警察。物語はスタンリーの一人称なので 警察がどう動いているか等は良く分からない。その為に今まで見ていた絵が全く違うモノだったりして、驚かされる。 なんだかズルイ!と思うかもしれないけれど、スタンリーがヘボだけに気にならない(笑)。

 今回のお薦め(笑)は泥棒のリロイ。何だかとっても魅力的なキャラクタなので次回以降も出番を期待したい。ステキ★


2004年9月5日 依頼人がほしい


出版社:早川書房(1993)
訳:田中一江

★スタンリー・ヘイスティングスシリーズ第5弾。
 今回のスタンリーはいつもと違い、表札を勘違いして来た依頼人にきちんと応対し、依頼を引き受けてしまう。 何故ならスタンリーは虫歯の治療の為に治療費が必要だったのだ。
 そんな訳で依頼を引き受けたスタンリーだったが、偵察を依頼された女性は殺され、驚くべき真実が明らかに。 いつものとおりスタンリーが犯人と言う事になってしまって……。
 今回も自分の容疑を晴らすべく動き出すスタンリーだが、またしてもリチャードに迷惑をかけ、マコーリフに借りを作りまくる。

 可笑しいのは捜査する刑事みんながスタンリーの事を「この上なく怪しいが、この間抜けに殺人など出来るはずがない」と判断する事だ。 そんな印象で容疑者から外していいのか!!(笑)。
 まあ、そうじゃないとスタンリーが活躍できないんだけどね。でもスタンリーのやってることって活躍になるの??その辺りは かなりの疑問である(笑)。


2004年9月25日 陪審員はつらい


出版社:早川書房(1994)
訳:田中一江

★今回スタンリーは陪審員に選ばれてしまう。この陪審員と言う制度、今はまだ日本にはないけれど、 こんなもの、やるもんじゃないです。スタンリーが脅えるのもそのはず、事件を裁くのは自分と同じ普通の人 なんですもの。通常招集された人は二週間拘留される程度で、運悪く裁判に駆り出された人だけが面倒な裁判に出席しなければならない。 そんな中知り合った女性にスタンリーは朝迎えに行く事を承知させられてしまう。妻・アリスには散々皮肉られ、嫌な思いをしながら スタンリーが女性のアパートに行くと女性は死んでいた。
 スタンリーは死体は何度も観た事があったが、知り合いの死体は初めてだった

 初めて少しでも知っていた人間の死体を見るのが初めてのスタンリーは、少なからず落ち込むのだが、そこでアリスがとっても 優しいのに感動した。物分りが良すぎるアリスだったが、この時の アリスは本当にスタンリーの事を想っているのが解って、なんだか嬉しかった。スタンリーってば アリスに愛されちゃってますね。

 今回は珍しくスタンリーが推理した結末がストレートに真相になっている。でもスタンリーがカッコイイって、何だか似合わない(笑)。


2004年9月29日 撃たれると痛い


出版社:早川書房(1995)
訳:田中一江

★今回のスタンリーはちょっとかわいそう。恋人の素行調査を依頼され、 浮気を報告したら首にされ、挙句の果てに尾行までした男は殺される。勿論 スタンリーの依頼人が第一容疑者として逮捕された。スタンリーは自分の報告が人を殺させたのではないと 証明する為に頼まれもしていない調査を開始する。

 しっかしスタンリー、いらんことしいですね。 スタンリーが何もしなければ何も怒らなかったはずなのに。。。。
 そして今回スタンリー、タイトルのとおり、撃たれます


2004年10月12日 俳優は楽じゃない


出版社:早川書房(1996)
訳:田中一江

★今回スタンリーは昔の仲間から欠員が出たと言われ、役者をやることに。元々は役者を目指していたスタンリー、 これが嬉しくないはずは無い。最近借金を返す為に働き詰だったスタンリーは休暇も兼ねて代役をする事に。
 しかし行ってみれば本番は2日後、以前やった事があると言っても20年前。うろ覚えの台詞が気になって気になって。しかしそんな舞台稽古の 最中、舞台監督が殺された。その直前舞台監督と少しモメてしまったスタンリーはまたしても犯人候補にされてしまって……。

 今回はいつもと違いスタンリーは探偵らしい探偵として扱われる。警察署の署長は何を思ったかスタンリーに捜査協力をし、 スタンリーはスタンリーで自分の演技を褒められたからと言って署長に協力する。何て素敵なんだ。
 それにしても、今回はマコーリフが出てこない。電話でチラッと出て来るだけ。アリスも様子を見に来てすぐ帰っちゃうし。なんだかいつもの メンバーが出てこないので切ない。最近出番の無かったリロイの名前が出て来てちょっと嬉しかったけど名前だけだし。

 でもなんだか被害者やら加害者やらの事情がせつなくなっちゃったなぁ……。スタンリーのやり方は私は好きじゃないけど、 他にどうしろって言われたらどうも出来ないんだよね。


2004年10月18日 脅迫なんか恐くない


出版社:早川書房(1997)
訳:田中一江

★スタンリーの事務所で待っている依頼人と言うのはいつも不幸な目にあう。どんな目かと言うと、 大抵が死体になるのである。勿論スタンリーが殺している訳ではないが、スタンリーを容疑者に する刑事もいる。
 そんな横暴なサーマン刑事にスタンリーはトラ箱にぶち込まれる。それを根に持ったのかなんなのか、自分でも分からないままに スタンリーは殺人事件の捜査を開始する。そしてまたしてもスタンリーの行き先々で起こる殺人事件。 根拠は無いけれどスタンリー、呪われているとしか思えない(笑)。1回お祓いしてもらった方がいいんじゃない?

