綾辻行人



霧越邸殺人事件 十角館の殺人
迷路館の殺人 黒猫館の殺人
水車館の殺人 殺人鬼
殺人鬼U 人形館の殺人
時計館の殺人 殺人方程式
暗黒館の殺人






2003年11月28日 霧越邸殺人事件


出版社:新潮社(1990)

★本格やら新本格やらのべつまくなしミステリィなら読み漁って来た館風だが、実は綾辻作品は初体験。 高校のときの友人に綾辻作品の気持ち悪さ、おどろおどろさについて刷り込まれてきた私にとって綾辻=スプラッタなイメージが 出来上がっていたのである。と言う訳で今日まで全く手を付けてこなかったのだが…どこが気持ち悪いんだ?と言う感想を述べたい。 私に綾辻作品が気持ち悪いと吹き込んだ某御仁には少しの殺意すら覚える(笑)。こんなに面白いものを今まで知らなかったなんて!と言いたい気分である。

 さて、吹雪の中山道で道に迷い、やっとの事で霧越邸に辿り着いた劇団「暗色天幕」の面々は、やたら冷たい態度の家人に訝しがりながらも、なんとか遭難せずに済んだ幸運を 喜んでいた。ところが、吹雪は止まず霧越邸に閉じ込められてしまった。所謂「吹雪の山荘」である。そしてそこで起こる連続見立て殺人事件!果たして誰が犯人なのか!見え隠れする屋敷の第六の住人は存在するのか!

 と言う訳で「吹雪の山荘」モノである。これを勧めてくれた黒熊の三角君@COSMIC GARDENは「とりあえずこれは読むべき」と言って教えてくれた。 更に「本格ミステリだけどアンチ・ミステリ」と言っていた。うーん。成る程。読めば分かります。でも考えなければ別に謎でも何でもない?のかなぁ…やっぱりアレは アンチミステリなんでしょうか…。うーん。。。私には判断し難い所です。
 言うなればミステリの集大成とも言える様な出来上がりで、殆どの要素が入っています。あと足りないのは「密室」くらいかな。雪の密室があったらそれっぽくてやりすぎに なっちゃうんですかねぇ。そうそう。ミステリの集大成でもありますが、アンチミステリの集大成でもあるんだと思います。アンチミステリにも色々ありますよね。犯人が分からないミステリなんてのもあるくらいですから こんなのまだマシな方ですよね(<そう言うのと較べるなよ)。

 あ、そうそう。今回の探偵役にちょっと萌えました。出番無いけどカッコ良かったです。


2003年12月23日 十角館の殺人


出版社:講談社(1987)

★孤島物で館物。綾辻氏はこういう極限状態のもの好きなんですねー。

 大学のミステリ研究会のメンバで孤島にある十角館にて一週間の合宿を行う事になった。一方、彼らが出発してから半年前の 部員が急性アルコール中毒で死亡した事件の告発の手紙がその時同席したメンバの元に届いた。そして、その時同席したメンバの殆どは 十角館へ渡っていた…!!
 そして十角館で起こる殺人!果たして、誰が犯行を行なっているのか。メンバの中に犯人が居るのか、それとも外部犯なのか?!

 で、今回の孤島物、普通では考えられないトリック。こう言う孤島モノは以前読んだ北山猛那氏の「アリスミラー城殺人事件」を 考えてしまって、注意深く読んだのですが、結局分からず。こ、こう言うところに着地しますか…。もうホント、びっくり。
 それにしても、登場人物が全員エラリィだのルルゥだののあだ名で呼び合うから人物像が掴み難かったです。難しい〜。


2004年3月8日 迷路館の殺人


出版社:講談社(1988)

★またしても館物。今回は館の構造がすごい。館の殆どを占める空間が迷路になっているのだ。 勿論見取り図は配られるわけだが、この迷路がまた複雑で自分の部屋へたどり着く道順を覚えるのも大変。
 そんな館に集められた人々が遭遇する事件はやっぱり普通じゃないわけで。
 今回は作中作がテーマ。作中作の作中作なんてのも出てきてしまう。それに見立てが行なわれたり、バタバタ人が死んだり、結構忙しい。
 この作品を楽しむためには作中作を本気で読むこと。本気で読んでしっかりだまされて下さい(笑)。ちなみに館風はどの謎も全部騙されました(笑)。


2004年3月27日 黒猫館の殺人


出版社:講談社(1992)