 スタンリーは何度も何度も「人種差別主義者と罵られても構わない」とか「性差別主義者だと言われるだろう」とか断ってから 色々言うクセがあるのだが、それを読んでいるとアメリカにおける人種差別とか、そう言うものの実態が少し分かる気がする。 なんと言うか、表面的にはリベラルなふりをしているけれど、実質の所では違うかもしれない自分とを 言い訳がましく(笑)書いている。こういう角度から本を読んでみても面白いかもしれない。
 とか、ちょっと社会派っぽく書いてみました(笑)。


2004年10月23日 脚本家はしんどい


出版社:早川書房(1998)
訳:田中一江

★ついに脚本家の仕事が舞い込んだスタンリー。しかし、求められた脚本は持って行ったものとは似ても似つかない物だった。
 それでもクレジットに名前が出るというので無給で脚本を書くスタンリー。しかしその脚本を片っ端から改竄していく監督と主演男優。 いい加減我慢ならなくなってきたところで起こった殺人事件!!監督を一番恨んでいた人物としてまたしてもスタンリーは容疑者にされてしまう!!

 いい加減学習しろよと言いたくなるが、そこはスタンリー、ゴタゴタに巻き込まれるのが(むしろ容疑者にされるのが?)仕事。 またもや余計な事をしてマコーリフやクラーク部長刑事に怒られる。
 しかし今回のスタンリーはちょっとカッコいい。最後に犯人を暴くシーンは本当に凄い。スタンリーとしては出来すぎな位だ。
 でも解決の糸口を掴んだのはアリスだったるするんだ、これが。


2004年10月30日 裁判はわからない


出版社:早川書房(1999)
訳:田中一江

★とうとうスタンリーの雇い主の敏腕弁護士リチャードが殺人事件の弁護を引き受けた。 警察をやり込めるのが大好きなリチャードだから、専門外だろうと何だろうと嬉々として引き受けたのである。 スタンリーはその下請けとして依頼人のアリバイを確固たる物にすべく証人に聞き込みをして回った。いつもの 訴訟以来を取り付けるのと同じくらい簡単な仕事……が、証言は迷走を極め、段々と依頼人の立場と共にスタンリーの立場すら危うくなって行く……。

 毎度の事だけれど、どうしてスタンリーは行く先々で殺人事件が起こるのだろう。行く先々で、と言うか、立ち去った後に起こっていることの方が多いけれど。 それはつまりスタンリーが真相に近付きつつあったから殺されていると言う事であって、実はスタンリーはぼんくらじゃないんじゃないかとか言う 理論になりかけるけれど、やっぱりぼんくらだよな(笑)。

 スタンリーは毎度毎度リチャードと対立したり色々するけれど、今回はなんと時給とマイル給の値上げ交渉に成功する。しかも時給10ドル、1マイル35セントから 時給20ドル、1マイル70セントに格上げだから、二倍のお給料だ。それでも貧乏探偵を抜け出せないのは何故だろうか(笑)。
 今回一番対立した部分は中々に面白い。犯人を捕まえるのは警察の仕事で、依頼人を弁護し、無罪にするのは弁護士の仕事。 容疑者が本当に犯人だったら有罪になるのも仕方ない。でも警察がぼんくらで誤認逮捕だったら?スタンリーはあまりに無能な警察に そう考えてしまうのだ。
 うーん、これでちゃんと犯人が別の人間だったから良いけど、もし合ってたらどうするつもりだったんだろうか(笑)。

 そして今回も事件解決の鍵を拾ってくるのはアリス。スタンリー、アリスが居なきゃ事件を解決できてません。もっとアリスに感謝するように(笑)。


2004年10月31日 罠から逃げたい


出版社:早川書房(2001)
訳:田中一江

★今度のスタンリーはちょっといつもと違う。 まあ、今回も犯人にされるのは同じだけれど。

 「足元をすくわれそうなんです」と調査を依頼してきた依頼人を調べていくうちに、スタンリーは段々とその仕事が嫌になって来る。 依頼人は重要な手がかりを調べるなと言ってくるし、フラストレーションが溜まっていく。そのうちに依頼人を 他殺死体で発見!そして、調べて回っていた人間たちが次々と死ぬ!!やっぱり死神でも憑いてる んじゃないだろうか。

 スタンリーは今回初登場の刑事に ハメられている!と思って色々と調査をしたりして足掻くのだけれど、足掻けば足掻くほど疑いをかけられるばかり。しかも 証拠物件がスタンリーの車から見つかったり、スタンリーの立場はどんどん危うくなって行く。果たしてスタンリーをハメているのは誰なのか。 スタンリーは罠から抜け出せるのか!!

 最近スタンリーの解決編は派手になっている。つーか、派手すぎ(笑)。今回はなんと……と。これは言わない方が良いのか。 それにしても、マコーリフとのコンビが益々良い感じ。頑張れスタンリー。


2004年11月7日 サスペンスは嫌い


出版社:早川書房(2004)
訳:田中一江

★またしても依頼を受けてしまったスタンリー。今度は売れっ子作家の妻が依頼人。脅迫を受けているという 彼女の依頼を受け、様々な人の助けを受けてスタンリーは調査を始める。
 そして調査を始めると行く先々で死体が発見されるのがスタンリーシリーズのお定まり。だけど、今回は少し違う。 スタンリーが話を訊いた人が次々と殺されるのだ。それはつまり、スタンリーが真相に近付いていると言う事なのか。。。

 今回、話の中でサスペンスについての考察があるのだが、そこで「一人称でサスペンスを書く事は出来ない」と言う 結論が出ている。スタンリーはそれを聞いて「いつか一人称でサスペンスを書いてやる」と思うのだが、今回見事に 体現してくれている。これが凄い。一読の価値アリ。



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