★「館」シリーズ第六弾。読了した瞬間の感想は綾辻のバカヤロー!! であった。何故なら最後にひょっこり第五作「時計館の殺人」の犯人の名前が出て来るからである。それが本当の犯人かどうか (綾辻氏の事だから表向きの犯人と真犯人が違う事も有りうる)は知らないが、勘弁して欲しかった。 こんな第何弾かわからんタイトルで発表順に読めると思ってんのかコラァ!と言う気分である。 なので私はこれからあの一文を記憶から消去し、忘れた頃に読もうと思う。それからこれからはちゃんと発表順を調べて順番どおりに読みます。

 さて、肝心の中身は前年の八月に起こった事件をその体験者の手記を元に推理作家鹿谷門実が解決すると言うもの。
 その体験者は事故で過去の記憶をなくしており、その記憶を取り戻す事も目的の一つだった。
 作品の形式はその現在と八月の記録がサンドイッチで提示される。舞台となる家がイメージし辛いのでちょっと不思議な感じがするのだが、 是非とも館をイメージしながら読んで頂きたい。
 そうすれば気持ちよく読めること間違いなし★である。


2004年4月7日 水車館の殺人


出版社:講談社(1988)

★「館」シリーズ第二弾。どうして第二弾を今頃読むかな…自分も(笑)。でもまだ島田潔が出て来ていたりしてちょっといい。 この雰囲気、落ち着くんだナァ……。

 トリックとか、そう言うのは割と……どうでもいいというか、まあ、そう言う面は勿論面白かったわけで、殊更評価すると言うのも 変ですし。このサイトはミステリブックレビューをしているようで実は違う・と言うのが売りなのでそう言うのは今回も無し(笑)。
 やっぱり綾辻作品の何が良いって、雰囲気。もう1ページ捲る毎に本格モノの雰囲気が馨るのです。それが最高。

 でも一応レビュー的な所を書かないといけないか…。
 大きな三連水車のある館に引っ込んだ老人とうら若き娘。そこへ一年に一度訪れる客たち。 客たちの目的は館の主人の父親の絵を見に来る為だった……。そして丁度その日、一年前の同じ日に起こった事件に興味を持った島田潔が現れる…。
 という感じです。私的に島田さんのキャラが好きです(笑)。なんか投げやりだなー。このブックレビュー(だって綾辻作品は雰囲気が好きなんだもん! 話とか、割と二の次かも…)


2004年5月25日 殺人鬼


出版社:双葉社(1988)

★綾辻作品代表作とまで言われる今作の登場です。殺人鬼。
 これを読んで昔私に綾辻はグロイと言った友人が何でそう言ったのか解りました。うん……でもね? 綾辻作品でこれが“裏”代表作と言われているんだったら、それはつまり綾辻の一般的なパターンでは無いと言う意味で、 他の作品はこれと同じテイストでは無いわけだ。だから「綾辻は」と全て括ってしまうのは間違いだと思うのだよ。うん。って、今更言っても仕方ないけれど。

 さて、何でそんな事をグダグダと書くのか。それは、この「殺人鬼」と言う作品の主眼がこのグロテスクな殺人シーンには無いと 私は感じたからだ。この作品でやりたかった部分はやっぱり違う所だと思うんです。
 このトリック、私は凄い好きですが、うーん……如何せん私はメモを取って読むミステリファンでは 無いので気付かなかったです。先日「文学的商品学(斎藤美奈子:著)」を読んだばかりだったのでどうしてこの描写が多いんだろう…… と気になったのですが、そうですか。なるほど。

 いくらグロイところがやりたかった訳ではない、と言いつつも、グロイはグロイので、苦手な人はお気をつけ下さい。


2004年6月14日 殺人鬼U


出版社:双葉社(1993)

★前作で生死不明だった殺人鬼が再登場。んもう、殺す殺す。

 延々と殺すシーンが並べられるのだが、それを被害者の、時には加害者の「目」になって見てしまう少年の物語が絡む。
 少年は凶行から家族を守る事ができるのか。

 テーマは……うん?不条理モノなのか同調モノなのか、悪意の連鎖なのか……それともこう言ったスプラッタホラーを書く事自体に意味があるのか。 私には分からないが、夜中に独りで読むと怖いし、電車の中で読むと揺れも相まって嘔吐しそうになるので読み方には充分に気を付けて欲しい。


2004年8月20日 人形館の殺人


出版社:講談社(1989)

「館」シリーズ4作目。今回も不思議な館が舞台。館のあちらこちらに占星術殺人事件ばり(意味は解る人だけ解ってね)の顔なしマネキンが おいてあるというちょっとおどろおどろしい館。

 やっぱり綾辻氏の作品はこの雰囲気だよなぁ。うんうん。本格な感じ。たまらなくいい。
 割と「もしやもしや……」と突拍子もない事を 考えると真相が看破できるという逆に解り易い(笑)構成。
 個人的に麻耶雄嵩の……えっと、タイトル何でしたっけねぇ。放火のやつ。アレに雰囲気が似ているな・と思いました。と思ったら 真相まで一緒だった。そう言えば。
 これを言っただけで↑の作品を読んだ事があって内容を覚えている人は真相が看破出来てしまいます。 ホント、ゴメンナサイ(<今回島田潔が出てこなかったのが不満らしい)。


2004年8月29日 時計館の殺人


出版社:講談社(1991)

★舞台は大きな時計塔のある「時計屋敷」と呼ばれる大きな館。 旧館と呼ばれる本体は半地下の建物で、その中に河南が所属する稀譚社の雑誌「CHAOS」の企画で 霊能者とミステリー研究会の面々がそこに3日間籠ることになった。
 夜の降霊会では幽霊が現れ、その夜、殺人が起こる。増える一方の被害者に内部でも犯人を割り出そうと動き出す。 しかし、時計館が中村青司の作った屋敷であると知っている河南は本当に内部に犯人が居るのか懐疑的に思う……。
 その頃、河南から中村青司の作った屋敷に行くと聞いていた島田潔が屋敷を訪れていた。。。

 もう、凄いトリックである。ひたすらそのトリックでひっくり返される為にページが重ねられていく。 出来るだけ丁寧に読むことをお薦めしたい。何がどうなっているのか……。 犯人の全ての行動に意味が有ります。それを考えながら読むのもまた一興。

 あの屋敷を建てた男は少し変だったかもしれないけれど、娘へ対する愛は凄い物があると思いました。 彼女の夢を叶える為だけに色々な事をしていて、その事に対する執念は凄い。
 何も知らない事が幸せって事もあるんだなぁ。


2004年9月16日 殺人方程式
―切断された死体の問題―


出版社:光文社(1989)

★綾辻氏のノンシリーズ。裏に載ってる顔写真がめちゃめちゃ若い気がするんですが(笑)。

 事件はある新興宗教団体の教主が殺される事に始まる。しかし、死体はその団体のビルではなく、河の向かいに立つ マンションの屋上で発見された。その死体は首と左腕が切り取られていた。
 犯人はすぐ捕まるも、犯人の行動に不審を持った明日香井刑事は真相を調べ始める。

 証拠や動機があまりに犯人を示しすぎているが故にそれを真相とするのに躊躇する、と言うのがとても面白い。 何と言うか、ミステリィっぽい発想である。まあ、犯人だったらそこまで証拠を残してはおかないだろうし、と言う のは解らないでもないが、テレビ見ていても実際の事件で証拠隠滅を図る犯人って、あまり聞かないのだけれど、どうしてなのだろう。
 それにしても、首切りの理由が凄すぎ。なるほど、と唸らされる事間違いなし。

 個人的には双子の刑事が好きでした。叶くんの方がカワイイですね!!(笑)


2005年6月6日 暗黒館の殺人 上下


出版社:講談社(2004)

★綾辻行人の館シリーズ最新作。もう一体何年待っていたのやら(笑)。それもそのはず、連載をしていたらしいのだけれど、 足掛け8年も書いていたと言うのだから、もうそれを完成させた事自体に賛辞を送りたい。作品を始めるのは簡単だけれど、 終らせることって言うのは凄く難しいから。

 江南が赴いた暗黒館で巻き込まれた事件。段々と明かされる暗黒館に住まう浦登家の秘密。 2人が殺され、嵐で外部との音信は不通。果たして誰が犯人なのか。
 錯綜する「視点」は凡てを観ていた・・・!

 いつにない酩酊感、もうこの雰囲気がたまらない。双子が双子じゃなかったり、隠し扉がばんばん出てきたり、 たまらなく「館」なのである。ごろごろと視点が転換する度にそれを示唆する地文があったり、 何か違和感を感じるのだけれどそれがぼんやりしていて何がおかしいのか理解できない。感じるばかりで 明確に問題点を把握できないのだ。それが最後にどばっと波が押し寄せる様に明確化される。これを快感と感じるか、 やられたぁ!と思うかは読んだ人次第。因みに館風、「館」シリーズの謎解きではいつも「うぁあああぁ〜」とか 悶えながらごろごろ転がってます。大好き

 個人的に段々島田が出てこなくなっているのが不満(笑)。色黒のメフィストフェレスの活躍が見たいです(<キャラ萌え してます)。



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